デマを流すのは誰だ

ゆうべは足が冷えて目が覚めてしまった。
我慢ならず、起きて靴下をはいて、やっと寝られた、一時ちょっと前のこと。

洗濯物の干した側が、もう乾いて、裏返しにするためにベランダにでると日の当たる顔があついくらいだ。

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送っていただいた太陽の恵み、熟したのが好きなのだ。
今年の初物。
日ざしを腹の中にとりこむような気持になる。
これが体を冷やすなんて嘘ではないだろうか。
モツアルトを聞きながら柿を食うなんざ、最高!

江馬修「羊の怒る時」の「その後」も読了。
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関東大震災直後、浅草の区長をしている長兄を訪ねて、多忙の兄のあとをついて観音さま、吉原、公園などを見て歩く。
動員された人夫たちは、死臭がしみついて服も靴も使いものにならなくなっている、それでいて死体を触った手を洗いもせずにお握りを食うのだ。
兄と自分に出されたお握り、腹が減っているけれど兄の仕事が切れ目がないのでお預け、そこに追っても追っても蠅がたかる。
兄は、尻込みする自分を𠮟りつけて平気で食うのだ。

吉原の女郎たちが、逃げきれなくなって弁天池に飛び込んで大勢死ぬ、そのなかでも、とっさの機転が利く人は、火勢の強い方に飛び込んで助かるのだ。
火勢はいずれ弱まって、いま燃え始めた側に移ると判断したのだ。

区役所に区長といると、半狂乱になった母親が、行くえ不明の我が子を訊ねて飛び込んできて、答えを待たずにどこかに行ってしまう。

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観音堂が奇跡的に無事だった。
大勢のひとが観音様のご利益をもとめてお参りにくる。
社務所で、火事に攻められていたときのことを聞く。
二万か三万人か、お堂に集まったひとたちで、バケツリレーで消火にあたった。
もう大丈夫となると、みんなぐったりして居眠りをする人も出始める。
役員が、まだ周囲に火があるのだから油断してはいけないと云っても、言うことを聞きやしない。
フト、朝鮮人のことを思いだして、これを利用するに限ると、大きな声で「いま朝鮮人が、四五十人、爆弾や石油をもって観音を包囲している」と叫んで歩いた。
人びとは一斉に生気づいて、殺気立ってくる。
そして朝鮮人狩りがはじまった。
何十人も罹災者のなかに隠れていたのをみつけて、ふんずかまえた、私もお堂の下にもぐろうとしているニ三人を摑まえた、彼らは爆弾を持っていた、とどこまで本当かわからない自慢噺をするのだ。

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(閉店になつた古本屋)

自分は、ドイツ帰りの友人と、教養のなさがデマを流通させることや朝鮮人虐殺は日本人全体の責任だと話しつつも、「一体どこからそんな流言が出たのか」も明らかにされなければならないと語りあう。

かなり昔に佐野真一の「巨怪伝」という正力松太郎の評伝を読んだことがある。
そのなかで、朝鮮人が暴動をおこすという情報を積極的に広めたのは、とうじ警視庁の実質的トップである、官房主事をしていた正力松太郎だとあった、のちに読売新聞中興の祖として社主になる人だ。
広めた、というのが言い過ぎだとすれば、少なくとも正力自身が、朝鮮人暴動を真実と信じて、当局者として、軍とも打ち合わせ、各警察署に「各地で不逞な輩が暴動を起しているという情報がある。厳しく取り締まれ」と通達する(2日の夜)。
警察が流言にお墨付きを与えたのだ。
後に正力は、警視庁の失敗だったと認めている。

さらに、映画「金子文子と朴烈」(原作・瀬戸内寂聴『余白の春 金子文子』)においては、朝鮮人虐殺は、時の政府が積極的に創作したデマで、これによって戒厳令を発令し、市中の「不逞」朝鮮人を根こそぎ逮捕撲滅しようとしたとある。



Commented by maya653 at 2023-11-21 12:09
いったいコレなに?と思ったら柿の写真でしたか!
私もジュクジュクに熟した柿が好きですが、こうやって食べたことなかったです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-21 12:24
> maya653さん、果汁もスープのように食べるのです。
幸せです。
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by saheizi-inokori | 2023-11-19 12:32 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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