政治不信の根源はリーダー不在
2024年 10月 27日
この二三日、金木犀の香りがしなくなった。
馴れると気がつかなくなるのだろうか。
朝のラジオで、全盲の人と絵画を鑑賞する、というのをやっていた。
目の見える友人たちが、絵の前でその絵に関して、自由にしゃべるのを聴いて、絵を「見る」のだという。
じっさいに番組の人たちと、田中一村の「アダンの海辺」を共にみるところを放送した。
この絵はコピーの額が家にもある。
目の見えない白鳥さんは、年間50回以上美術館にいくという。
あのとき、自民党の河野洋平総裁が津島雄二をつれて田中秀征に会いに来て(宮澤の仲介で)、田中たちが提唱した「政治改革政権」に自民党も入れてくれ、いっしょに「挙党一致内閣」を作ろうと言ったという話は、次の自社さ政権につながるのかもしれない。
田中は、村山富市は「親湛山内閣」を作ろうとした、という。
田中は今の政治不信は裏金によるものではなくて、未来を託すに足るリーダーが与野党を通じて不在であることによる、という。
なぜ人物がいないか。それは、
田中は、小選挙区制が決まった経緯を説明し、彼の本音は中選挙区連記制だったという。
比例もブロックではなく全国とすることで、シングルイシューの集団も代表を国会に送りこめる、反原発だったら30人くらい(当初案の250として)は集まる、と。
ほんとうは「保守本流」というべき政治家が、健全な二大政党のもとで、力を発揮することが、日本の未来には必須条件である、そんな問題意識をもとに、それがアベ派などの政治思想とどう異なるのかを説き、あわせて田中の関与した政治活動の裏話も満載だ。
最後は湛山の遺した言葉でしめくくる。
田中秀征は、苦節十年、草の根選挙の末に国会に登場するや、一貫してその志に忠実に、大局観と鋭い分析力でその時その時に何が必要かを見極めて、単騎となることも恐れずに、縦横無尽に活躍した。
湛山いうところの「本当の政治家」である。
僕は、田中がもっと長く現役政治家として活躍してほしかった、と思うのだ。
馴れると気がつかなくなるのだろうか。
朝のラジオで、全盲の人と絵画を鑑賞する、というのをやっていた。
目の見える友人たちが、絵の前でその絵に関して、自由にしゃべるのを聴いて、絵を「見る」のだという。
じっさいに番組の人たちと、田中一村の「アダンの海辺」を共にみるところを放送した。
この絵はコピーの額が家にもある。
目の見えない白鳥さんは、年間50回以上美術館にいくという。
一人じゃなくて複数の人が、それぞれいろんな風に説明したり、感想・連想を述べたりするのを、「ふむふむ」と相槌を打ちながら、聞いている。
「ある瞬間に、自分の言葉で話し始めると、とても面白くなる」「絵だけでなく、語り手の人間も見えてくる」「ちゃんとひとつにまとまることもあり、誰か一人の発言で、話がばらけてどうにもならなくなることもあり、それが楽しい」。
体験した女性が語っていたが、僕も一枚の絵をそんなに丁寧に見ることは少ないから、きっと新しい見方が出来るのではなかろうかと思う。
「心眼」という言葉を思い出した。
とても興味があるので、図書館に、「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を予約した。
順位一番、こりゃほかの本を早く読まなくちゃ。
田中秀征と佐高信の「石橋湛山を語る」を読了。
湛山に源を発する保守本流と岸信介由来の自民党本流の違いのひとつは、対米姿勢にある。
田中が、リクルートスキャンダルで政策遂行もままならなくなった自民党を、単騎でも離党する決意を固め、「最初は僕一人のつもりでいたら、パッと武村さんの顔が浮かんで」、武村正義を誘い、ついで自民党内の有志にも一人一人声をかけて、新党さきがけを結成、細川政権、ついで村山自社さ政権をつくったくだりも語られる。
自民党が過半数を割った1993年の衆院選、その選挙の最中に、とうじ新生党の小沢一郎が、反自民六党連立をまとめあげてしまい、細川をとりこんでしまう。
そういう先見性や剛腕の政治家は今日の衆院選後からの混乱に対して必須なのだろうが、現実は不在だな。
「ある瞬間に、自分の言葉で話し始めると、とても面白くなる」「絵だけでなく、語り手の人間も見えてくる」「ちゃんとひとつにまとまることもあり、誰か一人の発言で、話がばらけてどうにもならなくなることもあり、それが楽しい」。
体験した女性が語っていたが、僕も一枚の絵をそんなに丁寧に見ることは少ないから、きっと新しい見方が出来るのではなかろうかと思う。
「心眼」という言葉を思い出した。
とても興味があるので、図書館に、「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を予約した。
順位一番、こりゃほかの本を早く読まなくちゃ。
田中秀征と佐高信の「石橋湛山を語る」を読了。
湛山に源を発する保守本流と岸信介由来の自民党本流の違いのひとつは、対米姿勢にある。
佐高 対米関係において、戦前、戦中に、戦争に加担した人ほど、戦後は手のひら返しで向米的になるというのが、よく考えると変ですよね。石破首相が「日米地位協定」の見直しを述べたのは、保守本流の「独立国としての尊厳を守る」という基本に沿った考えだと、僕は思う。
田中 それは「昔はそうだったけど、今は改心してますよ」というのを見せるために、そういう態度になるんだろう。
佐高 一種の転向ですね。
田中 だからマイナスを背負っているということだよ、米国に対して。
佐高 それで過剰にもみ手しなきゃならない、と。
田中 湛山と宮澤(喜一)さんには、それがないから強いんだよ。
