「死者の書」を背負って病院のハシゴ
2023年 11月 15日
循環器内科の検査は、やや中性脂肪が高いが、ほかは問題なし。
尿検査の結果をもとに僕の塩分摂取量を計算(手持ちのスマホで)してくれて「6・8、好いですね、立派です」なかなかこうならないのだとのこと。
すばらしい天気だけれど、きょうはもう一カ所、眼科にも行かなくてはならない。
バス代が少しでも節約できるから、クリニックのハシゴだ。
検査のあと、およそ三か月分の点眼薬を処方してもらって、こんどは歩いて都立大学前のパン屋をめざす。
八雲小学校の庭で、うららかな冬の日をあびて、子供たちが興じているのは、クリケットだろうか。
創立百五十年を祝って子供たちが作ったフラッグが街灯にはためく。
僕の小学校は、あの頃八十年のお祝いをしたから、きっと同じころにできた、たぶん日本でも最古に近い小学校だ。
音楽室からピアノの音がして、「見上げてごらん、、」と歌声、見上げると夜の星ならぬ雲一つない青空だ。
学校のまわりをぐるっとまわって氷川神社の境内にはいる。
いつもは門の外からお辞儀をして通り過ぎているのだが、拝殿の前で手を合わせる。
椎の実がたくさん落ちていて、鈴をみあげて、母の遺した句、「拝殿の鈴は木の実の音に鳴る」のことを思う。
椎の実をみてから、鈴を鳴らすと、あたかも椎の実が鳴っているように聞こえた、という意味だろうか、と、僕も鈴を鳴らしてみたが、鈴は鈴の音しかしなかったよ。
オシャレな女性が入って行った小さな菓子屋、老人たちが昼飯を食べているのがみえたデイホーム、区民センター、さいきんつぶれてしまった古本屋の隣の洋服やも閉店セール、共産党の事務所、コーヒーや、寿司屋、洋食屋、薬や、花屋、静かな商店街を歩く。
小学校、神社、ピアノの歌、秋晴れ、、なんか出来過ぎだなあ。
奥様たちでにぎわうカフエには入らず、前に来たことのあるカレーの店に螺旋階段をあがる。
時分時なのに、一人しか客がいない。
950円の野菜カレーを頼む。
でっかい、えっと、あれナンったけと言葉が出てこなかったが、そのナンをちぎっては、野菜をくるんで食う。
マイルドな味がうまいっちゃうまいけど、もっと辛くてもいいのだな。
ジャガイモ、ニンジン、インゲン、グリンピース、マッシュルーム、野菜の煮込み・カレー味といいたくなるほど野菜がどっさり入っていた。
薬局で目の薬をだしてもらって、あやうくそのままもっと遠くに歩いて行こうとして、そうだパン屋だった、と気がつく。
始めてみる店員ばかリ四人もいて忙しそうにしている。
「○○ですが、予約しておいた」というと、「はい、○○さんですね」、その声に後ろ姿の一人が振り返って、僕を認めてにっこりする、いつもの人だ。
「今日はまたずいぶんたくさん、新人さんだね」というと、さっきの人が「はい、新人です」と胸をはった。
パンをぶら提げて、薬の入ったリュックを背負って、区民センターの広場にいく。
幼い子供を遊ばせている母親、シートをしいてランチしている二家族、ゴルフボールくらいな柿がみっしりなっている。
広場に面したカフエで、三百円のコーヒーと百円のクロカンを楽しみながら、「死者の書」を読み終える。
前に読んだときは、文体に慣れないせいか、ちっとも頭にはいってこなかったのに、萬葉集の大津皇子の死から横道に入ってきたら小説の冒頭が大津皇子が黄泉の世界で目覚める場面だから、すんなりその後の物語の世界にひたることができた。
あとからきて隣の席に座った、よろよろ歩きのお爺さんが、ソフトクリームを、首を斜めにしてすくいあげるようにして舐めているのが目の端にみえた。
バス停まで行く途中に『万葉の碑』というのがあって、このあたりで暮らしていた庶民が詠んだという三首がそれぞれ丸い碑に刻まれていた。
椎の木だろうか、根元に鳩が群れて夢中になって、何かをついばんでいる。
近づいても逃げやしない、ずうずうしい鳩だと思ったら、何かのはずみで、いっせいに飛び立つ。
飛び立っても、遠くには行かずに、意地汚くこっちをみているのだ。
食事の邪魔して悪かったな、ふりかえることもなく後にしたら、すぐにバスがきた。
尿検査の結果をもとに僕の塩分摂取量を計算(手持ちのスマホで)してくれて「6・8、好いですね、立派です」なかなかこうならないのだとのこと。
すばらしい天気だけれど、きょうはもう一カ所、眼科にも行かなくてはならない。
バス代が少しでも節約できるから、クリニックのハシゴだ。
検査のあと、およそ三か月分の点眼薬を処方してもらって、こんどは歩いて都立大学前のパン屋をめざす。
八雲小学校の庭で、うららかな冬の日をあびて、子供たちが興じているのは、クリケットだろうか。
創立百五十年を祝って子供たちが作ったフラッグが街灯にはためく。
僕の小学校は、あの頃八十年のお祝いをしたから、きっと同じころにできた、たぶん日本でも最古に近い小学校だ。
音楽室からピアノの音がして、「見上げてごらん、、」と歌声、見上げると夜の星ならぬ雲一つない青空だ。
学校のまわりをぐるっとまわって氷川神社の境内にはいる。
いつもは門の外からお辞儀をして通り過ぎているのだが、拝殿の前で手を合わせる。
椎の実がたくさん落ちていて、鈴をみあげて、母の遺した句、「拝殿の鈴は木の実の音に鳴る」のことを思う。
椎の実をみてから、鈴を鳴らすと、あたかも椎の実が鳴っているように聞こえた、という意味だろうか、と、僕も鈴を鳴らしてみたが、鈴は鈴の音しかしなかったよ。
オシャレな女性が入って行った小さな菓子屋、老人たちが昼飯を食べているのがみえたデイホーム、区民センター、さいきんつぶれてしまった古本屋の隣の洋服やも閉店セール、共産党の事務所、コーヒーや、寿司屋、洋食屋、薬や、花屋、静かな商店街を歩く。
