角野英子さん

夜中に左足首が痛んだが、起きられたので、今年二回目の大掃除と洗濯を約三時間がんばった。
便器を磨くのがもっともスッキリいい気持になる。

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白湯を飲みながら、「魔女の宅急便」の角野英子さんの話をチラッと聞いた。
「本を読む喜びは道草の楽しさ」「若い頃の孤独を癒してくれたのは書くことだった。
書くことによって生き続けることができた」「なにか夢中になれるものがあることが大切だ」。
いずれも、ンダンダ!僕も同じく、本を読むことの楽しさは道草の楽しさだし、書くことが生き続ける動力になっている。

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志ん生が、吉原遊郭の仕組みを語ったあと「学校じゃ教えてくれない」と言って、笑わせた。
いま多くの噺家も真似してそういっているけれど、彼らはもう遊郭のない若者だったのだ。

僕の知っていることなんて、塵みたいなものだが、その大部分は学校で教わったことじゃない、母や祖母、近所のおばさん、友人や妻、先輩後輩たち、さいきんは子供や孫からも、教わることが多い。
しかし、本を読むことで得た知識量もそれらに勝るとも劣らないのじゃないか。
もっとも、人から教わったことに比べて、本で得たことは、時間効率は高いけれど、すぐに忘れる。
忘れても、知った瞬間の喜び、喜んだという記憶は残るようだ。

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今読んでいる「舞踏会へ向かう三人の農夫」は、まさに道草を楽しむ小説の典型だ。
軽口や皮肉に彩られて、アッチ飛びこっち飛びして古今東西の逸話が語られる。

トロツキーが逃亡するのに一役買ったメキシコのリベラがデトロイト美術館に壁画を描いたのは、資本家の草分けを父に持つフオード二世の依頼によるものだった。

「舞踏会へ向かう三人の農夫」というデトロイト美術館に飾られている写真は、ドイツ人アウグスト・ザンダーの作品であり、ザンダーは13歳で炭鉱に入り、記録写真家として、人類の醜い顔を写すことで、それまでの専ら美を写す写真家とは反対の生き方をした最初の写真家だったこと。

ザンダーと同じく、小学校を出てすぐ農場で働いたヘンリー・フオードが、第一次大戦をやめさせるべく、平和船を仕立ててオスロまで行ったが、その目的は果たされなかったこと。

サラ・ベルナールという名前だけは知っていたべル・エポックを象徴する女優が、棺桶の中で寝ていたこと。
宮殿からあばら家に至るまで誰もが彼女を知っていたこと、彼女が執拗な噓つきだったこと、極端に痩せていたこと、その三つだけが彼女について万人が同意する事実であること。

息子について、みずから、
この子の父親が誰だったのか、どうしても決められなかったの。ガンベッタ(フランス第三共和政樹立に寄与した政治家)か、ヴィクトル・ユーゴーか、ブーランジェ将軍(対独強硬姿勢で人気のあった軍人政治家)か。
といったこと。

ガブリエーレ・ダンヌンツオがベルナールと結びつきがあったこと、彼が港市・リエカをめぐる紛争に際し、イタリア義勇団を組織して独立国家を樹立したこと、その時導入した黒シャツを後の雇い主ムッソリーニが復活したこと。
サラによるラシーヌの「フエ―ドル」が上演されているパリで、アルフレッド・ジャリの「ユピュ王」も上演されて、それは冒頭の一語「クソッタレエ」で、ジャリをアバンギャルド(前衛)の旗手としたこと。

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ドイツ軍によるパリ陥落が不可避にみえたときも、サラは踏みとどまろうとしたが、ドイツ皇帝が生け捕りにしてベルリンに連れ帰るべしとした有名人のリストの筆頭にあがっていることがわかって、パリっ子たちは半狂乱になって、彼女をむりやりパリから追い出す。
彼女が乗ったタクシー運転士にシャンゼリゼに寄っていくように指示すると、シャンゼリゼには、まるまる一個の軍隊をマルヌ会戦に輸送するための五百台のタクシーが並んでいた。
一人の将校が、サラの乗った車をとめて、徴用に応じない運転士を叱責したが、乗客がサラ・ベルナールであることを知ると、「お許しくださいマダム、存じ上げなかったものですから!おい運転手、行け、マダム・サラ・ベルナールを駅までお連れして、それから戻って来て俺たちを手伝え、、、どうぞ心安らかにお行き下さい、マダム」といったこと。

まだまだ、道草はつづくのだ。

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(名取の甘仙堂の「くるみゆべし」、どっしりした味、しっかりクルミを食べている感じがする)

Commented by stefanlily at 2024-01-13 17:06
こんにちは、
読んでるはずなのに思い出せない…
三島の著作で頻繁に見る事柄がありますね。
サラ・ベルナール(アルフォンソ・ミューシャのポスターにありますね)の話はマタ・ハリや川島芳子、岡田嘉子、李香蘭と混乱しそうw
あるいはヘミングウェイのパリでの活動とか。
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-13 18:19
> stefanlilyさん、三島の想像力を刺激したのでしょうか。
世界にはいろんな人がいたのですね。
今は?どうなのだろう?
Commented by hanamomo60 at 2024-01-13 20:47
おばんです!
んだんだ、本っていいすな~。

舞踏会へ向かう三人の農夫、3人ともかっこいいですこと!

淡い色の寒夕焼けはご隠居のご近所ですか?
きれいですね。

胡桃柚餅子も美味しそうだけど、美しいお皿に目が釘付けです。
いい形、いい色、いい模様です。
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-14 09:52
> hanamomo60さん、面白い本と美しい夕焼、それにうまい菓子、ありがたやありがたや!
Commented by tona at 2024-01-14 09:56
あのポスターのサラ・ベルナールが!
驚きでした。
日本の中だけでも色々な物語が無数にあるのに、こうして外国のを読みますと歴史、思考など全然違う所があるわけで面白いですね。面白い本を探しこられる名人。引き寄せられていくのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-14 11:56
> tonaさん、こんな面白い本を読みにくいと積読にしていたのです。
読まれる頃合いをはかって待っていてくれました。
Commented by sonoma0511 at 2024-01-14 14:12
柚餅子でしたか?私も好物です。
素適な器と共に一瞬何だろうと目を凝らしました。
能登輪島市に柚餅子のお店があったのです。雑誌「ミセス」で見て
どうしても欲しく取り寄せました。大きな丸柚子の中に堅い柚餅子が
びっしり詰まっていて少しづつ削ってお茶うけにしました。
そのお店かどうか分からないが老舗が被災されたようです。
輪島の復興は前途多難でしょうね。
Commented by otebox at 2024-01-14 16:07
読むこと=道草の楽しさ
書くこと=生き続ける動力
ご明察!!なんて楽しい人生!うじうじしてんじゃないよ、前を見て生きよと頭をはたかれた思いです。ありがとうございます。
Commented by jyariko-2 at 2024-01-14 17:26
本を読んで得たものは忘れても
知った瞬間の喜び 喜んだという記憶は残る
全くその通りの私です
それでもいいんですよね その喜びがあれば
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-15 10:15
> sonoma0511さん、写真で見る限り壊滅状態ですね。
せめて少しでも多くの人間の無事を祈りたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-15 10:17
> oteboxさん、頭を叩く、とんでもないです。
私こそ、いつもoteさんから激励されています。
Commented by saheizi-inokori at 2024-01-15 10:24
> jyariko-2さん、知ったそばから忘れていきます。
それでいいも何も、そうでしかありえません^^。
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by saheizi-inokori | 2024-01-13 12:20 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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