古今亭志ん生「風呂敷」
2023年 09月 18日
落語仲間から教えてもらって、テレビで志ん生の「風呂敷」の寄席中継録画をみた。
亭主が今日は帰らないと云うんで、若い男といっぱいやっていたら、とつぜん亭主がへべれけになって帰って来る。
やきもち焼の亭主に男と二人でいたことを知られたら大変だから、男を押し入れに隠しておいて亭主を寝かそうと思ったが、亭主は押し入れの前にでんと座って動かない。
カミさん、困って兄さんのところに助けを求めにやって来る。
兄さんは、大きな風呂敷を持って、その家に行き、素知らぬ顔で亭主の愚痴を聞いてやる。
「用事が済んだから早く帰ったら、人の顔を見るなり、親の仇に出っくわしたような顔をして、もうかえったのかあい!とこうだ。そして、あんまり早いから、もうお寝よって、お前の顔は人を寝かせるような顔じゃねえ、寝てるものが飛び起きて駈けだすような顔だ、、、油虫の背中みてえな色をしやがって、寝ようよとは、なにごとだ、、なぜそう亭主をおびやかすんだ」とご機嫌が悪いが、ふと、「それで、おめえは?」と兄貴の用件を尋ねる。
「俺かい?俺やあなんでもねえんだ」と気乗りのしないようすで、「よそで少しごたごたがあって、、口利きでな」というと「どんなごたごただ?え?」と亭主が乗って来る。
「泊って帰るといった亭主が早く帰ったために、いっしょにいた若い衆を押し入れに隠したんだが、酔っぱらった亭主が押し入れの前に座って動かねえんだ」「ううん、始末に悪い野郎だなあ、それでどうやって片っつけた?」「(そっけなく)いいよ、どうしても」「おいおい、聞かしてくれやい」、てんで、こっからは仕方噺で、風呂敷を取りだして、「こうやって、その野郎の頭にさあ、すっぽりかぶせちゃって、めえるか?めえねえだろう、そうやって、こっちい少し押して,そこの押し入れをな、すういとあけたんだ、なあ?ひょいとみるとその野郎いやがんのよ」、そこで「早くでろ、忘れもんはねえな」どうやらねえようだ、下駄あ間違えるんじゃねえぞ、そしたらな下駄も間違えねえように行っちゃったからな、その風呂敷を取ったって、、話だ。
酔っぱらった亭主、「そうかあ、あ、そいつはうまく逃がしやがったなあ」
とまあ、そんな噺、兄貴と女房、兄貴とカミさんの間のギャグの連続と後半の亭主と兄貴の会話と仕方噺が見所だ。
この噺、僕はテープをいくつか持っているから、しょっちゅう聴いている。
なんど聴いても飽きずに、一人でクスクス笑っている。
口げんかで、出てけと言われた女房が「ああ、出ていくよ、出て行くから返せ、私(しと)のシャツ着てやがって」「その代わりてめえ、俺の猿股はいてやがるじゃねえか」とか、女房をこともあろうに「シャツの四つ目のボタンみてえなもん、あってもなくてもいい」とか、「百万年前のトカゲみてえな面(つら)ァしやがって」とか、間男していることを薄々勘づいている兄貴が、「女は三階に家なし」とか「貞女びょうぶにまみえず」とか「じかに冠を被らず」「おでんに靴を履かず」などの頓珍漢な教えを垂れたりもする。
今の日本じゃ、セクハラ・パワハラの誹りもあるだろうが、可笑しいものは可笑しいのだ、書いたものではあの間の面白さは半分も伝わらないけれど。
テープでは想像してみるしかなかった後半の仕方噺のセリフと手さばき・目配り、見事なもんだった。
これで、テープで聴く時の想像の翼がより大きく羽ばたくだろう。
番組の司会を文菊がしていたが、志ん生の芸を前にすると、いかにも不自然さが際立ってしまうのだった。
落語を見たあとは本を読むつもりだったが、ついヤクルト対巨人の中継を見てしまった。
ヤクルトは敗け続けて、もうB級確定なのに、急に調子をあげて今頃になってDeNAに勝ったりする。
