テレビドラマ

悪いことにも良い面がある。
膝や腰が痛くて歩けなくなったけれど、その後体操などで軽快して歩けるようになったら、歩けることの有難さが身に染みてわかる。
何にもない、変り映えしない場所でも、歩くこと自体が楽しく思える。
まして、春の日の花と輝くこの頃ときたら!



テレビのドラマを見ることはあまり好きじゃなかった。
朝ドラも猪苗代にいた頃、駅前の食堂で昼飯を食いながら、宇野重吉や加東大介が出た国鉄職員の物語「旅路」をみたくらい、大河ドラマでずっと見続けたのは緒形拳の「太閤記」、あとは最初のうち少し見ても続かなかった。
分かっていることをクダクダ喋ったり説明したり、せっかく面白くなってくると、お次は来週またどうぞ、というのがかったるいのだ。

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さいきんになってカミさんといつしよに「鎌倉殿の13人」はほとんど見て、「光る君へ」は、まじめに見続けている、家康のなんとかは、つまらなくて二人ともパス。

民放のドラマは今に至るもまったく見ようとも思わず関心も持たなかった。
現役時代は見る暇も、まったくなかったし。
女性の友人から、いくつか、是非見なさいと勧められた番組も、一度か二度見ると、わざわざその日にまたとか録画してまで見ようと思えるようなのはなかった。
たまに旅先の宿で晩飯を待つ間にテレビをつけると、ドラマをやっていることがあるけれど、途中から見るせいもあって、どこが面白いのかと思われてとうてい続けてみる気にはなれないのだ。

それなのに、このところ二夜にわたって「VIVANT」というのをまとめてみた。
年末年始に総集編とかいうのがあって、それをカミさんが録画してくれたので、それを、続きはまた来週なしに、コマーシャルを飛ばして見ているのだ。
「分かっていることをクダクダ」どころか、老人性難聴に近づいている僕には聞き取りにくいような早口で、すぐには意味もくみ取れないようなことをポンポンしゃべる。
でも外国映画を字幕なしで見ていると思えば、ぞれよりは遥かにわかる。
おとといは第二部が長くて、もうすぐ終わるかと思ってがんばっていたら、11時近くなって、こっちから「続きはまた」にした。

高校時代に、予備校の模試に挑戦するために上京、郵政省のおえらいさんだった叔父の家に泊めてもらったら、とうじはまだ珍しいテレビジョンが「研究用」としておいてあった。
何をみても興味深く、映画やドラマも見ていたら、叔父が「実社会で向き合ういろいろだけで、もうたくさんなのに、それとおなじようなもんを、わざわざテレビで見る気がしれない」と笑った。
実社会から離れて久しくなったので、あの頃の僕のようにテレビドラマを見る気になったのかもしれない。もっとも「VIVANT」は、実社会で向き合うような事件ではないけれど。

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「女刑事の死」、さらに120頁ほど読む。
殺された女刑事の葬儀は、故人は無宗教だったがトリニテイ・バプテイスト教会で行われた。
トリニテイ・バプティスト教会は設計と政治と女について極端な好みをもっていた。ある大学の建築科の教授の設計で五十年代の半ばに建てられた。州議会は男がどういう女を好むか、あるいはどんな種類の煉瓦を好むか、そういうことを気にする必要があるとは考えなかったが、ある議員が言ったように、「政治についちゃ、だまっていられない」と思っていた。議員たちはさらに、アカに大学で学生を教えてもらうのは困るとも思っていた。そこで彼らは下院議会の破壊活動分科委員会の前に教授を引っ張り出してきて、彼の常軌を逸した政治理論について、容赦なく訊問ぜめにしたが、それに飽きると、今度は彼の女たちと、彼の設計について、やはり容赦なく訊問ぜめにした。
リトル・ディキシ―の名で呼ばれる、その州のある地区選出の七十二歳の議員は教会の庭を飾る予定になっている、かなり自由な形式の彫刻のスケッチをふりまわした。ほんとに、バプテスマのヨハネはそういう姿をしていたと考えているのか、と彼は教授に問いただした。教授は、実際それはヨハネによく似ている、と回答した。そして、やさしい笑みをうかべて、委員会は聖人の髭のなかにピンクの色を見つけただろうか、とたずねたが、誰も彼が何をいおうとしているのか、どうもはっきりつかめなかった。その後まもなく、聴聞会はおわった。教授は四文節の辞表(「勝手にしやがれ、おれは辞める」)を提出して、カリフオルニア大学バークレイ校へ移った。バプティストたちは彼の設計を使って教会を建てた。ほとんど誰もが、いまはその教会をすごく気にいっている。
オークランドのトリニテイ教会のことだろうか。
五十年代というから、違うかも知れない。
町や建物について、こういうエピソードがしょっちゅう語られるのだ。
テレビドラマを見るようになったけれど、やはり僕は本を読む方が面白い。

