塩を食う者

きのうの散歩は五本木までバスに乗って、そこから歩いた。
いろんな知らない道を歩いて、いつのまにか以前に歩いた道に出ると、なぜか不思議な感じがする。

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祐天寺の角の、古びた民家、前から気になっていたのを覗いてみるとカフエになっていた。

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入ってみると、客は僕だけ、カフエラテを頼んで、片隅に坐る。
静かな店で一時間、「塩を食う女たち」を読み終えた。

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古民家カフエ、トイレが広くきれいで、奥や二階にも客席がある。

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祐天寺をちょっと見て、バスで帰宅。

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藤本和子の「塩を食う女たち 聞書・北米の黒人女性」。
黒人であり、女性であるという二重の苦難を生きのびた人たちの言葉には、強さだけではなく優しさや、誇りと自負がある。
多くの黒人女性の高潔と勇気は、黒人であったからこそ、黒人であるからこそ手放すことのできないものだということが、彼女たちと話しているとわかるようになる。敗北の最終地点は自らの人間性を売り渡してしまうことだと、彼女らは信じている。いつでも生きのびることが最小にして最大の課題だった彼女らにとって、生きのびるとはつねにそういう意味を含んでいる。

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「塩を食う女たち」とは、本書にも登場する黒人女性作家、トニ・ケイド・バンバーラの長篇「塩食う者たち」(The Salt Eaters)から採ったという。
塩にたとえられるべき辛苦を経験する者たちのことであると同時に、塩を食べて傷を癒す者たちでもある。
蛇の毒は塩を食って中和する。「蛇の毒」は黒人を差別し抑圧する社会の毒である。
塩を食らう者たちは生きのびること、再生することを願う者たちであるし、体内にあって多すぎても少なすぎても逆効果になる「塩」という基本的な生の要素を分かち合う者たちでもある。
生存の根としての塩、その塩を食らう共同体。
いつkkk団に殺されるかわからない恐怖、理不尽な差別について語り、そのなかでどうやって生きのびたかを振り返り、共同体の力、草の根の運動や分かち合いの心を強調する。
それらの言葉には、力があり、ある種のゆとりすら感じさせる。
格言のような言葉も発せられる。
一人一人の話が、破天荒でいてまっとうな事この上なく、優れた小説を読むような楽しさも与えてくれた。
アメリカの黒人について、ステロタイプの印象しかもっていなかった蒙を啓いてもらった。

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蒙を啓くといえば、ドイツとイスラエルの関係についての、下↓の論考は、とても参考になった。



世襲選挙で生き残ることが、目的と思われる自民党議員たちには、黒人女性に見られる高潔さや、やさしさは微塵もない。
塩を食うときは血の滴るようなステーキとともに食うのだ。



Commented by noboru-xp at 2024-02-28 11:48
イザベラ・ディオニシオさんによると紫式部は
「給湯室ガールズトークの元祖」らしいです。
『平安女子は、みんな必死で恋してた』より。
Commented by rinrin1345 at 2024-02-28 12:09
素敵なカフェを見つけましたね。祐天寺なんて何十年も昔の話になります。このドタバタが終わったらゆっくり東京見物もしたいです。
Commented by テイク25 at 2024-02-28 14:44 x
「マンゴー通り・・・」(くぼたのぞみ訳)を読み始めようとしています。それが終わったら「アメリカの鱒釣り」の訳者あとがき(藤本和子)だけでも読んで、それから「塩を食う女たち」に向かおうと思います。

長州新聞の「ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち」は読む価値大いにありの記事ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-02-28 17:06
> noboru-xpさん、なるほど!大河ドラマもそんな感じですね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-02-28 17:08
> rinrin1345さん、暖かくなりますね、暑くならないうちに!
Commented by saheizi-inokori at 2024-02-28 17:10
> テイク25さん、希望(のぞみ)と真理(斎藤)界隈は、刺激を受けますね。私は次はミステリかな、藤本和子訳の。

Commented by tona at 2024-02-28 21:52 x
この本、読みたくなりました。
ご紹介ありがとうございます。
Commented by byogakudo at 2024-02-28 23:23
長周新聞の記事のご紹介、ありがとうございます。

<そして歴史学そのものが、人間の足跡と尊厳を簡単に消すことができる
暴力装置であることへの自覚の希薄さがある。その政治的緊張感のなさは、
ドイツ現代史に限った話ではない。>

ドイツは外面を整えた上で背信行為をやってのけたが、世界史に登場したのが
(ドイツよりも遅く)明治以来である日本は、外面の取り繕いさえせずに80年
近い戦後を過ごしてきたのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-02-29 07:18
> tonaさん、おすすめします。
Commented by saheizi-inokori at 2024-02-29 07:19
> byogakudoさん、まつたく!
恥ずべきですね。
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by saheizi-inokori | 2024-02-28 11:38 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori