たまには寄席もいいもんだ
2024年 05月 14日
さいごにふつうの寄席(独演会とかのホール落語を除き)に行ったのは、調べてみると5年前池袋演芸場に居残り会の人たちと行って、はねたあとは例によって大酒を飲んで騒いでいる。
コロナや懐ぐあいのせいで、憑き物が落ちたように、落語や能、文楽、映画などから遠ざかり、引きこもりの暮らしになった。
「はじめ」にもずっとご無沙汰だ。
福さんのコメントで馬風の近況をうかがい、急に寄席に行きたくなった。
この人をじっくり聴きたいというような独演会や二人会などのホール落語とちがって大勢の噺家や漫才師、曲芸師、手品師などが入れ替わり立ち替わり出てくる寄席は、やるほうもみる方も気楽で、独特の雰囲気がある。
毒舌をふるう馬風とかいつも同じギャグをいう漫才などが懐かしくなった。
さいわい、カミさんが、一日家にいてサンチをみてくれるというし、外は雨なので、新宿末広亭に出かける。
前は伊勢丹で弁松の弁当を買って、寄席のなかで食いながら聴くなんてこともしたけれど、それほど一人もあまさず聴こうというような気持はない。
久し振りだし、ちと歩いて見ようと、物色するまでもなく、屋台のようなタイ料理やが目につく。
昼飯時で、勤め人のような男女が、楽し気に食うというより話をしている。
トムヤムクン850円を注文して、サラダとスープ食べ放題(フリー)というのに気づき、セルフサービスで菜っ葉とココナツの砕いたの、スープも、いいよなあ、こういう異国情緒、店の主人?もタイの服装をしている。
木戸銭は身障者割引で2500円(一般3000円)、もぎりのお姉さんの感じも、、おお、これぞスエヒロテイだ。
3分の一くらいの入り、最後列に坐ろうとすると、下にヴィトンの分厚い財布と小銭入れが落ちている。
それをお姉さんに届けて、高座は琴調の講談の途中だ。
曲垣平九郎のなんたらをやって、まばらな拍手でさがる。
ついで聞こえてきたお囃子、てれつくてんてれつくてん、ひょうひょう、覚えているぞ、圓太郎の出囃子だ。
肥えたのか、年をとったのか、丸くなった圓太郎の「真田小僧」
父の留守中のオッカアの秘事をばらすからカネちょうだい、なんのことはない、マッサージのオジサンが来て施術したのを、白い服を着た紳士、蒲団の上に浴衣でよこたわるオッカア、ってきわどい目撃談で、まんまとカネをせしめる。
紋之助「曲ごま」
ヨシっ!彼独特の掛け声、「ちょっと待ってもらっていいですか」、合間にはいる語り、真剣刃わたり、
みんなみんな、マンネリ、マンネリこそ寄席の命、と思ったら、「あのお、わたしゃオオタニが好きなんです、あんな爽やかな人は楽屋にいません」が、久闊を叙する僕には新しい。
じつは野球より、卓球が好き、だから今日は羽子板の代わりに、アメ横で買ってきた水谷隼モデルのラケットでやります、ってのも初めてだった。
はん治「鯛」
耄碌したヤクザの抗争を描く「背なで老いてる唐獅子牡丹」を聴きたかったのだが、もうひとつの十八番、生簀の中の鯛の哀話となった。
生簀に入れられて20年も生き延びた銀次郎鯛が、新入りの若鯛に生き延びるための鯛生訓を語る。
この人のわずかにかすれたような声、どこかの田舎のイントネーションが好きなのさ。
小袁治「夢の酒」
番組表には小満んとあって、それが一番聴きたかったのに、代演になってしまったのは残念至極。
昼寝をしていた夫が、夢の中で向島の粋な姉さんに酒をふるまわれたばかりか、けしからぬ事態になろうとするのを起こされて、惜しいことをした、とけしからぬことをいった。
若嫁・おはながその話を聞いて、大声で悔しがり泣きわめく。
表で聴き咎めた大旦那に、夢の中に行って、ひとの亭主を誘惑しないように諭してくれと、頼む。
嫁可愛さで、夢の中へ、、
ちと大げさな演出、あれじゃ「町内の若い衆」の熊さんの女将さんだ、もっと可愛げに色っぽくやってほしかったぜ。
