フーガな日々

イランの大統領が乗ったヘリコプターが行方不明という、いやな予感、ずっと続いているいやな予感が、さらに強まる。
世論調査は軒並み政権交代、自公引っ込めだが、さりとて野党にも大きな期待が寄せられない。
これもいやな予感。

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井上ひさし「ブラウン監獄の四季」を読了。
NHKで仕事をしていてNHK内の考査室から、言葉の使用について、いちいち小うるさいチェックがはいったことについて、彼はひょっこりひょうたん島の共作者・山元護久と、ザ・ドーナッツを結成して、考査室と戦った。
いくら「百姓」を「農民」に言い換えても、彼らの生活が変わるわけでないのは、「武器」を「防衛装備品」に「武器輸出」を「移転」に言い換えてもぶっそうな話であることに変わりはない(これは僕のことば)。
井上は、思想はコトバだから、思想の自由を大切に思うなら、コトバへの規制はあってはならない、という。
朝鮮人にむかって鮮人というのも、その人間の自由、ただ自分はその人間を軽蔑し、心から憎む、友人だったら絶交するという。

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「主人」を「つれあい」、「嫁に行く」を「結婚する」といいかえることで、世の中が変わるか。
今の市民社会の平等感が生んだ言葉の感覚で、その敏感さで、かつての時代に自然だった言葉を裁いてはいけない、とも。
差別語は枝葉であって、幹と根は別にある。
では、その幹と根はどこにあるか。
日本では天皇制にある。
皇室典範の第一条の「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」、なぜ女性差別撤廃に生命を賭けているという「女たちの会(略称)」は、この条文の改正を申し入れないのか。
天皇は別と云うなら、天皇が人間であることを認めていないことになる。

鈍感な僕でも大学時代に憲法を学んだ時に、日本国憲法は天皇の人権を認めていないということに気づいた。
悪くて過激な奴・井上ひさしを読み終えて、散歩にでた。

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マーシャル諸島共和国大使館、初めてみた。
ひょっこりひょうたん島の作者のエッセイを読んで、太平洋の島々からできたミニ国家の大使館をみるのも妙だ。

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せんじつ見つけたカフエで、カフエオレを飲む。
大きなカップにコーヒー、それとは別にミルクが出て、自分でまぜて飲む。
大きくて持ち手がないから、両手で包むようにして口元に運ぶ。
本を読みながらというわけにいかないから、飲物の味と正面から向き合う、じつに旨い。

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(金沢銘菓 くるみ くるみのかけらを餡でくるんだ最中、うまいけど小さすぎる)

「喫茶店文学傑作選」の読み残していた文を読む。
常盤新平「壱眞(かずま)」は、30歳の誕生日を目前にして、妻と二人で始めた高級喫茶店の、出世していく様子の目撃談。
吉村昭「西瓜」、離婚した夫婦がホテルの喫茶室で再会する、やりなおそう、お互いにそう思いつつ口に出せない、微妙な空気。
山田稔「街の片隅で」、まるでこうしている今の僕のように、さりげない街歩きと喫茶店のスケッチだ。

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尾山台の歩行者天国の方から、ズンズン、軽快な音楽が聞こえてくる。
DJのまわりに幼い子供や大人たちが、のんびり遊んでいる。

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古本屋で、書棚を眺めていたら、びっくり!「フーガはユーガ」という本があるではないか。
ちょっと前に「ユーガとフーガ」という駄文をブログに書いたばかりだ。
なにかの縁と手に取ってみたが、買う気にはならず、元に戻したら、ぽつぽつと雨が降り出す。

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以前、贅沢な時間を過ごさせてもらった「田園」、マスターが倒れて別の店になつていた。
ここで岡江さんとも一緒になつたのに、彼女も逝ってしまつた。
明るい人だったなあ。

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優雅かどうかは、別として、フーガだな、風雅じゃなくてトッカータとフーガのフーガ。
まいにち同じようなことを繰り返して、それがまったく同じってわけでもなく、少しづつ変化して、やがてフイナーレに近づいていく。
あろうことなら、それこそ、風雅とか優雅は無理としても、あまりジタバタせずに、いきたいものだ。

Commented by okanouegurasi-2 at 2024-05-21 01:03
ハートマーク2つ残したかった、です。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-21 09:43
> okanouegurasi-2さん、ありがとう、嬉しいです。
Commented by etinarcadiareni at 2024-05-23 11:52
本との出会い、面白いですね。
笑ってしまいました。(外で見ていなくて良かった)

インターネットで頼むのは、時短だし便利だけど。

本屋さんや古本屋さんに行く楽しさは、
こういう思いがけない出会いがあるから、
やめられないな。と思います。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-23 18:27
> etinarcadiareniさん、そうですね、実際の本を見たり触ったりすると、何かが語りかけてくるような感じがすることもありますね。
さつきも図書館でそういう本を三冊も借りてきたところです。
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by saheizi-inokori | 2024-05-20 12:06 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori