感動とタイ料理
2023年 09月 04日
木山捷平「酔いざめ日記」を読了。
新庄嘉章にやられた指の痛みがどんどんひどくなり、こんどは背中や胃の痛みが徐々に強くなり便秘などの症状もでてくる。
いくつかの病院をめぐって東京医科歯科で、食道の腫瘍がみつかる。
「癌ではありません」、はっきりと医師がいうのは告知が一般的ではなかった時代だ。
食道は東京女子医大の中山教授が一番だからと、そちらを推薦されて転院。
入院、そこからの人生のフィナーレの幕が開く。
主人公をとりまく、妻、息子夫妻、孫、妹弟、医師、看護師、見舞客、仕事関係の来客がおりなす道行は、僕にも多くの場面が実体験として心に迫って来る。
便秘になって苦しむのを、尻の穴に指を突っ込んで掻き出すのは僕もなんどもやった。
主人公だけに知らされない事実についての疑惑、妻や医師の不用意に発する言葉に敏感になる。
亡妻も同じような不安と猜疑心に苛まれていたのだ。
作家らしく、亡くなる寸前まで明瞭な観察眼で細々と毎日の症状や検査の内容、治療経過、通信、来客、もらったもの、見舞いの花のことなどを逐一記している。
同室の患者たちの身の上や、看護師たちの生活に興味をもち続ける。
死の四日前から妻が代わって書く。
酸素吸入をがんばってね、と看護婦に言われ、無言で頷き、妻に「もう死ぬかも知れん、えらいえらい(苦しい)」「もう原稿は書けないよ」。
二日前43年8月22日、
木山捷平の遺作は、ひとりの作家の苦難の時代から花を咲かせたその盛りの死までを淡々と記し、それが全体としてリアルな迫力に満ちていて、読後しばらく続く強い感動を覚えた。
夜はカミさんのおごりで都立大学の東南アジア料理「マラッカバー」に行く。
テーブルふたつにカウンター二人の小さな店。
「生春巻き」
カミさんは、なんとかいう向こうの生ビールと紹興酒のロック、僕はタイの焼酎のロック。
「茹でワンタンの香味ソース」
「イカのサンバルソース炒め」
「野菜とタイハーブの辛口焼きそば」
野菜のインゲン、シメジ、ベビーコーン、小松菜?、玉ねぎまでは分かったが、クダチャイ(ガチャオ)とガパオ(バジル)が入っているそうだ。
「くだちやい」ですね、と手を出したら、美人のママに受けて笑いながら「そうですね、そう覚えるといいですね」
「マレーシヤ式チャーシュー」
どこがマレーシアなのか、訊くのを忘れた、あっさりしたチャーシューだ。
もう一皿「タイ式チャーハン」も頑張る。
最後の皿が一番うまく感じるというのは、ぜんぶうまかったということかもしれない。
どの料理もあっさりして、しかもエスニックの香りが漂ってうまい。
日本式に満足して、途中の酒屋で焼酎を仕入れて帰宅した。
新庄嘉章にやられた指の痛みがどんどんひどくなり、こんどは背中や胃の痛みが徐々に強くなり便秘などの症状もでてくる。
ガンであることを知っている僕は早く精密検査をしないかとハラハラする。
いくつかの病院をめぐって東京医科歯科で、食道の腫瘍がみつかる。
「癌ではありません」、はっきりと医師がいうのは告知が一般的ではなかった時代だ。
食道は東京女子医大の中山教授が一番だからと、そちらを推薦されて転院。
入院、そこからの人生のフィナーレの幕が開く。
主人公をとりまく、妻、息子夫妻、孫、妹弟、医師、看護師、見舞客、仕事関係の来客がおりなす道行は、僕にも多くの場面が実体験として心に迫って来る。
便秘になって苦しむのを、尻の穴に指を突っ込んで掻き出すのは僕もなんどもやった。
主人公だけに知らされない事実についての疑惑、妻や医師の不用意に発する言葉に敏感になる。
亡妻も同じような不安と猜疑心に苛まれていたのだ。
作家らしく、亡くなる寸前まで明瞭な観察眼で細々と毎日の症状や検査の内容、治療経過、通信、来客、もらったもの、見舞いの花のことなどを逐一記している。
同室の患者たちの身の上や、看護師たちの生活に興味をもち続ける。
死の四日前から妻が代わって書く。
酸素吸入をがんばってね、と看護婦に言われ、無言で頷き、妻に「もう死ぬかも知れん、えらいえらい(苦しい)」「もう原稿は書けないよ」。
二日前43年8月22日、
「昨日来た人は誰か」かすれ声。
「新潮社の田辺さんと出版部の山岸さん、もうすぐ本が出来るそうですよ」
鉛筆をくれ。「キソーメーボ」と記す。
「それはよく分っていますから、安心してお休みなさい」うなづく。薄眼をあけて見る。(略)
何か文字を書くようだが線が曲がりよく分らぬのを怒った表情する。
