道を見失う
2023年 07月 28日
やらないつもりだった洗濯、急きょカミさんのシーツなどを洗って干す。
ベランダにいるわずかな時間で、むき出しの腕が焦げそうだ。
きのう石和にいる親戚から夕方の驟雨の動画が送られてきた。
羨ましいったらない。
涼しくなる、草花が生き返る、それだけでなく、夕立には心の若返り効果があるのだ。
「Like Alexander the Great」、アレクサンダー大王のように降ってくる夕立が好きだ、と研究社のなんとかいう雑誌の懸賞英作文に応募して佳作になったのは中学の時か。
今じゃ、アレクサンダーの綴りすらスマホに訊かなきゃ書けなくなったけど。
木内昇「万波を翔ける」を読了、おもしろかった。
薩長の明治史観で描かれた幕末史は、幕府は古臭くて無能な存在として描かれる。
だが、滅びゆく幕府内にあって必死にあるべき姿を模索追求した人たちもいた。
僕は国鉄末期、民営分割の嵐のなかで、貨物会社の生き残りのために、その条件を求めて「改革三人組」の一人である葛西敬之氏に「共産党」と罵られながら、言うべきことをいって、即座に窓際に追いやられた体験があるからなおさら、かなりの思い入れで主人公(実在した)田辺太一の言動を読みつづけた。
外交史に詳しいわけではないが、幕末、諸外国の武力をかさにきた開国交易の要求に対し、柔軟にしかも大事なことは守り抜き、植民地外交の手練れをして手強いと感じさせたことはもっと評価されていいのではないか。
事敗れて、これからの人生をどう生きるかのめども立たず呆然としている太一を「家人(徳川に仕える人)でなくても、人は、いかなる立場でも、どうとでも生きていける」と義姉が励ます。
そのことを義姉は太一を見ていて気づいたというのだ。
死んだ兄が「太一は御公儀から役目を与えられているが、御公儀のため、という軸では動いておらぬ」と言っていたとも。
僕は、自分はどうだったかと考える。
大学出のエリートして、公共企業体としての国鉄を守り、職員を守るという使命を果たそう、そんなことを考えて入社して、、、失敗は多かったし、公共企業体は民営分割化されてしまったが、関連事業も含めて職員の雇用を守ることは、少しは出来たかもしれない。
本社採用のエリートしての使命なんていうと気障なようだが、そういう気持ちを一ミリも持たず、ひたすらエリートとしての特権だけを享受しようという人も少なくなかったと思う。
僕がそういう気持ちから、本社にものを言うと、それが理解されずに僕が嫌がらせを言っているように受け止める連中が多かった。
怜悧にして狷介な水野奉行は江戸城無血開城に際しても、幕府を潰してはならないと戦うことを上申して、当然にも非戦派の勝や大久保に蹴られ憤死する。
その水野が太一に言遺した言葉。
民営分割化されてできたJR各社はどうなのだろう。
ベランダにいるわずかな時間で、むき出しの腕が焦げそうだ。
きのう石和にいる親戚から夕方の驟雨の動画が送られてきた。
羨ましいったらない。
涼しくなる、草花が生き返る、それだけでなく、夕立には心の若返り効果があるのだ。
「Like Alexander the Great」、アレクサンダー大王のように降ってくる夕立が好きだ、と研究社のなんとかいう雑誌の懸賞英作文に応募して佳作になったのは中学の時か。
今じゃ、アレクサンダーの綴りすらスマホに訊かなきゃ書けなくなったけど。
木内昇「万波を翔ける」を読了、おもしろかった。
薩長の明治史観で描かれた幕末史は、幕府は古臭くて無能な存在として描かれる。
だが、滅びゆく幕府内にあって必死にあるべき姿を模索追求した人たちもいた。
僕は国鉄末期、民営分割の嵐のなかで、貨物会社の生き残りのために、その条件を求めて「改革三人組」の一人である葛西敬之氏に「共産党」と罵られながら、言うべきことをいって、即座に窓際に追いやられた体験があるからなおさら、かなりの思い入れで主人公(実在した)田辺太一の言動を読みつづけた。
外交史に詳しいわけではないが、幕末、諸外国の武力をかさにきた開国交易の要求に対し、柔軟にしかも大事なことは守り抜き、植民地外交の手練れをして手強いと感じさせたことはもっと評価されていいのではないか。
