永遠と一日
2023年 08月 26日
「永遠と一日」を見たのは20世紀の最後の頃だった。
難解な映画で、もう筋書きも忘れたが、美しい映像とこの音楽に惹きつけられた。
悲しくて、それでいて癒しを得られる映画だったような気がする。
なんで急にこの映画かと言うと、きのう古いCDの中からこのサウンドトラックが出て来たからだ。
もう一度見たい映画の一つはこれだな。
それと「僕の叔父さん」。
もう新しい映画を見ようとは思わない。
むかし見た映画を思いだしていればそれでいい。
きのう読み始めたのは、大泉黒石「俺の自叙伝」
アレクサンドル・ワホウィッチは、俺の親爺だ。親爺は露西亜人だが、俺は国際的の居候だ。あっちへ行ったりこっちへ来たりしている。泥棒や人殺しこそしないが、大抵のことはやってきたんだから、大抵のことは知っているつもりだ。ことに露西亜人で俺くらい日本語のうまい奴は確かにいまい。これほど図迂々々しく自慢が出来なくちゃ、愚にもつかぬ身の上話が臆面もなく出来るものじゃない。これが書き出し。
長崎でロシア文学を熱心に研究していた母と結婚した父は、当時上海の領事官にいたのが、長崎にきて母と結婚、母は「俺」を産んですぐ死んでしまったので、祖母に育てられた。
父がそれきり長崎に来ないので、小学校を三年で打ち切って、そのころ父が領事をしていた漢口に行ったが、すぐに父が死んだので、モスクワの叔母ラリーザに世話になる。
清が日本名だけど、キヨスキーというロシア名で通す。
ラリーザが、すぐに呼んでやると言ってパリに行ってそのままなので、馬面で見栄っ張りの義理の伯母ターニャのところに住む。
伯父とヤスヤナ・ポリヤナ村の先祖の農家を訪ねたときに、途中で一人の見すぼらしい老人に出遭う。
これがレオフ・トルストイで、彼の家にも行くのだ。
乗り合い馬車の車輪が動かなくなったので歩くことにする。
爺さんの大きな鼻の先が赤蕪のように赤くなって、灰色の口髭にぶら下った鼻汁と髭とが、申し合わせて白く凍っている。爺さんとはトルストイのことだ。
口をモグモグ動かすと崩れて落ちそうだが、爺さんは平気で歩いている。
先頭にこの爺さんが瘦せ犬を引っ張って行く、その後ろからアキモフ神父と伯父が行く。次に俺とイエドロフが神妙にくっついて、ぼそぼそ歩いた。
トルストイと伯父(藪で強欲な医師)で、大きなツララに打たれて死にそうになった男を診にいくところは、ロシア小説を読むようだ。
ターニャの愛猫「男爵夫人」を間違って殺してしまったことで、深い悔恨とともに修道女の学校に預けられて、下働きのユダヤ女性コロドナに惚れられるのが12歳。
いろいろあって、パリで学生生活とドロップアウト、印刷工をしているときに文学に目覚め、文章で金を稼ぐことを覚える。
ロシアにわたると、おりしもロシア革命、1917年3月12日、ペトログラードの「赤い日曜日」の夜、キヨスキーは同棲していたコロドナと市街戦にまきこ込まれて、コロドナが撃たれて死ぬ。
キヨスキーは日本に帰って京都の高校に入り、東京で嫁を貰う。
と、そこまでが「少年時代」。
きょうは「青年時代」から読むのだ、楽しみだ。
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stefanlily at 2023-08-26 18:16
週刊文春の鹿島茂の書評にありました。俳優の大泉混(漢字が出てこない)の父だと。
面白そうと思ってました。
「皇帝のいない8月」に岡田嘉子が出ていたけど、彼女もロシアで収監されてたんでしたっけ。トルストイも処刑寸前までいってた?
トミージョン手術を受けずに温存療法(大谷の件)なのは、奥川投手もそうなのかな…?
面白そうと思ってました。
「皇帝のいない8月」に岡田嘉子が出ていたけど、彼女もロシアで収監されてたんでしたっけ。トルストイも処刑寸前までいってた?
トミージョン手術を受けずに温存療法(大谷の件)なのは、奥川投手もそうなのかな…?
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Solar18 at 2023-08-26 19:50
この映画自体を見たことはないのですが、主役のブルーノ・ガンツが大好きです。上の音楽を今、聴きながら書いています。主題のメロディーが素晴らしいです。映画のDVDがないか、探してみます。
「俺は誰だ」もとても面白そうですね。ぜひ読んでみたいので、電子書籍がないか探してみます。ドイツ語版が出ればいいのに。
良い作品を紹介してくださって、感謝、感謝。
「俺は誰だ」もとても面白そうですね。ぜひ読んでみたいので、電子書籍がないか探してみます。ドイツ語版が出ればいいのに。
良い作品を紹介してくださって、感謝、感謝。
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寿限無
at 2023-08-27 06:25
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「旅芸人の記録」のテオ・アンゲロプロスですね。
いいですね。
いいですね。
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doremi730 at 2023-08-27 09:01
続きを楽しみにしています、、
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tanatali3 at 2023-08-27 10:04
「永遠と一日」・「僕の叔父さん」、図書館で探してみます。心に残る映画、永遠のテーマですね。
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saheizi-inokori at 2023-08-27 10:07
> stefanlilyさん、そうでしたか、大泉 滉のね。
いま調べたら「風の又三郎」の少年役でデビューしたとか、「とんでもはっぷん」のせりふで人気があったとか、覚えていますよ。
奥川もなかなか出てきませんね。
焦るだろうな。
いま調べたら「風の又三郎」の少年役でデビューしたとか、「とんでもはっぷん」のせりふで人気があったとか、覚えていますよ。
奥川もなかなか出てきませんね。
焦るだろうな。
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saheizi-inokori at 2023-08-27 10:11
> Solar18さん、彼の評伝を四方田犬彦が『大泉黒石 わが故郷は世界文学』として上梓、それも図書館に予約してあります。
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saheizi-inokori at 2023-08-27 10:13
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saheizi-inokori at 2023-08-27 10:13
> doremi730さん、筋もともかく、文体や彼の生き方が面白いです。
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saheizi-inokori at 2023-08-27 13:36
by saheizi-inokori
| 2023-08-26 13:05
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(10)