「今日から筆談となる」とやっと書いた。精一杯の努力。
枕許の紙片に「ネプローゼ」と記す。
木山捷平の遺作は、ひとりの作家の苦難の時代から花を咲かせたその盛りの死までを淡々と記し、それが全体としてリアルな迫力に満ちていて、読後しばらく続く強い感動を覚えた。
夜はカミさんのおごりで都立大学の東南アジア料理「マラッカバー」に行く。
テーブルふたつにカウンター二人の小さな店。
カミさんは、なんとかいう向こうの生ビールと紹興酒のロック、僕はタイの焼酎のロック。
野菜のインゲン、シメジ、ベビーコーン、小松菜?、玉ねぎまでは分かったが、クダチャイ(ガチャオ)とガパオ(バジル)が入っているそうだ。
「くだちやい」ですね、と手を出したら、美人のママに受けて笑いながら「そうですね、そう覚えるといいですね」
どこがマレーシアなのか、訊くのを忘れた、あっさりしたチャーシューだ。
最後の皿が一番うまく感じるというのは、ぜんぶうまかったということかもしれない。
どの料理もあっさりして、しかもエスニックの香りが漂ってうまい。
日本式に満足して、途中の酒屋で焼酎を仕入れて帰宅した。
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tad64 at 2023-09-04 12:45
どれもおいしそうですね~! タイ料理が好きなのでこの様なメニューには目が吸い付けられちゃいますよ!
そう言えばこの処タイ料理食べてないな~! 近くに美味しいお店があるんですけどね~。。。
そう言えばこの処タイ料理食べてないな~! 近くに美味しいお店があるんですけどね~。。。
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saheizi-inokori at 2023-09-04 13:11
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hanarenge2 at 2023-09-04 18:31
美味しそう きっと舌が落ちた?ことでしょう^^
昔は告知は一般的ではなかったですね
人様それぞれですが だから軽々には申せませんが・・・・
知らせないのは私などは残酷に思います
患者さんはとても敏感
そして若造の医師やナースよりもずっと人生経験を積んでいる場合が多いので
病室に入る時 患者さんの視線が怖かったことを思い出します
嘘つくな!!!って言われてるようで・・・・
まだまだ未熟なナースでした
昔は告知は一般的ではなかったですね
人様それぞれですが だから軽々には申せませんが・・・・
知らせないのは私などは残酷に思います
患者さんはとても敏感
そして若造の医師やナースよりもずっと人生経験を積んでいる場合が多いので
病室に入る時 患者さんの視線が怖かったことを思い出します
嘘つくな!!!って言われてるようで・・・・
まだまだ未熟なナースでした
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saheizi-inokori at 2023-09-04 18:41
> hanarenge2さん、叔母はガンと知らされたら、それなら寝ていてもしようがないと起きて庭仕事やら教会の説教などを始めました。
ガンと知らせても余命までは言わないことも多いのでしようね。
ことしベースメーカーの取り換えで入院して、今さらながら看護師さんの有り難さを感じました。笑顔ひとつで明るい気持ちになるのが自覚できました。
ガンと知らせても余命までは言わないことも多いのでしようね。
ことしベースメーカーの取り換えで入院して、今さらながら看護師さんの有り難さを感じました。笑顔ひとつで明るい気持ちになるのが自覚できました。
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福
at 2023-09-05 06:47
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saheizi-inokori at 2023-09-05 09:50
by saheizi-inokori
| 2023-09-04 12:31
| 気になる店・ひと皿
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