クライマックスシリーズに巨人を出場させないためには、DeNAが勝ち残らなければならないのだ。
ヤクルトの勝利よりも巨人の敗北を願うなんざ、スポーツを愛する資格がないようなものだが、あの監督の笑い顔を見るなら野球をみたくないのだ。
むかし、巨人がホテルかなんかでやった納会に古今亭志ん生を呼んだのはいいけれど、師匠が高座をつとめているのに、みんなワイワイガヤガヤ、落語を聴いている人なんかいなかった。
そのときに、志ん生は倒れて、三途の川の手前まで行って「もう少し、しゃべってろ」と言われて戻ってきたのだ。
だから巨人は志ん生の仇でもあるのだ。
僕が末広亭で聴いた志ん生は、その生還後の高座で、いったん幕がおりて若い連中に抱えられて高座に坐ったのちに幕が開いた。
もうあの歯切れのよい喋りはなくなったが、みんな志ん生の生きて話すのを見て満足したのだ。
野球は、さいごに巨人に逆転されてしまった。
御嶽海も負けるし、これで志ん生を聴かなかったら、無しにしたいような一日だった。
亭主が今日は帰らないと云うんで、若い男といっぱいやっていたら、とつぜん亭主がへべれけになって帰って来る。
やきもち焼の亭主に男と二人でいたことを知られたら大変だから、男を押し入れに隠しておいて亭主を寝かそうと思ったが、亭主は押し入れの前にでんと座って動かない。
カミさん、困って兄さんのところに助けを求めにやって来る。
兄さんは、大きな風呂敷を持って、その家に行き、素知らぬ顔で亭主の愚痴を聞いてやる。
「用事が済んだから早く帰ったら、人の顔を見るなり、親の仇に出っくわしたような顔をして、もうかえったのかあい!とこうだ。そして、あんまり早いから、もうお寝よって、お前の顔は人を寝かせるような顔じゃねえ、寝てるものが飛び起きて駈けだすような顔だ、、、油虫の背中みてえな色をしやがって、寝ようよとは、なにごとだ、、なぜそう亭主をおびやかすんだ」とご機嫌が悪いが、ふと、「それで、おめえは?」と兄貴の用件を尋ねる。
「俺かい?俺やあなんでもねえんだ」と気乗りのしないようすで、「よそで少しごたごたがあって、、口利きでな」というと「どんなごたごただ?え?」と亭主が乗って来る。
「泊って帰るといった亭主が早く帰ったために、いっしょにいた若い衆を押し入れに隠したんだが、酔っぱらった亭主が押し入れの前に座って動かねえんだ」「ううん、始末に悪い野郎だなあ、それでどうやって片っつけた?」「(そっけなく)いいよ、どうしても」「おいおい、聞かしてくれやい」、てんで、こっからは仕方噺で、風呂敷を取りだして、「こうやって、その野郎の頭にさあ、すっぽりかぶせちゃって、めえるか?めえねえだろう、そうやって、こっちい少し押して,そこの押し入れをな、すういとあけたんだ、なあ?ひょいとみるとその野郎いやがんのよ」、そこで「早くでろ、忘れもんはねえな」どうやらねえようだ、下駄あ間違えるんじゃねえぞ、そしたらな下駄も間違えねえように行っちゃったからな、その風呂敷を取ったって、、話だ。
酔っぱらった亭主、「そうかあ、あ、そいつはうまく逃がしやがったなあ」
とまあ、そんな噺、兄貴と女房、兄貴とカミさんの間のギャグの連続と後半の亭主と兄貴の会話と仕方噺が見所だ。
この噺、僕はテープをいくつか持っているから、しょっちゅう聴いている。
なんど聴いても飽きずに、一人でクスクス笑っている。
口げんかで、出てけと言われた女房が「ああ、出ていくよ、出て行くから返せ、私(しと)のシャツ着てやがって」「その代わりてめえ、俺の猿股はいてやがるじゃねえか」とか、女房をこともあろうに「シャツの四つ目のボタンみてえなもん、あってもなくてもいい」とか、「百万年前のトカゲみてえな面(つら)ァしやがって」とか、間男していることを薄々勘づいている兄貴が、「女は三階に家なし」とか「貞女びょうぶにまみえず」とか「じかに冠を被らず」「おでんに靴を履かず」などの頓珍漢な教えを垂れたりもする。