事敗れて、これからの人生をどう生きるかのめども立たず呆然としている太一を「家人(徳川に仕える人)でなくても、人は、いかなる立場でも、どうとでも生きていける」と義姉が励ます。
そのことを義姉は太一を見ていて気づいたというのだ。
死んだ兄が「太一は御公儀から役目を与えられているが、御公儀のため、という軸では動いておらぬ」と言っていたとも。
世渡りの巧みな方はいくらでもおられましょう。保身のために、不可解なことに目を瞑り、やり過ごせれば、つつがなく働くこともできましょう。ただ太一殿はそれでは気が済まぬようだ、と旦那様は笑うておられました。己が納得せねば首を縦に降らぬゆえ、きっと人一倍苦労するであろう。ただその代わり、己の本意ではないことをせぬ人生を歩むであろう、と。それほど贅沢な人生がございましょうか。太一は、それは買い被りで、自分も意に染まぬことはした、不承不承命に従ったこともあった、というが、義姉は、それでも道を見失うことはなかっただろう、という。
なにを為すつもりであったのか、役人としてどう勤めたかったのか―――はじめは誰しも抱いていた大切な志を、太一殿は失わなかったやに思うのです。ご自身がどこを歩いているのか、何者であるのか、見失うこともなかったのではございませんかと。
僕は、自分はどうだったかと考える。
大学出のエリートして、公共企業体としての国鉄を守り、職員を守るという使命を果たそう、そんなことを考えて入社して、、、失敗は多かったし、公共企業体は民営分割化されてしまったが、関連事業も含めて職員の雇用を守ることは、少しは出来たかもしれない。
本社採用のエリートしての使命なんていうと気障なようだが、そういう気持ちを一ミリも持たず、ひたすらエリートとしての特権だけを享受しようという人も少なくなかったと思う。
僕がそういう気持ちから、本社にものを言うと、それが理解されずに僕が嫌がらせを言っているように受け止める連中が多かった。
怜悧にして狷介な水野奉行は江戸城無血開城に際しても、幕府を潰してはならないと戦うことを上申して、当然にも非戦派の勝や大久保に蹴られ憤死する。
その水野が太一に言遺した言葉。
我が国には独自に恵まれた素晴らしいものが山とある。それを守りながら、次に進まねばならぬ。その塩梅を見極めるのもまた、政なのじゃ。新しいから、異国はみな持っておるから、そんな理由だけで物事を選ばずに取り入れていては、国としての貴重な佇まいを失ってしまう。政を為す者が常に一番に考えるのは、自国の民のことでなければならぬ。むやみに異国と競い合うのではなく、国をよりよく保つためにはどのように異国と付き合えばよいのか、模索していくことこそがまことの外交じゃ。今の日本はどうなのか。
民営分割化されてできたJR各社はどうなのだろう。
道を見失い、またははなから道をもつていないエリートが多すぎやしないか?
なに?みんなそうだ?まさか!
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ikuohasegawa at 2023-07-28 16:26
「万波を翔ける」おもしろく読んでいただけて、うれしいです。
2
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saheizi-inokori at 2023-07-28 19:16
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hanarenge2 at 2023-07-28 22:09
若返りたかったけど うっとこも夕立は外れました
音ばっかりやったです
音ばっかりやったです
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saheizi-inokori at 2023-07-29 11:04
> hanarenge2さん、そりゃあないよ、雷さん、ですね。
by saheizi-inokori
| 2023-07-28 12:10
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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Comments(4)