叱ってくれる人

雨が降らない、散歩道の草花が涸れ始めた。
しかし洗濯には最高、けさは二回やる。
干すのに、いろいろ工夫する、その首筋がチリチリ焼けた。

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きのうはリビングダイニングのエアコンを二台取り替えた。
22年使って、があがあ音だけは大きくちっとも冷えず、やっと冷たい風が吹き出すと、ピコピコ合図がついて止まってしまい、そのたびにブレーカーを入れなおす。

残った金でどれだけ生きられるか、計算するようになるとは思いもしなかった今日この頃、熱地獄のような台所(ダイニングの風が行く)仕事と、があがあの晩飯に我慢できず、「えい!半年早く死ねばええんや」と清水の舞台から飛び降りた。
新しいエアコン、ついとんのかい、と聞きたくなる程静かに、涼しさを強調しないけれど暑くない、普通の世界が戻ってきた。

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↑この横断道路を歩いていたら、反対側から歩いてきた男の渡り終えるや、僕の方を確認せずに走り出した軽自動車に危うくぶつかりそうになった。
危ない!と声を出すと、急ブレーキで止まり窓を開けて「スミマセン、気をつけます」と謝るお爺さん。
小さな子供が走り出たらヤワだった。

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「万波を翔ける」を読みつづける。

ケチばかりつけているので、きょうは名文句のいくつかを拾う。

自裁した堀奉行が、生前息子に言った言葉
お前が役人として勤める頃には、これまでの前例がなんの役にも立たなく世となろう。先人のやり方に従うておるだけでは、ままならぬ時代となるやもしれぬ。ゆえに、己の心棒を今のうちからしかと抱くことじゃ。それさえあれば、時世に弄ばれることはなかろう。
その心棒は、人から与えてもらうものではない。己の力で見出し、築くものなのじゃ。
僕は、どんな心棒が作れたか?
かぼそい、頼りなげな心棒だったけれど、作るだけは作れたような気がする。
でも、それはもう擦り切れて今にも折れそうだ。

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水野奉行と太一の会話、褒められる、認められることを目指してはならぬという水野に、「誰にも認められねば、自分が間違っているのかどうかが解らないではないですか」と太一が言い、水野は「よって、道を過たぬためには、邪心なしに戒めてくれる者を重宝することよ」という。
叱るには覚悟と努力が要る。つまり相手の面倒を見るという肚よ。対して褒め言葉というのは、相手との話を、終いにしたい折に使うものだと心得ておる。
水野が、堀が陰で太一を褒めていたこと(面と向かってではなく)を伝える話のなかで、こういう会話になったのだが、水野こそ、太一を叱ってくれる(じつは認めている)すばらしい上司だということに、太一は気づいていない。

子どもの頃から学生時代まで、母はよく叱ったわりにあまり褒めてはくれなかったが、顔や態度で喜んでくれているときはわかった。
社会人になってから、上司や先輩たちに、たまに褒められることはあっても、叱られることがなかった。
心棒がかぼそいものに終わった所以だろうか。

凡そ、今の大人は若い者を叱ることができなくなってはいないか。
僕も、ちゃんと子供や孫を、ましてよそ様の子供を叱ったことが少ないようだ。
自分に自信がないのと、覚悟と努力が足りなかった、愛情も。

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太一は、希望していた咸臨丸のアメリカ行きや欧州派遣にも加われなかったが、水野について小笠原諸島に行く。
日本の領土であることを明らかにし、開墾してくるのが目的の一行には、長崎伝習所の一期生で和算や天文測量術に通じた小野友五郎も加わる(ジョン万次郎も)。
その小野が、長崎伝習所にいくとき、船を究める気はなかったし算術にも飽きていたので、さいしょは気が進まなかったと言いながら
じゃが、存外望まぬ役目を与えられたときこそが、己の引き出しを増やす好機に思うのじゃ。自分ではけっして選ばぬものに触れる機会となるゆえ。己の鉱脈というのは、己では考えもつかぬようなところにあるやもしれんな。
長く家人を務めれば、己の好まぬ役目を与えられ、それに従わねばならぬときもござろう。そのときに腐らず、面白がることで、道とは拓けていくものじゃ。
なんども左遷された僕は、それこそ思いもよらぬ役目ばかりやってきた。
しかし、腐ったことはなく、いつも楽しんで新しい仕事に向かった。
それは、左遷されても喰ってはいけるという楽観があったからでもある。
さて、今の若者はどうだろう。
そもそも、面白がって仕事をしているのだろうか。
その仕事から外されて、のちの希望が、可能性があるのだろうか。

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太一はついにフランスに向かう。
横浜鎖港の交渉に行くのを、国のためにならないことをしに行くのは嫌だと啖呵をきったが、水野奉行に懇々と諭されていくことにしたのだ。
『御馳走』のステーキに辟易する一行などの様子が愉快だ。
いよいよ万波を翔けるようだ。

Commented by noboru-xp at 2023-07-26 10:08
「叱るには覚悟と努力が要る」・・・確かに。私なんぞ犬の遠吠えの
ごとくで心棒もないな~。そんなことは分かっていならがつい言って
しまうのです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-26 11:04
> noboru-xpさん、権力批判は大いにやりましょう。
こっちの安全にかかわることですから。
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by saheizi-inokori | 2023-07-25 12:20 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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