小学校、神社、ピアノの歌、秋晴れ、、なんか出来過ぎだなあ。
奥様たちでにぎわうカフエには入らず、前に来たことのあるカレーの店に螺旋階段をあがる。
時分時なのに、一人しか客がいない。
950円の野菜カレーを頼む。
でっかい、えっと、あれナンったけと言葉が出てこなかったが、そのナンをちぎっては、野菜をくるんで食う。
マイルドな味がうまいっちゃうまいけど、もっと辛くてもいいのだな。
ジャガイモ、ニンジン、インゲン、グリンピース、マッシュルーム、野菜の煮込み・カレー味といいたくなるほど野菜がどっさり入っていた。
薬局で目の薬をだしてもらって、あやうくそのままもっと遠くに歩いて行こうとして、そうだパン屋だった、と気がつく。
始めてみる店員ばかリ四人もいて忙しそうにしている。
「○○ですが、予約しておいた」というと、「はい、○○さんですね」、その声に後ろ姿の一人が振り返って、僕を認めてにっこりする、いつもの人だ。
「今日はまたずいぶんたくさん、新人さんだね」というと、さっきの人が「はい、新人です」と胸をはった。
パンをぶら提げて、薬の入ったリュックを背負って、区民センターの広場にいく。
幼い子供を遊ばせている母親、シートをしいてランチしている二家族、ゴルフボールくらいな柿がみっしりなっている。
広場に面したカフエで、三百円のコーヒーと百円のクロカンを楽しみながら、「死者の書」を読み終える。
前に読んだときは、文体に慣れないせいか、ちっとも頭にはいってこなかったのに、萬葉集の大津皇子の死から横道に入ってきたら小説の冒頭が大津皇子が黄泉の世界で目覚める場面だから、すんなりその後の物語の世界にひたることができた。
あとからきて隣の席に座った、よろよろ歩きのお爺さんが、ソフトクリームを、首を斜めにしてすくいあげるようにして舐めているのが目の端にみえた。
バス停まで行く途中に『万葉の碑』というのがあって、このあたりで暮らしていた庶民が詠んだという三首がそれぞれ丸い碑に刻まれていた。
椎の木だろうか、根元に鳩が群れて夢中になって、何かをついばんでいる。
近づいても逃げやしない、ずうずうしい鳩だと思ったら、何かのはずみで、いっせいに飛び立つ。
飛び立っても、遠くには行かずに、意地汚くこっちをみているのだ。
食事の邪魔して悪かったな、ふりかえることもなく後にしたら、すぐにバスがきた。
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mitch_hagane at 2023-11-15 20:12
>「拝殿の鈴は木の実の音に鳴る」…
なるほどねぇ、鈴の起源を調べてみますと、「鈴は、縄文時代にクルミなどの木の実やマメを振ると外殻や鞘の中で種子が動いて鳴ることに着想を得て作られた道具ともいわれる。」、とあります。
歴史ある拝殿を前にして、その鈴の音にいにしえの人々の知恵を聞いたのでしょうか、よいですね。
なるほどねぇ、鈴の起源を調べてみますと、「鈴は、縄文時代にクルミなどの木の実やマメを振ると外殻や鞘の中で種子が動いて鳴ることに着想を得て作られた道具ともいわれる。」、とあります。
歴史ある拝殿を前にして、その鈴の音にいにしえの人々の知恵を聞いたのでしょうか、よいですね。
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福
at 2023-11-16 06:31
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折口信夫の文体に慣れるなんてすこぶるつきの難事です(笑)
丸谷才一も呼吸が合わないと書いていました。
それでいて、文学について迷ったときは、必ず折口全集を紐解く。
該当論文だけと思いながら読み始め、結局、一巻をまるまる読んでしまうこともある、
と感嘆していました。
丸谷才一も呼吸が合わないと書いていました。
それでいて、文学について迷ったときは、必ず折口全集を紐解く。
該当論文だけと思いながら読み始め、結局、一巻をまるまる読んでしまうこともある、
と感嘆していました。
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saheizi-inokori at 2023-11-16 09:00
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saheizi-inokori at 2023-11-16 09:04
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20070707open at 2023-11-16 10:49
都会の中の癒しの街角を散歩する番組を観ているような気分になりました。
お天気がいいと画像の空気感が違いますね^^
塩分摂取を控えることは我が家の食生活でも大きな課題です。
saheiziさんの食生活は理想的なのですね。
私も見習わなければ・・・
お天気がいいと画像の空気感が違いますね^^
塩分摂取を控えることは我が家の食生活でも大きな課題です。
saheiziさんの食生活は理想的なのですね。
私も見習わなければ・・・
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saheizi-inokori at 2023-11-16 12:51
by saheizi-inokori
| 2023-11-15 11:29
| こんなところがあったよ
|
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Comments(6)