日本は進歩したか

すばらしい初冬の青空、早くから洗濯物を干したら、もう乾きかけている。
大掃除もしっかり。

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家に帰ったサンチは、さいしょ見当がつかず、あちこちに頭(カラー)をぶつけて、絨毯の上におしっこをしてしまった。
抗生物質や鎮痛剤などの薬を缶詰にくるんで食べさせたら、しばらくして抗生物質だけ吐き出した。
それを更に小さくして、餌と一緒にたべさせようとしたけれど、いっかな口を開かない。
諦めて、しばらくしたら、ひとりでやってきて残りの抗生物質もはいったご飯をきれいに食べた。
よほどお腹が空いて、もうなんでもいいや、と腹を決めたのかも。

けさはオムツをつけたまま、トイレにやってきて、そこでオシッコ。
あちこち歩いて、かなり記憶を取り戻したようだ。
ひだまりの自分の布団に寝そべっている。

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けさも昨夜の鳥鍋の残りで雑炊で朝ごはん、とてもとてもうまかった。

江馬修(しゅう)、1889年、岐阜県高山生れの作家、僕は知らなかった。
彼の実体験をルポルタージュ(本人は小説と書いているが)にした「羊の怒る時」。
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とうじは郊外だった代々木初台に住んでいた作家の関東大震災体験記だ。
震災の翌年の1924年12月から104回にわたって台湾日日新聞に連載され、すぐに単行本として出版された。
おそらく日本で一番早い震災の文学作品、江馬には本作を書く心の用意ができていたと、解説の天児照月は、その事情を書いている。

地震の来る前の家庭の日常から、発生後の変化が、冷静かつ目にみえるような迫力でとらえられる。
自分たちの家の状況が、一段落すると東京方面、神宮の森の上あたりに煙があがり、夜は「まるで宇宙の秩序が乱れて、狂った太陽が時ならず昇ろうとでもしているかのように」人々の顔をあかく照す。
本郷に住む実兄の無事をたしかめることもできない。
庭に集まった近所の人たちと情報を分かち合う。

二日目の昼過ぎ三時ごろ、隣りに住むI中将が、そこらを一回りしてきたらしく、低い声で「今そこでフト耳に挟んできたんだが、何でもこの混雑に乗じて朝鮮人があちこちへ放火して歩いていると云うぜ」、本当だろうか、というと、「無いとも言えないと思うね、日頃日本の国家に対して怨恨を含んでいるきゃつらにとっては、言わば絶好の機会というものだろうからね」と暗い調子で云うのだ。

朝鮮人の友をもって、それゆえに彼らが日本国家に対する気持もわかっていて、彼らに同情がある自分も、ありえないことと言い切れないのだ。

朝鮮人が三百人蜂起してこちらに向かったという警報がでて、逃げだす人も多い。
男は武装して出ろと言われるが家族をほってはおけない。
妻も子も、お父さん出かけないで、と止め、妻は朝鮮人が襲ってきたら、あなたはベッドの下に隠れてください、私が必ず守りますというのだ。
合言葉「初」「台」が決められ、ハチマキが住人の証となる。

友達の朝鮮人に危険だから外出するなというけれど、なんにも悪いことをしていないのだから、と所用にでてしまい、帰ってこない。
彼らは地震直後に、近所の日本人母子を倒壊した家から救い出したのだ。

火事がおさまった本郷まで歩いて兄の無事をたしかめにいく。
悲惨な状況、朝鮮人デマは、しだいに拡大して、日本人でも朝鮮人に似ていると身の危険を感じて警察に連れていってもらったりもする。
自分も長髪のために、危なかったが、兄が浅草の区長をしているといって許される。

朝鮮人だったら殺してもいい、と警察がいったというデマが信じられ、刀を持ち出す。
自分が警察に行って確かめて、そんなことはない、と明言しても、田舎の警察だから分かっていない、とか、そんなことを言ってるあなたが危ないぞと脅される。
警鐘がしょっちゅう鳴らされる。
在郷軍人や隣組が主体の警戒、ついで自警団も組織される。

朝鮮人と分かっていて通行を許す日本人もいる。
朝鮮人だって人間である、この単純にして明快な真実を、三日目の夕方になって、自分は初めてこの若い男から聞いたのであった。

残虐な場面は書かれていないが、さまざまな目撃者の話などが語られて、じわじわと恐怖が広がる。

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大震災後の三日間を描いた「羊の怒る時」についで「その後」という作品も半分ほど読んだ。
発災後、八日、自分はI中将を訪れて、日露戦争の意義について、
我々日本人は白人闕(けつ)に対してあくまでも戦わねばならない亜細亜人種のチャンピオンになった。同じように白人共の横暴と虐げのもとにある有色人種たちの国々を扶けて、世界の人種的偏見を打破すべき貴い使命を担って立ったのだ。
ところが、不幸にして日本はこの最も肝要な点を自覚しなかった。それどころか、勝利に酔わされて、有頂天になって、同じ兄弟である他の亜細亜人種のことなぞ忘れてしまった。そして世界の一等国になり上がって、専横この上ない代表的な白人種の英国と同盟するに至った。
といい、世間の人がどれほど目覚めたかという話題になる。
「世間だってこの四、五年随分進歩した」という中将に対し、自分は
じゃ、一体どれほど進歩したのでしょう。最近震災中のあの朝鮮人虐殺事件なんかどう解釈したらいいんでしょうね。最も近い人種の間でさえ、人種的偏見ってこれほどひどいものかと思って、僕本当に恐ろしくなりましたよ。
これじゃ日本人は白人種の横暴などを憤慨する資格がない訳ですね。
こんなやりとりがある。
百年前にくらべて、今の世間は進歩したのか。
少なくとも、この事件を公に認めようとせず、なかったかの如くにしようという自民党の連中は、ずっと退化しているのは確かだ。



戦争の教訓・反省を早々と忘れて、なりふり構わず経済第一主義で「一等国になり上がり、専横この上ない代表の米国と同盟」して、トマホークだの何だの軍備増強に血道をあげているところも、あの頃と変わり映えしていないように思える。
もはや、一等国なんて、恥ずかしくていえたものじゃない、ていたらくだけれど。

Commented by tona at 2023-11-19 09:52 x
大正7年生まれのは亡き母は東京に住んでいましたので、近所の井戸でのその事件を知っていて、私に何かの時に話してくれました。
デマって恐ろしいですね。
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-19 10:01
> tonaさん、今もデマにのせられているってことも多いのでしょうね。
Commented by takoomesan at 2023-11-19 16:18
デマもでしょうけど、知らん間の洗脳が怖い!
Commented by saheizi-inokori at 2023-11-19 16:30
> takoomesanさん、まつたく!
この五十年、どれだけ洗脳されてきたことか。あの頃の常識が非常識もしくはなかつたことにされています。
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by saheizi-inokori | 2023-11-18 14:30 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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