中入り後、桃花「表彰状」
小朝の弟子、二つ目ぴっかりのころに、なにかの縁で園太郎に上野連玉庵で蕎麦をご馳走になったとき付いて来た子だ。
可愛らしかった、ぴっかりが真打になって、美しさも加わった。
間抜けな泥棒が、はずみで老婆を救って人命救助で表彰される、新聞に顔も載る、そりゃ困るってんで、悪いことをすれば取り消しになるだろうと、いろいろやるのだが、ますます表彰されるような善行になってしまう。
首をしめられるところで、「橘屋園太郎さんみたいなことしないで」と叫ぶのは、実体験があったのか、悪いやっちゃ園太郎。
ロケット団・漫才
これもマンネリ街道まっしぐら、四文字熟語で「疑心暗鬼」ならぬ「小林製薬」が出たりするのが、最近風。
圓歌「ヤカン工事中」
「やあ、愚者、よく来たな、なんかようか」「ここのかとおか」何でも知ったかぶりの御隠居に八つあんが次々に「世の中で一番大きいものは?」「天、一に大と書く」「いちばん汚いところは?」「北極、キタない」、、書いて見たらおかしくもないような頓智の類をポンポンと彼一流のしゃべりで聴かせる。
「地球温暖化の原因は?」「松岡修造」、僕も「熱い」と言われたなあ、申し訳ないことだ。
小団治「ガマの油売り」
白髪で如何にも町内の御隠居といった風情だが、噺はどうも。
仙志郎・仙成「太神楽」まさしく正しいマンネリ!
これがなきゃ、ね。
さん遊「笠碁」
寄席で「笠碁」を聴けるなら、もうそれだけでセロニアス、モンクはない。
まして、あの「目芸」、碁仇が店の前を行ったり来たりするのを目の動きだけで見せる。
あれはテープじゃ見られないもの。
子どもの時分から強情で通っている、子どもの時分から我儘で通ってる、つまらないことを自慢しあう子供の時分からの仲良し二人、いい老後だね。
もっともまだ還暦になったかどうか、僕からみたら子供のような二人だ。
(末広亭の前に出来ていた店、ズエヒロ亭とでもよぶか)
コロナや懐ぐあいのせいで、憑き物が落ちたように、落語や能、文楽、映画などから遠ざかり、引きこもりの暮らしになった。
「はじめ」にもずっとご無沙汰だ。
福さんのコメントで馬風の近況をうかがい、急に寄席に行きたくなった。
この人をじっくり聴きたいというような独演会や二人会などのホール落語とちがって大勢の噺家や漫才師、曲芸師、手品師などが入れ替わり立ち替わり出てくる寄席は、やるほうもみる方も気楽で、独特の雰囲気がある。
毒舌をふるう馬風とかいつも同じギャグをいう漫才などが懐かしくなった。
さいわい、カミさんが、一日家にいてサンチをみてくれるというし、外は雨なので、新宿末広亭に出かける。
前は伊勢丹で弁松の弁当を買って、寄席のなかで食いながら聴くなんてこともしたけれど、それほど一人もあまさず聴こうというような気持はない。
久し振りだし、ちと歩いて見ようと、物色するまでもなく、屋台のようなタイ料理やが目につく。
昼飯時で、勤め人のような男女が、楽し気に食うというより話をしている。
トムヤムクン850円を注文して、サラダとスープ食べ放題(フリー)というのに気づき、セルフサービスで菜っ葉とココナツの砕いたの、スープも、いいよなあ、こういう異国情緒、店の主人?もタイの服装をしている。
木戸銭は身障者割引で2500円(一般3000円)、もぎりのお姉さんの感じも、、おお、これぞスエヒロテイだ。
3分の一くらいの入り、最後列に坐ろうとすると、下にヴィトンの分厚い財布と小銭入れが落ちている。
それをお姉さんに届けて、高座は琴調の講談の途中だ。
曲垣平九郎のなんたらをやって、まばらな拍手でさがる。
ついで聞こえてきたお囃子、てれつくてんてれつくてん、ひょうひょう、覚えているぞ、圓太郎の出囃子だ。
肥えたのか、年をとったのか、丸くなった圓太郎の「真田小僧」
