井上ひさしは悪いやっちゃ

どんより曇って、きのうの青空が恋し気な洗濯物だ。
日光に当たると乾きが早いだけでなく、もろもろのバイキンが退治されるような気がする。
おやおや、スマホじゃこれから雨の予想、とりこまなきゃ。
ま、ぎりぎりまで風にあてよう。

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井上ひさし、「ブラウン監獄の四季」を続けて読んだ。
上智大学独文科一年のときに学費が払えなくなって休学、国家公務員として釜石の国立療養所の事務員をやって、学資を稼ぐ。
そのとき、看護婦たちにこきつかわれたので、見返してやろうと、東北大学医学部、岩手医大を受験するが失敗、虚しく再上京して上智大学に復学するも、赤線通いなどで貯めた学資を使い果たし、浅草のストリップ小屋で進行係として働く(渥美清、谷幹一、長門勇、和田平助などがコントに出演していた)。
そんな閲歴のある男だけに、それらのことや、それに続いてテレビの「ひょっこりひょうたん島」の台本を書き、「手鎖心中」で直木賞を受賞したのちの、テレビ界でのことなどが、面白おかしく描かれる。

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今の世の中のように、見かけばかリお上品で、あの言葉はハラスメント、この言葉はお下品、エロだと言葉狩り全盛の時代には、これらのエッセイは陽の目をみなかっただろう。
だいたい、井上はほんとにお下品で助平だものな。
NHKのトイレ個室に直径一センチの穴ドリルであけて、隣りの女性個室をつかうスタ―を覗き見しようとしたけれど、穴を開けたところが低すぎて、顔をトイレの床につけなければ見えないので、こんどはもう少し高いところに開けようとドリルを持っていったら、前に開けた穴を守衛がふさいでしまっていた、すばやいなと感嘆していると巡回中の守衛に見つかって、散々に叱られた。
今なら、これが実話だったら、いや作り話だったとしても、このエッセイは掲載できないばかりか、井上はいくら人気作家でも犯罪人として作家失格したと思う。
そういうお下品な話って面白いに決まっている、と思う僕もお下品仲間だからだ。

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(ランチに作ってもらった「ひやっちる」、噛まずに流しこんで美味かった)

「一盗一窃のひけめ」というエッセイは、自分には、窃盗僻があって、旅館の湯上りタオルや灰皿、レストランのジャムポットなど、ちょっとしたものを盗む癖があると告白。
NHKに対しても、図書室の本を十数冊返していない、サインペン何百本、大型ホチキス、クリップ何箱か、算盤、原稿用紙、私用の郵便もNHKの公用と一緒に出してもらった、ライター、財布、ボールペンなど、地方取材のときの謝品のネコババ、、トイレの穴あけも含めて、多くの悪事を働いている。
そうすると、これらの小悪事の記憶が、NHKを批判しようとするときのブレーキになるという。
そんな偉そうなことを云っても、お前だって、このホチキスを盗み出したじゃないか、てな調子で。

といいつつ、「そんな偉そうなこと」の内容を、「優秀な人材がそろっているのに、放映している番組は軒並みくだらないものばかり、どこかおかしくなっているにちがいない」とか「国民の金で馬鹿でかいホール、うどの大木的建物をこしらえたけれど、国民にひとことでも相談したのか、まったくこのごろのNHKは国民を無視している」とか「『総理に聞く』という番組と同時に、『野党に聞く」というのも放送(放送時間は、総選挙における得票比で)すべきだ。それをしないのは小野吉郎会長が田中首相に、いい子いい子と頭を撫でられたことがあるからじゃないのか、小野氏は田中氏になにか借りがあるのではないか」とか、
花の芸能、鬼の報道、そして仏の教育局、というけれど、NHKの芸能局がなにが花なものか。芸能番組は民放局にまかせておけばいいのに、一丁前に民放局と視聴率競争なんかしている。真の意味での不偏不党の立場から、もっと真実を国民に知らせるトーク番組やドキュメンタリー番組に力を注ぐべきではないか。なにが大河ドラマだ、連続テレビ小説だ、笑わせるな
などと、つぶやくと、NHKでさんざん食べさせてもらったくせに、なにが批判だ、あんたこそ笑わせるな、とNHKの名入りタオルがせせら笑う。
一盗一窃のひけめがあるから言いたいことを云えない、と書いている。
あ~あ、みんな云っちゃった。

