風の又三郎

夕方の散歩は、歩いていれば汗をかくけれど、風は涼しくていい気持ちになり、今朝は窓から入る風に秋を感じながらルーテイン、先週から聞くことにしたナック5、fm埼玉が「カミサトの広報誌の表紙の写真がどーたらこーたら」などのクイズで盛り上がっているのが可笑しくて笑った。
アメリカの片田舎のローカルラジオでも同じようなことをして笑っているのだろうな、と思うとなんだか楽しいじゃないか。

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(息子が墓参りに行って送ってくれた。皮ごと石和を忍びながら食べている)

フクイチの汚水を海洋排出するときに、東電の社長が「30年という長い間、緊張感をもって安全に」というので、思わず噴き出した。
あの地震からまだ20年しか経っていないのに原発回帰、完膚なき敗戦から80年も経たないのに、軍事大国になって武器輸出を強力に推し進めようという日本の権力者たちが、汚染水の排水のことなんか、今年のうちに忘れているだろう。

汚染水の海洋排出以外の処理方法についての、幸兵衛さんのブログです。


大泉黒石は、俳優大泉 滉(あきら)の父親だと、stefanlilyさんが教えて下さった。
さっそく調べてみたら、「風の又三郎」で少年の役をしたのがデビューだという。
「ノンちゃん雲に乗る」にも出ている。
これらももういちどみたい映画だ。



トンデモハップン、というのは彼のセリフらしい。
僕もよく使ったなあ、「トンデモハップン、歩いてジュップン」転んで何分だったか。

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「俺の自叙伝」のなかの「青年時代」と「労働者時代」を読んだ。
長崎の中学で友人になった圭吉と二人で、京都の高校を受ける。
試験前夜に圭吉の強がりからビールを五本づつ飲んで、圭吉は一浪したが、ともに貧乏暮らしをする。
南禅寺に下宿して「メリケン粉に湯をぶっかけて、弁当箱の中で捏ねて、団子を拵えて」飢えを凌いだが、そのメリケン粉が尽きようとするころ、圭吉が英語教師の口を捜してくる。
三日間教えて今日は月謝がもらえると思ったら、生徒はこなかった。
活動の弁士のアルバイトをして稼いでいる圭吉が「レスミゼラブレス」(「圭吉は無学だからこう読む」)の広告の絵を描くバイトを持って来て、自分じゃうまく描いたつもりだが、金にはならなかった。

圭吉がつれて来たお三輪さんが、なんと長崎時代の幼馴染だと判明、二人は結婚する。
貧乏な、青い目に灰色の髪の男との結婚を嫌がる親類縁者をものともせずに、こぎつけた結婚式で、お三輪さんが、俺と向き合ってきちんと坐った時「俺は乞食が革の鞄を盗んでいるような戦慄を覚え」、猛烈に反対した親類の人たちが祝辞を述べるのを聞いているうちに、「俺は赤くなって、うろうろしていたが、そのうちに俺の恐怖は頂点に達して、途中で戸外に飛び出した」。
お三輪さんは驚いて、俺を探し回り、親類共が、こんな祝言は生まれてはじめてだといったそうだ。

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祝言を済ませても、結婚反対党が離婚策を巡らすし、金もないので、二人で東京に駆け落ちする。
祝言の前じゃなくて、あとにする新型の駆け落ちだ。

住んでいた三輪の伯母の家を俺一人が先に逃げた。
お三輪が伯母の地味な着物を盗み出して、袖を縫い詰めてくれた、へらへらの銘仙を着て、汽車賃は学校の制服を売って作り、新橋駅でお三輪を待った。
大正六年の一月一日であった。元日の夜明け頃、ぞろぞろ吐き出される客が、改札口から雪崩れて出てくる中に、小さい、ぽつんとしたお三輪の姿を認めたとき、溺死しかけている人間が、救助船の影を発見したように心強く感じた。
そして、京橋に住み、石川島鉄工所の工場の書記になり、職工たちの隠れてする博奕をみたりしていたが、いつもやる向こう見ずな喧嘩でクビになる。
そのあとシベリアに、ある官吏のお供をして行くらしいが、その話の詳細はないままに、「労働者時代」に突入する。

いい道連れが出来たと思って、少納言(牛殺し)が毎朝印伝屋に俺を誘いに来る。屠牛場へ行くには吉原土手を抜けて、箕輪の終点へ出て、そこから田圃づたいに五、六丁ばかり北海道の方へ向けて歩いて行くと、右に黒塗りの門があるから直ぐ解る。
三輪子のたった一人の東京の親戚に就職の相談をしたら、浅草で豚皮の草履の裏に仕立てる工場をやっている板亀がやってきて、工場の留守をしながら仕事を手伝うことになる。
隅田川に漂着した焼木杭で作った堀立小屋、剝いだばかりの生皮が小山のように積み上げてある土間で、豚皮を甕の液体に浸す仕事をしていたが、またもや狡い板亀と喧嘩をして、隣にすむ三左衛門の世話で牛殺しになる。

このあたりは、古典落語を読むようでもあり、映画「麻雀放浪記」を見るようでもあり、愉快痛快かつペーソス溢れる物語だ。
そういえば、漱石の「ぼっちゃん」にもどことなく通うものがある。
赤んぼがいっしょで、シラミがたかって大慌てするところがある。
この赤んぼが風の又三郎になったのか。
どどどどーど、赤いリンゴを吹き飛ばせ、酸っぱいリンゴも吹き飛ばせ、ってか。

Commented by stefanlily at 2023-08-28 06:04
おはようございます
鰐淵晴子と競演したんですか。
「ノンちゃん…」は未見ですが、国際的なキャスティングだったんですね。鰐淵さんは、何の作品か忘れたけど、横溝正史原作ドラマにも出てらしたかな。
お三輪さんもなかなか豪傑な女性ですね。革の鞄に救助船という形容もロシア文学の血肉なんでしょうか。
関係ないけど、ドン・ガバチョの声優やってた方、早世した俳優の…名前忘れたけど、出鱈目なフランス語がサマになってた藤村有弘だっけ?、何故か思い出しました。
タモリの「4カ国語マージャン」は藤村さんの真似なんだとか。久生十蘭の小説の主人公みたいな、洒脱で個性的な方でしたね。
さっき大谷のニュース見たけど、痛いのに無理して打席に立ってるのが…
メジャー評論家の日本人の誰かが「(移籍で)必要とするチームはあるでしょう」とややネガなコメントしてました。手の平返しが酷いな…
Commented by saheizi-inokori at 2023-08-28 10:28
> stefanlilyさん、昔のものを読むと次々に懐かしい人の名前や、その芸などを思いだしますね。
むかしをもう一度生き直している、といえばオーバーですが、楽しいです。
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by saheizi-inokori | 2023-08-27 13:28 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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