父の留守中のオッカアの秘事をばらすからカネちょうだい、なんのことはない、マッサージのオジサンが来て施術したのを、白い服を着た紳士、蒲団の上に浴衣でよこたわるオッカア、ってきわどい目撃談で、まんまとカネをせしめる。
紋之助「曲ごま」
ヨシっ!彼独特の掛け声、「ちょっと待ってもらっていいですか」、合間にはいる語り、真剣刃わたり、
みんなみんな、マンネリ、マンネリこそ寄席の命、と思ったら、「あのお、わたしゃオオタニが好きなんです、あんな爽やかな人は楽屋にいません」が、久闊を叙する僕には新しい。
じつは野球より、卓球が好き、だから今日は羽子板の代わりに、アメ横で買ってきた水谷隼モデルのラケットでやります、ってのも初めてだった。
はん治「鯛」
耄碌したヤクザの抗争を描く「背なで老いてる唐獅子牡丹」を聴きたかったのだが、もうひとつの十八番、生簀の中の鯛の哀話となった。
生簀に入れられて20年も生き延びた銀次郎鯛が、新入りの若鯛に生き延びるための鯛生訓を語る。
この人のわずかにかすれたような声、どこかの田舎のイントネーションが好きなのさ。
小袁治「夢の酒」
番組表には小満んとあって、それが一番聴きたかったのに、代演になってしまったのは残念至極。
昼寝をしていた夫が、夢の中で向島の粋な姉さんに酒をふるまわれたばかりか、けしからぬ事態になろうとするのを起こされて、惜しいことをした、とけしからぬことをいった。
若嫁・おはながその話を聞いて、大声で悔しがり泣きわめく。
表で聴き咎めた大旦那に、夢の中に行って、ひとの亭主を誘惑しないように諭してくれと、頼む。
嫁可愛さで、夢の中へ、、
ちと大げさな演出、あれじゃ「町内の若い衆」の熊さんの女将さんだ、もっと可愛げに色っぽくやってほしかったぜ。
中入り後、桃花「表彰状」
小朝の弟子、二つ目ぴっかりのころに、なにかの縁で園太郎に上野連玉庵で蕎麦をご馳走になったとき付いて来た子だ。
可愛らしかった、ぴっかりが真打になって、美しさも加わった。
間抜けな泥棒が、はずみで老婆を救って人命救助で表彰される、新聞に顔も載る、そりゃ困るってんで、悪いことをすれば取り消しになるだろうと、いろいろやるのだが、ますます表彰されるような善行になってしまう。
首をしめられるところで、「橘屋園太郎さんみたいなことしないで」と叫ぶのは、実体験があったのか、悪いやっちゃ園太郎。
ロケット団・漫才
これもマンネリ街道まっしぐら、四文字熟語で「疑心暗鬼」ならぬ「小林製薬」が出たりするのが、最近風。
圓歌「ヤカン工事中」
「やあ、愚者、よく来たな、なんかようか」「ここのかとおか」何でも知ったかぶりの御隠居に八つあんが次々に「世の中で一番大きいものは?」「天、一に大と書く」「いちばん汚いところは?」「北極、キタない」、、書いて見たらおかしくもないような頓智の類をポンポンと彼一流のしゃべりで聴かせる。
「地球温暖化の原因は?」「松岡修造」、僕も「熱い」と言われたなあ、申し訳ないことだ。
小団治「ガマの油売り」
白髪で如何にも町内の御隠居といった風情だが、噺はどうも。
仙志郎・仙成「太神楽」
これがなきゃ、ね。
さん遊「笠碁」
寄席で「笠碁」を聴けるなら、もうそれだけでセロニアス、モンクはない。
まして、あの「目芸」、碁仇が店の前を行ったり来たりするのを目の動きだけで見せる。
あれはテープじゃ見られないもの。
子どもの時分から強情で通っている、子どもの時分から我儘で通ってる、つまらないことを自慢しあう子供の時分からの仲良し二人、いい老後だね。
もっともまだ還暦になったかどうか、僕からみたら子供のような二人だ。
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k_hankichi at 2024-05-14 13:44
良いなあ!また行きたくなりました!