昭和48年から51年にかけて「小説現代」に連載された。
今も正鵠を射ている批判だと、下品で朴念仁の僕は大いに共感するのだ。

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(富士市、田子の月「富士山暦もなか」中はインゲン豆鹿の子豆を餅で包んである)

Commented by jyon-non3 at 2024-05-19 15:12
冷や汁美味しそうですね。

確か宮崎の郷土食にもあったような。・(^^♪

井上ひさしさん、好きでした。

亡くなられたときは淋しかったものです。
Commented at 2024-05-19 15:25
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by unjaku at 2024-05-19 19:23
そうだったのか。
私は「ひょっこりひょうたん島」で、初めて
「井上ひさし」の名前を知った。
台本を書いているくらいだから、有名な人だろうなぁ、と
子ども心に思っていた。
ところがとんでもない奴。面白いなぁ。
「ひょっこりひょうたん島」には中山千夏・楠とし江・藤村有弘・熊倉一夫?
そうそうたる俳優陣が声優として、出演していたんだもの。
忘れることなんかできないわ。

自分の小悪人を自覚しているから、物を言うのも多少自重する。
そういう人いなくなったねぇ。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 09:35
> jyon-non3さん、全国各地にあるようで、肝心の故郷長野のは食べたことがないのは、あそこにはないのかな。
井上ひさしは過激ですね。
それがDVにまでいったのか、そこが幻滅ではあります。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 09:37
> 鍵コメさん、シンクロですね。
ユリさんもかなりの御年になられた?
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 09:41
> unjakuさん、春休みに家で受験勉強をしていると、壁一枚隔てた隣の家から、ひょっこりひょうたん島が聞こえてきて、化学記号は覚えないのに、ドンガバチョの筋を追いかけていましたよ。
このおっさんは、小悪人を自覚しながら、ぜんぜん遠慮もしないでいいたいことをいったのです。
自分がやったDVなんか、すっかりスルーして。
Commented by stefanlily at 2024-05-20 11:34
おはようございます、
前妻にかなり酷いことしていたようですね。
林真理子も書いていたけど、大作家となった井上ひさしに対して、出版社側の忖度が凄まじかったと。非常に知的な前妻が仕事の面でも苦労する事態になったと。
これは私の憶測ですが、米原真理の妹と再婚したのは、姉妹のロシア語とロシア文学、特に演劇に関する知識(チェーホフ)に依る影響力もあったのでは。
浅草時代については、ビートたけしとの対談が掲載された本も出てますよ。
「看護婦の部屋」だったかな?、プレイボーイの医師を演じた渥美清主演の戯曲が掲載されてます。
病気で休演していた渥美清が復帰した時の浅草の演芸界に活気が戻ったと。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 12:49
> stefanlilyさん、面白い本を教えていただいてありがとう。
擁護するつもりはありませんが、ワイフビーターは珍しくなかった、佐藤首相も世界に名を轟かせましたね。
浅草のストリップ劇場には入ったことがないなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 12:50
> kitaoni22さん、失礼しました^^。
Commented by rinrin1345 at 2024-05-20 13:17
そうですよね。時代がそういう時代だったのか、とも思いますがそんな破天荒な人だから面白いものが作れたかな?なんて擁護しちゃいます。山形の記念館には行ってみたいです。
Commented by めぐ at 2024-05-20 16:48 x
井上ヒサシは家族の愛情を知らないで育ち 寂しい人でしたね。それでも
妻に対するDVを知った時には愕然としました。  どんなに貧しくても家族は寄り添って助け合うものだと思っていたので。悲しい生い立ちが事件を生みます。

歯の痛み お見舞い申し上げます。顎関節症で苦しかった事を思い出します。マウスピースを作ってくれた口腔外科の教授のお話では やはり生真面目で頑張るので寝てる時も食いしばって頑張るようです。 
今はそういう苦しみはなくなり山歩きの後の筋肉痛です。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 18:47
> rinrin1345さん、私は悪いところも含めて近しさを感じます。亡妻やカミさんに手を上げたことはありませんが。
Commented by saheizi-inokori at 2024-05-20 18:52
> めぐさん、そうかもしれない、寂しく貧しい育ちが露悪的な人間を生んだのかもしれませんね。
さつき歯科に行ってぎましたが、自律訓練法なるものを説かれました。
マウスピースは薦めないとのこと。
山歩きの筋肉痛!最高です。
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by saheizi-inokori | 2024-05-19 12:23 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(13)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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