手巻きで賑やかに

きのうは、娘の誕生日とタイキの帰国祝いで、一家が我が家に来てくれた。
食材仕入れと料理と片付けは一切こちらにお任せで、と、いつもながら嬉しいことを言ってくれるが、カミさんは、前日から「大野」で三崎から仕入れたマグロの柵やノルウエイのサーモンやワインなどを買いに行ったり、孫たちが「Ｓさんのサラダは、どうしてこんなにうまいのだろう」というのに、こんどはどんなサラダで応じようかと、思案投げ首、テーブルセットも前夜のうちに終える。
当日は早めにＮＡＯＫＩのケーキを買い、僕は桜新町まで歩いて、生ハムとチーズの盛り合わせを買ってくる。

驚いたのは、はあちゃんが前日にサッカーで足首を骨折して、ギブスと松葉杖姿だったこと。
今シンガポールにいる次男も高校時代にサッカーで足を複雑骨折したし、亡妻は家の中で足の指を骨折した。
骨折り家族だね。

メインは、我が一家のお祝い定番の手巻き寿司。
尾頭付きまるまる一尾のイサキ、アジ、炙りタコ、イカ、活きているホッキ、ブリ、マグロ、サーモン、どれもうまいが、孫たちが「サーモンとマグロが、ちょっと違うなあ」と褒めてくれてカミさんは嬉しい。
二種類の野菜サラダも好評。

４時間かけて低温調理をしたローストビーフが、「見た目よりはるかにうまい」とこれは全員。
トリュフ塩とやはり手製のソースが利く。

アボガドの叩いた（カミさん）のは、いろんなものと合わせて、別の味わいを楽しむ。
これもパパ特製の塩からは僕の、焼酎「伊佐美」ロック（レモン）のつまみ。

女性は白ワイン。
三合炊いた飯がきれいになくなる。
サザエは上手に肝のしっぽまですぐ取れるようにして出してくれる。

とちゅうで、台湾留学中のサエに電話すると、今これから韓国に行くので歩いているところだという。
シンガポールの次男夫妻や長男一家にもラインで写真を送ると、次男たちは近所の韓国街で晩飯中という写真を送って来る。
なにやら、国際的な一家にみえるじゃないか。

ひとしきり、寿司を食ったところで、パパが念入りに炊き上げた煮アナゴの登場。
ふっくらと、やさしい甘みのアナゴは絶品だ。

タイキにドイツ留学中にどこどこ行ったの？と訊くと、フランス以外の何だかとんでもなくいろんな国を歩いたようだ。
ドイツ内は？「全部！」、羨ましいことだ。
一年間の留学で人生観は変わったか？「変わった、どこがと言われると一口には言えないけれど」だって。
独り暮らしでママの有難味が解ったか？「いや、一人でも十分にやっていけることがわかった」と小憎らしい様な、僕が上京した頃の感覚と同じだ。
母への感謝を失くしたということではない。

頃合いをみて、大きな蛤と鱧の汁、これも料亭の味だ。
「あ、イチジクを買ってあった」と立ちあがるカミさん、残り少ない生ハムに巻いて食う。

最後はＮＡＯＫＩのケーキを好きなのをとって（ママが最初）食い、美味しい！食べてみてと回してシェアする。
腹いっぱい！といいながら、せんじつ沖縄から送られてきたアイスクリームはどうかと訊くと「ブルーシール？」知ってるそうで、それほど感動もないようだが、ちゃんと（うまそうに）食う二人だ。

殺した殺された、捨てた棄てられた、恐ろしい信じられないような家族や無料の食料配布に長い行列を作る親子などの悲しい話を見聞きするにつけ、貧しかった子供の頃には想像もつかないような一晩を過ごせるようになったことを、有難いと思うにつけ亡き人たちへの感謝の気持でいっぱいになった。