伊勢丹で弁当買うのがカッコいいです。
伊勢丹で弁当買うのがカッコいいです。
2
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saheizi-inokori at 2024-05-14 14:57
> k_hankichiさん、今も売ってるのかなあ、七百円だつたと記憶します。江戸の弁当ですね。
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りんご
at 2024-05-14 23:57
x
北欧の国のお皿?に蓬餅とは 優雅ですね
いま小さな街で音楽を聴く休暇中で、優雅な人の考察を
楽しみました。悠々と自然、他と比べず属性に関心薄し
自らを信じる愛おしむ力ありが共通と。するすると寄席に
足を運び居場所を自由にするsaheiziさんは優雅な方です~(詳細割愛)
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福
at 2024-05-15 06:28
x
心にアクセスすることばが沢山出てきます。
>蓮玉庵
よく通い、今でも好きす。
ご主人はエリントンのファンで、
向かいにあったイトウ(ジャズ喫茶)の店主とレコード談義をしていました。
>桃花
「表彰状」は上野でも。
曰く、「雨の日に寄席に見える方が真の文化人」
陽の気が素晴らしくて、出ると客席が明るくなる。
着物の柄にも酒肴、いや趣向を凝らしているみたいです。
>蓮玉庵
よく通い、今でも好きす。
ご主人はエリントンのファンで、
向かいにあったイトウ(ジャズ喫茶)の店主とレコード談義をしていました。
>桃花
「表彰状」は上野でも。
曰く、「雨の日に寄席に見える方が真の文化人」
陽の気が素晴らしくて、出ると客席が明るくなる。
着物の柄にも酒肴、いや趣向を凝らしているみたいです。
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saheizi-inokori at 2024-05-15 09:34
> りんごさん、やっぱ、ユーガですか。誘蛾灯に囚われないように気をつけましょう。
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saheizi-inokori at 2024-05-15 09:44
> 福さん、浅草にも行きたかったのですが、遅くなるので新宿にしました。
無銭飲食をして表彰状を免れるって、理屈に合わないのが面白いですね。
もうひとりの今売り出し中の女性○○子はどうも、僕には合わないけれど、桃花は理屈っぽくない明るさがいいです。
連玉庵で昼酒をやりたくなりました。
そこから東博にでもぶらり^^。
無銭飲食をして表彰状を免れるって、理屈に合わないのが面白いですね。
もうひとりの今売り出し中の女性○○子はどうも、僕には合わないけれど、桃花は理屈っぽくない明るさがいいです。
連玉庵で昼酒をやりたくなりました。
そこから東博にでもぶらり^^。
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unjaku at 2024-05-15 12:01
こんにちは。
3月末から一時帰国していたカナダのボーイフレンド。
上野で落語聴いたそうですよ。
「いいなぁ 日本の落語! 秋に来たらまた行くか!」
あ・・・私も落語連れてってぇ!思はず言いそうになりました。
3月末から一時帰国していたカナダのボーイフレンド。
上野で落語聴いたそうですよ。
「いいなぁ 日本の落語! 秋に来たらまた行くか!」
あ・・・私も落語連れてってぇ!思はず言いそうになりました。
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saheizi-inokori at 2024-05-15 12:46
> unjakuさん、憑き物にならない程度に聴くのがよろしいかと、、。
by saheizi-inokori
| 2024-05-14 13:08
| 落語・寄席
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