今の日本じゃ、セクハラ・パワハラの誹りもあるだろうが、可笑しいものは可笑しいのだ、書いたものではあの間の面白さは半分も伝わらないけれど。
テープでは想像してみるしかなかった後半の仕方噺のセリフと手さばき・目配り、見事なもんだった。
これで、テープで聴く時の想像の翼がより大きく羽ばたくだろう。
番組の司会を文菊がしていたが、志ん生の芸を前にすると、いかにも不自然さが際立ってしまうのだった。
落語を見たあとは本を読むつもりだったが、ついヤクルト対巨人の中継を見てしまった。
ヤクルトは敗け続けて、もうB級確定なのに、急に調子をあげて今頃になってDeNAに勝ったりする。
クライマックスシリーズに巨人を出場させないためには、DeNAが勝ち残らなければならないのだ。
ヤクルトの勝利よりも巨人の敗北を願うなんざ、スポーツを愛する資格がないようなものだが、あの監督の笑い顔を見るなら野球をみたくないのだ。
むかし、巨人がホテルかなんかでやった納会に古今亭志ん生を呼んだのはいいけれど、師匠が高座をつとめているのに、みんなワイワイガヤガヤ、落語を聴いている人なんかいなかった。
そのときに、志ん生は倒れて、三途の川の手前まで行って「もう少し、しゃべってろ」と言われて戻ってきたのだ。
だから巨人は志ん生の仇でもあるのだ。
僕が末広亭で聴いた志ん生は、その生還後の高座で、いったん幕がおりて若い連中に抱えられて高座に坐ったのちに幕が開いた。
もうあの歯切れのよい喋りはなくなったが、みんな志ん生の生きて話すのを見て満足したのだ。
野球は、さいごに巨人に逆転されてしまった。
御嶽海も負けるし、これで志ん生を聴かなかったら、無しにしたいような一日だった。
Commented
by
umi_bari at 2023-09-18 22:03
志ん生さん番組見ましたよ。
初めてでした。
志ん朝さんは知っています。
まだまだ暑いですね、自然は秋なんですね。
いっぱいありがとうございます。
お見事バグースです。
巨人、原監督が辞任してGMなんかでも残らなければ
応援します。
(個人選手は応援していますがね。)
阪神の岡田監督は選手を信頼しています。
でも、原監督は、選手もコーチも全く信頼していないと
感じます、そして、使い捨てです。
初めてでした。
志ん朝さんは知っています。
まだまだ暑いですね、自然は秋なんですね。
いっぱいありがとうございます。
お見事バグースです。
巨人、原監督が辞任してGMなんかでも残らなければ
応援します。
(個人選手は応援していますがね。)
阪神の岡田監督は選手を信頼しています。
でも、原監督は、選手もコーチも全く信頼していないと
感じます、そして、使い捨てです。
1
Commented
by
saheizi-inokori at 2023-09-19 08:01
Commented
by
kogotokoubei at 2023-09-19 18:33
昭和36年12月15日、巨人優勝祝賀会、高輪プリンスホテルで、川上の到着が遅れ、志ん生が高座に上がる時、食事が始まり、誰も聴いちゃいないので、頭に血がカーッと!
巨人が嫌いになった理由の一つです。
ご長女美津子さんが、お台場寄席で語っている音源を、今、聞いています。
巨人が嫌いになった理由の一つです。
ご長女美津子さんが、お台場寄席で語っている音源を、今、聞いています。
Commented
by
saheizi-inokori at 2023-09-19 19:02
by saheizi-inokori
| 2023-09-18 12:30
| 落語・寄席
|
Trackback
|
Comments(4)