田中が、リクルートスキャンダルで政策遂行もままならなくなった自民党を、単騎でも離党する決意を固め、「最初は僕一人のつもりでいたら、パッと武村さんの顔が浮かんで」、武村正義を誘い、ついで自民党内の有志にも一人一人声をかけて、新党さきがけを結成、細川政権、ついで村山自社さ政権をつくったくだりも語られる。
自民党が過半数を割った1993年の衆院選、その選挙の最中に、とうじ新生党の小沢一郎が、反自民六党連立をまとめあげてしまい、細川をとりこんでしまう。
そういう先見性や剛腕の政治家は今日の衆院選後からの混乱に対して必須なのだろうが、現実は不在だな。
あのとき、自民党の河野洋平総裁が津島雄二をつれて田中秀征に会いに来て(宮澤の仲介で)、田中たちが提唱した「政治改革政権」に自民党も入れてくれ、いっしょに「挙党一致内閣」を作ろうと言ったという話は、次の自社さ政権につながるのかもしれない。
田中は、村山富市は「親湛山内閣」を作ろうとした、という。
田中は今の政治不信は裏金によるものではなくて、未来を託すに足るリーダーが与野党を通じて不在であることによる、という。
なぜ人物がいないか。それは、
人物に対して道をあけない政治が罷り通っているから。それは、世襲であり小選挙区制である。
田中は、小選挙区制が決まった経緯を説明し、彼の本音は中選挙区連記制だったという。
比例もブロックではなく全国とすることで、シングルイシューの集団も代表を国会に送りこめる、反原発だったら30人くらい(当初案の250として)は集まる、と。
ほんとうは「保守本流」というべき政治家が、健全な二大政党のもとで、力を発揮することが、日本の未来には必須条件である、そんな問題意識をもとに、それがアベ派などの政治思想とどう異なるのかを説き、あわせて田中の関与した政治活動の裏話も満載だ。
最後は湛山の遺した言葉でしめくくる。
私が、いまの政治家諸君をみていちばん痛感するのは、「自分」が欠けているという点である。「自分」とはみずからの信念だ。政治の堕落と言われている者の大部分は、ここに起因する。政治家の最もつまらないタイプは、自分の考えを持たない政治家だ。金を集めることが上手で、大勢の子分を抱えているというだけでは本当の政治家ではない。先日来、紹介してきた菊谷和宏の言葉にも通じるような気がする。
田中秀征は、苦節十年、草の根選挙の末に国会に登場するや、一貫してその志に忠実に、大局観と鋭い分析力でその時その時に何が必要かを見極めて、単騎となることも恐れずに、縦横無尽に活躍した。
湛山いうところの「本当の政治家」である。
僕は、田中がもっと長く現役政治家として活躍してほしかった、と思うのだ。
(世田谷 ナオキ 苺のマドレーヌ)
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jyon-non3 at 2024-10-27 17:59
とても勉強になりました。
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saheizi-inokori at 2024-10-27 18:28
> jyon-non3さん、裏話を読むとイフがいろいろあつて、歴史というものはいろんな可能性や選択肢を偶然でくぐり抜けてきたという面があるのだと感じます。
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unjaku at 2024-10-27 21:53
saheijiさんの言われる通り、今の日本にはリーダーが不在なのです。
一寸見強そうな人のもとに、子分が集まる。烏合の衆というやつですね。
子分は親分の指示には従うけれど、本当は保身に明け暮れているだけ。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
信念も何もあったものじゃない。
子分の面倒をみなけりゃリーダーにはなれない・・と平気で言う子分たち。
本当のリーダーは、国民や苦労して困っている人を助けに行くのだ。
だから一人のほうが動きやすい。
本当のリーダーは孤独で誰よりも苦労しているものだ。
一寸見強そうな人のもとに、子分が集まる。烏合の衆というやつですね。
子分は親分の指示には従うけれど、本当は保身に明け暮れているだけ。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
信念も何もあったものじゃない。
子分の面倒をみなけりゃリーダーにはなれない・・と平気で言う子分たち。
本当のリーダーは、国民や苦労して困っている人を助けに行くのだ。
だから一人のほうが動きやすい。
本当のリーダーは孤独で誰よりも苦労しているものだ。
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saheizi-inokori at 2024-10-28 11:01
> unjakuさん、一見国士風の右翼も経歴を洗ってみると、あっち行ったりこっち往ったり、右翼でいると食いっぱぐれがないから、そのまま落ち着いているうちに、憂国の士ができあがった、みたいなのも少なからず。
田中秀征のように、表に出ることを嫌い、身を挺して国事に奔走するようなのは、絶滅危惧というより絶滅してしまったのかなあ。
田中秀征のように、表に出ることを嫌い、身を挺して国事に奔走するようなのは、絶滅危惧というより絶滅してしまったのかなあ。
by saheizi-inokori
| 2024-10-27 14:10
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(4)