飯塚事件

きのうは録画しておいたドキュメンタリー「正義の行方」を見た。
2022年中に放送されたテレビ番組で文科大臣賞を受賞したNHKの力作だ。
1992年に飯塚市で通学途中の一年生女児二人が強姦殺人された飯塚事件。

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(駒沢公園)

容疑者・久間氏は最後まで犯行を否認し続けたが死刑になる。
刑の確定から、わずか二年、足利事件のDNA再鑑定が報道された一週間後に死刑が執行された。
DNA鑑定が取り入れられたばかりで、科警研による鑑定にはいくつか問題があって、これをもって久間氏を有罪にすることはできないというのが、大学教授たちの見解だった。

ずさんなDNA鑑定、詳しすぎる目撃証言、遺留衣服に付着していた車の繊維、、いくつかの「有罪の証拠」は、そのどれをとっても単独では有罪と決められないのに、「総合的に」考えて有罪とされたのだ。

死刑のあと、遺族は再審を求めるが、2021年最高裁は特別抗告を棄却する。
さらに遺族はあらたな目撃証言にもとづき再審を請求、現在審理中。

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ドキュメントは、捜査にかかわった人たち、弁護士、遺された夫人、有罪の線で報道した新聞記者と編集幹部たちの、そのころの気持などをインタビューでつなぎながら、それぞれの立場を浮き彫りにしていく。
俳優をつれてきたのかと思うほど、それぞれの人たちの風貌や語り口がその職務にぴったりで、迫力満点だった。

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警察を追いかけることで有罪のスクープ報道をした西日本新聞社の編集幹部は、再審請求をうけて、独自に調査報道をおこなう。
自分たちが久間氏を死に追いやったような自責にかられたのだ。
最後に、その責任者が、「久間氏が罪を犯したかどうかは、わからなかった。しかし、証拠によって有罪がはっきりしない場合は、疑わしきは罰せずで無罪とされるべきであった」という。
欧米では裁判所の前におかれる、天秤をもった法の女神は目隠しをしているのは、被告の身分や見かけにとらわれず、証拠だけによって有罪か否かを判断する。
それが、日本の最高裁の女神は目隠しをしていない、と指摘したのは大学教授だったか。
証拠物を見るのも、主観でなくて客観でなければならないのに、それは日本の司法には至難のようだと、記者はいう。

こういうことがあるのも、死刑制度の致命的な問題だ。

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「三国志 第八巻」は孫権も曹操に劣らぬ読書家だったことを伝える。
人の上に立つ者は、師承というものを得られなくなる。しかしながら、群臣と大衆を善導するために朝から夕まで考えつづけても益はない。師のいない者は、読書するしかないのである。人、家、国が栄えることと衰えることには、必然がある。いまここで孫権がそれについて考えこまなくても、三百年もまえの哲人や歴史家たちが、明快に教えてくれている。
朝から夕まで考えようともしないで、いきあたりばったりに迷走するリーダーは、読書する気もないだろうし、何を読んでも学ぼうとしないのだろう。
それどころか歴史を改ざんして恥じない、後世の人たちに合わす顔がなかろう。

Commented by kogotokoubei at 2023-11-24 14:10
私も見ました。

最近では貴重な、実に優れたドキュメンタリーだと思います。

天秤をもった法の女神、日本の最高裁にある像は目隠しをしていないと言ったのは、法医学者の押田茂實さんですね。

西日本新聞が、久間三千年犯人説を継続して訴えながら、内部で調査報道部隊を組織化した姿勢は、評価したいと思います。

石山教授に圧力をかけたのは、その後警察庁長官になる國松氏でしたね。

なかなかの作品でした。
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-24 15:29
> kogotokoubeiさん、ありがとう。国松さんなら千葉時代に本部長をしていて面識があります。
酔がまわつていて、ちゃんとききとれなかったです。
Commented by waku59 at 2023-11-24 16:49
西日本新聞は地方新聞としては珍しく反権力なんです。
ちなみにわが香川県の地方紙の四国新聞は権力の広報紙です。
Commented by kogechatora at 2023-11-24 21:38
クロに近いグレー…だけど…DNA鑑定を否定したら物証は無い…難しい事件…死刑とは恐ろしい制度です。
足利事件が無罪判決となって、袴田事件の再審も始まった今、この報道の意味は大きいと思います。
日本の警察は大丈夫なのか…を掘り起こす調査報道、文春砲だけじゃなく、こんな報道がたくさん出てきて欲しいと思います
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-25 10:59
> waku59さん、そうでしたね、がんばっていますね西日本新聞。
地方紙には骨のある記者が存在しているようです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-25 11:02
> kogechatoraさん、ジャーナリストとしては当たり前のことが希少になりました。
あとに続け、志のある人たち!
Commented by eblo at 2023-11-25 12:09
主観は客観よりかなり強い気がします、頭では分かっていても心は否定してしまうような。
和歌山カレー事件で死刑囚となっている女性、私は「本当に犯人なの?」と今でも疑っています。
ニュースで観る限りでは、殺人の証拠があると感じられないので。
あの当時その話をした大阪出身の友人は「彼女は絶対犯人、あの顔は悪い人間の顔」と言っていましたが。
長野のサリン事件の時、突然犯人とされた男性、彼の時も私は警察発表に?を感じていました。
その時も別の友人は「彼が犯人に間違いない」と力説。
どちらの主観が正しいか分かりませんが、殺人犯とされた人や家族にとっては他人の主観で裁かれたらたまったもんじゃない。
裁判自体が人間には無理なことなのだと思います、特に裁判員にとっては。
裁判が必要なことは確かなので、せめて死刑廃止にして万一間違っていた時に備えるべきだと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-25 13:12
> ebloさん、そうですね、結局そこに行きつきますね、人間は間違うのだから死刑は駄目。
それにしても一部の政治家の顔はみるからに悪ですね^^。
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by saheizi-inokori | 2023-11-24 12:10 | 責任者を出せ! | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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