江戸っ子は足が早うございます

スマホは無事直った。
シャットダウンするつもりで、知らない間に視覚障碍者向け補助の設定をしてしまったらしい。
ショップの若者、余裕綽々で直してくれて、充電がうまくいかないのも、耳の穴をほじくるようにして元通りにしてくれた。
嬉しさのあまり、カミさんに言われていた「60歳以上は国内電話かけ放題」のことを聞くのを忘れて帰り、家から電話で「店で登録すればできます」というので、今日も散歩がてら行ってくる。
かけ放題のCMは、あの大嫌いなおばあさんがやっているので、内容など知ろうと思わなかったが、こんなに大事なことを教えてくれることもあるのだ。

江戸っ子は足が早うございます_e0016828_13482422.jpg

だいたい会ったこともなく、ましてやつきあったこともない人を好きだ嫌いだというのもおかしな不遜な話だが、向こうは見ている側に好印象を持ってもらおうと思って出る人を選んでいるのだ。

日曜日朝のFMラジオに、そういう「感じのよいお姉さん」が、自己肯定感横溢で、ふんわかと、「自分は子供の頃から雲が好きだ」と夢みるように語っていた。
見ず知らずの女の「私って素敵でしょ」に相槌をうって、朝の爽快感を汚されたくなかったので、チャンネルを変えると、そっちも「賢い女」魅せまショーだ。
平日は別所哲也とかカビラなどが、ちょっとうるさいけれど歯切れのよい語りだが、休日はこういうのが多い。
FMNHKは現代音楽で、どうもね。

プリセットしてあったFM埼玉が、男女のふざけたコンビで、埼玉県の知らない町の、HPのマークは何かなどというクイズを出し合って盛り上がっているのが、かえって面白かった。
その番組に続いて出て来た、どうもアウトドアの猛者みたいな人の、渋い落ちついた声や語り口が知性を感じさせてとてもよかった。
彼曰く、「最近目立っことは蚊が少なくなった」、「子どもには木登りを経験させたい、高いところからの視覚を覚えさせたい」。

まあ、くだらないことを、自分自身がいつも「自己満足」の「阿呆ブログ」を書いているくせにね。

江戸っ子は足が早うございます_e0016828_13510434.jpg
(皮を剥いて食う何かかと思ったらエッグタルトだった)

大佛次郎「天皇の世紀10」から。

静寛院宮(皇女和子)は、あんなに江戸に行くことを嫌がったのに、今は徳川家の存続を「私自身命にかえ願い上げ候」という手紙を、東海道鎮撫総督をしている橋本実梁に届ける使者に託す。

その使者、土御門藤子の一行とは、女中四人、士分九人、刀指十五人、中間四人、下部百二十五人、合計百五十七人というから、なんとまあ、だ。

江戸っ子は足が早うございます_e0016828_14373088.jpg
(桜新町)

大佛は、山岡鉄舟の西郷との面接が、西郷の振り上げた拳をおろすキッカケになったと見ている。

新徴組の規則を破った乱暴者たちの監視をしていた男を慶喜に推薦したのは高橋泥舟だ。
慶喜直々に大総督に恭順の意を伝えることを頼まれて意気に感じた山岡は、勝海舟に会いに行く。
不逞のテロリストかと警戒する勝の気持ちを変えたのは、山岡の「事ここに至って何を逡巡するのですか!」という大喝一声、私利私欲を離れた至情だ。
かえって既存の秩序に囚われる大名や僧侶になし得ないことをやってのけるのじゃないか。
手許に預かっていた薩摩の益満休之助を付けてやり、自らも西郷にあてて手紙をしたためる。

敵陣に乗りこんだ山岡は西郷と面談し、西郷の気持ちを動かす。
他の人が云えば単純なことでも、山岡が言うと力をもって迫って来る。
重い腰を上げて、大総督にあって、幕府に対する五か条の条件を持って来て示す。
山岡が、慶喜を備前に移すこと、という条件に、これだけは拙者が受け入れられないと拒絶、そんなことをしたら、徳川家に恩顧の家士たちが黙っておれないから、戦端が開かれ、多くの人の命が失われる、と。
西郷が「朝命である」と言ったのは西郷の敗北だと大佛。
山岡は「西郷が私の立場だったら、黙って主君島津公を差し出すか」と激論、西郷は納得、徳川慶喜殿のことは、吉之助の責任で引き受けると約し、二人は酒を酌み交わす。

江戸っ子は足が早うございます_e0016828_14410768.jpg

海舟と西郷の会談のときは、山岡は西郷の身を守るのだ。
会談の翌日、大総督府に急用があると呼びつけられた山岡の前に、村田新八が現れて言うのには、
過日、官軍の陣営のなかをみだりに通行する者がいると通報があり、中村半次郎(人斬り半次郎)とともに、斬り殺そうと追いかけたけれど、足が速くて西郷との面会になってしまった。あまりの残念さに呼び出して、是を伝えただけで、別に用はない。
山岡答えて曰く、
江戸っ子は足が早う御座いますから。
山岡本人の思い出話、きっと西郷から山岡の評判を聞いて、そんなすごい奴なら一度会ってみたいと思ったのだろう。

今の日本、世界に山岡のような男が何人かいて、命懸けで話し合って戦争を回避してくれたら、と思う。

Commented by stefanlily at 2023-08-21 06:15
おはようございます
匿名のブログやファンサイトで特定の有名人を叩くのはね…有名人(裏アカウントを使用してる人も居ますが)は実名で発信してますから。私を含めて「所詮、有名人への嫉妬」なんでしょう。
映像の影響は大きいので、そこで描かれてることが歴史上の人物が実際にそうだったと思い込んでる人多いから。見てきたような嘘を上手く書いているのにね。
新選組や坂本龍馬のファンが多いのも、司馬遼太郎の作品以降なんですよね?
私は彼の作品にもファン層にも興味無いので。
司馬遼太郎しか読まない、時代小説しか読まない、そこで完結してる人が多いから。偏見でしょうけどね。
Commented by saheizi-inokori at 2023-08-21 09:39
> stefanlilyさん、新選組は子供の頃からチャンバラの主人公、鞍馬天狗とともにね。だから大佛次郎が貢献者かも。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2023-08-20 14:45 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31