立春は病院と読書で

通勤時間帯の山手線に乗るのは久しぶりで、新鮮な感じがした。
あの息をするのも苦しくなるような混み方ではないのが救い、ツインと見える女学生が、もっているノートに目を落としては上をむいて目をつむって、記憶の神に祈るような姿もフレッシュに感じた。

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怖かった先生も、柔和に「ここはほんとは外来の検査はやらないんだけど」といいながら、スタッフに命じて検査の予約をいれてくれた。
もし何かあったときの頼りになってくれればありがたいのだ。

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午後三時半から、歯科医の予約もあったので、渋谷からバスでそちらの近くまで向かう。
渋谷駅が変り過ぎて、バス乗り場にどうやって出ればよいのか、わからなくなってウロウロ、白昼渋谷駅に閉じ込められられるというホラー。

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ずいぶん前に入ったきりのラーメン屋、いらっしゃあ~い、と若女将のとびきり明るい声が迎えてくれる。
この声だけでも、食欲が刺激され、ラーメンのいい匂いが決め手となって「ラーメン下さい」「はあ~い!ラーメン一丁!」、隣りの席の工事の兄さんの食っているチャーハンがやたらにうまそうだ、「あ、俺も、ラーメンチャーハンセットにする」、にこっと笑って「は~い、チャーハン追加!」。
天下の名医、怖い名医に予約を入れて貰えて、ああ、俺も緊張していたんだ、とそれが融けて食欲が増すのを知る。
炭水化物をかっこみながら、怖い名医が知ったらしかめっ面をするだろうなと、にやり。

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カウンタ―のなかで、若女将が鍋をガス台にうちつけて振っている音が、チャーハンセット、チャーハンセットと聞こえだし、止まらない、チャーハンセットチャーハンセット!
雪が降らなくてよかった、というから、俺は雪見たかったなあ、というと、女将と大女将の両方が声を揃えて笑う。
こんなことで、そうやって笑うのって、いいなあと思う。

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いつもの角のカフエに向かう。
隣りのカフエのレジの可愛いお嬢さんと目が合ったら、にっこり笑われて、思わずそっちに行きかかる。
そこを振り切って、正しい道を歩む。
入るやいなや、そう報告すると「浮気しそうになったんですね」と真面目に反応。
きょうは早い時間だから、カフエインもOK、この店が好きになるきっかけになった「あの、あれ」を頼む。あのあれは、やっぱりうまい、つくづくうまい。

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持っていった「意識と本質」、病院のロビーで読み、ここで読む。
ノートにメモや図解しながら、夢中になって読みつづける。
コーヒーの香りのなかで、こうしている自分が何とも言えず、心地良く感じられる。

深層意識のさらに詳しい構造、それらの働きを、古代中国の「易」、チベット密教、空海の阿字真言、イスラームの文字神秘主義、おなじくカッバーラー文字神秘主義、、などなどがどうとらえたか、卦、曼荼羅、セフィ―ロート、、などなどを教わる。
そのたびに、この宇宙が異なった様相を呈して現れる、オモシロ!
窓の外をベビーカーを押して通るママが、足を止めて赤ん坊を覗き込んで満足げにうなづき、ふたたび歩き出す、生きている実在!
二時間ちょっとカフエにいて、クリニックで歯を磨いて、義歯を外した状態で、一時間ほど本の続きを読む。
本を読むのに歯はなくても影響なしだ。

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今朝がた見た夢に、澄んだ池、周囲の山々が色付きで現れて、その山が火事になって、紅蓮の炎に包まれる。
僕の深層意識に潜んでいたこれらの映像は、いったいなにを示すのだろうか。
「意識と本質」にはこうあった。
八卦の中の一つ、「離」は本象的には「火」であるけれど、この「火」は我々が常識的に火という言葉でその「本質(エッセンティア)」を指示するような火ではない。「易」の体系では、自然物としての火が「火」であることは勿論、光明も「火」、知性も「火」、情熱も「火」。普通の考え方だと、情熱を火と呼ぶことは一種の言語的比喩にすぎない。だが「易」独特のものの見方では、情熱は比喩的に「火」であるのではない。

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(岡野栄泉 栗羊羹)
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by saheizi-inokori | 2025-02-04 10:56 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(0)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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