Commented by ginsuisen at 2024-03-04 13:42
最近の俳優は滑舌悪く、聞き取りにくいです。
昔のは、音声録音悪いのでやはり聞き取りにくい。
で、うちでは、字幕に設定してみていますが、TV局側が字幕設定できないのもあります。
こんどの大河、少しは見ていますが。1年つづくかな~の気分。
三田村先生の講義のおもしろさに比べると、うーんな感じで。でも、平安の文化や政治のこと、知らないことが現代人は多いからいいのかな。天皇家のことも知らないこと多いですものね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-04 14:09
> ginsuisenさん、ほんとに滑舌悪いですね。
それとジャニーズなどの下手くそ!ビイバンの二宮?ひどすぎる。
光の君はこれからどう展開するのか、いささかモタモタしている、昨夜は見なかったけど。

Commented by vitaminminc at 2024-03-04 16:07
我が家も聴覚障害の母のために、字幕設定にして観ています。
たまに字幕が出ない番組などを見ると、字幕に慣れているせいか、日本語なのに聴き取れないことに焦りを覚えます。
字幕に頼らず聴き取る力をつけた方がいいのか、字幕を終える動体視力を養うべきなのか。
まあ、母に合わせてこれからも字幕設定で視聴するしかありません。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-04 18:26
> vitaminmincさん、字幕設定つて、家の古いテレビでもできるのかな。
聴き取る力をつける、それはなかなか難しいでしょうね。
テレビの音が大きく聞こえる装置があるみたい、私はそこまでは悪くありませんが。
Commented by Solar18 at 2024-03-04 19:30
早口は世界的な現象なのでしょうか。こちらでもドラマなどはもとより、アナウンサーのニュースを読む速度もますます加速しています。時間内にたくさんの内容を詰め込もうとするのでしょうかね。
Commented by 20070707open at 2024-03-04 20:39
私は「vivant」をNetflixで一気に観ました。
面白いと思いました。
夜眠れない時に観るドラマは私を非日常の世界へ連れて行ってくれてストレス解消になります。
私も最近のドラマの早口が聞き取れなくて何度も巻き戻して観ることがしょっちゅうあります。
Commented by at 2024-03-05 06:36
BS日本テレビで再放送している「家政婦のミタ」を楽しんでいます。
松嶋菜々子は妖艶という感じですが、ここでは全く異なるキャラに・・・
テーマは「家族とは?」「現代人は愛し得るか?」というものです。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-05 10:31
> Solar18さん、情報量ばかり増えても、質が伴わず、質があっても聞こえない!
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-05 10:33
> 20070707openさん、我が家はまだ全部見ていないのです。
長いですね。
聞こえない、同病相憐れむですね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-05 10:35
> 福さん、「家政婦はみた」は言葉だけ知っています。
柱の影から覗くの、はやりましたね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-05 10:38
> 福さん、そういえばルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」という小説は面白かったですよ。
Commented by at 2024-03-06 06:43
管理人様。そうなんです。
市原悦子「家政婦は見た」のもじりで(落語みたいな)、
「家政婦のミタ」でして、ミタは松嶋菜々子(家政婦役)の役名です。
家族は信頼し得るか?
父親の不倫で崩壊していく家庭に、不幸な境遇の家政婦が関わるドラマです。
Commented by saheizi-inokori at 2024-03-06 09:42
> 福さん、そのドラマも題名だけは知ってました。
シリアスなのですか。
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by saheizi-inokori | 2024-03-04 09:16 | よしなしごと | Trackback | Comments(13)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori