かわいそうな魔女

選挙の結果について、柄にもなくきれいごとを書いている。
そんな風になるわけがないと思いつつも、どうか議員諸君、心をあわせて若者を、弱者を救い、日本をもっとしゃんとした国にしてくれ、と言わざるを得ない。
ダメダメ、と言っても、代りはいないのだから、今いる諸君に期待するしかないのだ。

秋晴れだったので、するつもりがなかった洗濯、シーツとホーフなども洗う。
いつものように、トイレや洗面所の掃除もする。
サンチにリンゴの欠片もわけてやる。
そうしているうちに、音もなく時が過ぎて過ぎて、もはや木曜日、３１日、１０月も過ぎ去っていく。
ジェットコースターに乗っている、地べたが目の前に迫っている。

「魔女とキリスト教―ヨーロッパ学再考」（上山安敏）を読みつづける。

キリスト教は、地中海文明と接触する中で、ギリシャ、ローマの古い神話群、さらに小アジアの太母神群と出会い、これらの異教を陪臣化するとともに悪魔化した。
これは、ユダヤ教がバール信仰など近隣の地母神－豊饒神を征服して、その神々を悪魔にしたのと同じパターンであった。

ゲルマンの神々は、ローマ、ギリシャ、小アジアの神話群と習合しながら、豊饒神、狩猟神として民衆の間に生きていて、それは後にキリスト教神学によって「悪行」の体系にはめ込まれて、デーモン化されたが、もともとは「悪行」とはほど遠い。
そこにおける魔女は、魔女裁判で糾弾されたように悪魔とは関係がなく、自分独自の衝動で、金、不満、欲望、復讐といった極めて人間臭い動機から、悪事を行い、社会的地位を失う不安から秘密裡に動物に変身し、時には教会を訪れさえする。
文字を持っていなかったゲルマン人は口承で神話やサガを伝えたが、聖職者たちは文字で、キリスト教的なフイルターをかけて「神々の黄昏」のような異教世界の終焉を際立たせようとした。
民衆は文字・書物に迷信的恐怖を感じとった。
キリスト教は聖書による伝道に成功した最初の宗教であり、文字を独占したのは修道院だった。

イスラエル人が新しい土地に移ったさい、先住民の聖地とされる場所を受け継がねばならなかったなどにより、ユダヤ教は多神教の要素を抱えていた。

そのユダヤ的多神教要素はキリスト教教義の伝道のルートとは異なる、民話、神話、習俗のレベルでヨーロッパに伝わる。
ユダヤ教は、魔女を抑圧する体制の宗教としてのキリスト教に受け継がれただけでなく、抑圧される魔女信仰そのものにも伝わっていたのだ。

ドイツでは旧約聖書のなかにドイツ人のアイデンティティを求めようとする動きが出てきて、ドイツの神話の中には、思いがけなくユダヤの旧約聖書の思想が受肉されていることが発見された。
１２世紀になると、ドイツ語の源をユダヤに求めるような例もでてきた。
アダムとイヴはドイツ語で話していた！
ルターはドイツ人とユダヤ人は共通の言語と共通の祖先を持つと発言した（生まれ故郷のザクセンに流布していた伝説に過ぎないが）。

民俗学者・ボイケルトは、ドイツの神秘的、呪術的な観念を探索していけば、ドイツ民族の中にある魔法書の半分以上がユダヤの思想から来ていると言ったのは１９３２年のことだ。
翌年、政権を掌握したナチスは、ボイケルトの活動を抑圧し、３５年には教授職を罷免している。

（栗のお菓子）