日本もドイツも

さっき洗濯物を、ベランダに干して、部屋に入ろうと思ったらスリッパが片っぽしかない。
室内でいろいろ準備をしているときは、たしかに両足履いていて、ベランダにはサンダルに履き替えて(熱く焼けていた!)出たのだ。
おかしい、おかしい、とカミさんも一緒に探し、サンチにまで「おまえ、知ってたら正直にいうんだよ」などと、スリッパをくわえることなんて出来ない子にいったりして、「スリッパの神隠し」だなあ、と以前旅行で買ってきた布切れで編んだ草履をはいた。

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それで貧乏ゆすりをすると、どうも慣れないせいか、うまくゆすれない。
こういうときは、論理的にじっくり考えること、そうすればベランダにしかあり場所はない。
熱いベランダにもういちど、あった!

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タオル掛けを外に出すときに、足にひっかけてしまったのだ。
論理的に考えるとそういうこと、落ち着けば僕だって一人前なのだ。
サンチよ、冗談とはいえ疑ったりしてごめんな。

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昨日はNHKfmが、ずっと昭和の流行り歌を流し続けていた。
本を読みながらBGMで聞いていたが、なかなか懐かしいものがあった。
なかに「大きな空に梯子をかけて 真っ赤な太陽両手でつかもう」と、この猛暑が増幅されるような、アジジの歌詞があり、そのまま聞いていると「嵐のなかにも君のためなら七つの海を泳いでいこう」「いつも裸のこれが若さだ そうともこれが青春だ」などという、スゲエ文句の歌だ。
調べてみたら「これが青春だ」という題名で、歌詞は岩谷時子、作曲はいずみたく、歌手は布施明だ。
これは初めて聞く歌だった。

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ケストナーの「終戦日記一九四五」。
筆者はナチスの迫害を逃れるためにチロルに疎開する。
作りもしない、見せかけの映画製作チームの一員に紛れ込むのだ。

観光で食っているチロルの人たちの、ベルリンから疎開してきた映画製作チームにむける眼差しは冷ややかだ。
外から来た人たちは、食ったり壊したりする、しかし金を落とす。

ナチの指導者のひとりローベルト・ライの3月3日付けの「荷物を持たず」という記事のなかの「核心となる文章」を記す。
そのまた一部は、
美しき都ドレスデンまでが破壊されたいま、われわれは息がつける。すべてが消えた。ドイツの創造的精神の石の記念碑は瓦礫と化した。それでもドイツの芸術家の天才的な構想は救われた。その構想に従って再建すればいいのだ!(略)
こうして無駄な重荷、市民的な観念的および物質的な重い荷物を持たずにドイツの勝利へ邁進するのだ。われわれには突撃あるのみ。「突撃―突撃―突撃、塔から塔へと鐘が鳴り響く!」
ナチ突撃隊の賛歌を引いた文章に、ケストナーは
だがライ博士はもはやそれほど多くの塔を使えはしない。鐘もとっくに大砲にするべく接収された。彼が突撃するときには、ラジオ局の車が併走して、古いレコードの鐘の音を鳴らさなければならないだろう。
ナチ党の機関紙に、青二才と思われる少尉が、若い兵士たちに、失うものは何もないのだから、ボルシェヴィズムで頭が麻痺し、家畜同然に育った赤軍兵士に負ける筈はない、と煽る記事を書いているのを、
もはやなにもかも手遅れだとわかっているのに、未熟者をして未熟者を扇動させるとは。「これから国を担う者たち」にこれほどひどい仕打ちをするなど本当にありえないことだ!
と怒り、今はもう存在しなくなったヒトラーユーゲントにいた17歳の兵士のことを思いだす。
彼ら子供たちは対戦車地雷を抱いて、赤軍の戦車に取り付けようとして、走行する怪物と並んで走り、戦車に引き裂かれたのだ。

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日本もドイツも軍部のお偉いさんは、滑稽なほど馬鹿だ。
そんな事例がどんどん出て来て、あたかもチャップリンの映画を見ているような気になる。
日本人の敗戦日記を読む時より、面白さに惹かれてしまうのは、ケストナーの文章のせいか、それとも他国のことだからか。

Commented by eblo at 2023-07-18 11:48
あと一カ月ですね。広島・長崎はもっと早かったけれど、終戦直前に空襲で亡くなった人もいるんですよね。勿体ない。
中にいると見えないことが外からだと見えることもある、見える範囲や距離が広がるから。
世界中の、戦争で儲けるという発想が頭に浮かばない人たち、
「何故?」と「外から見る習慣」を付けませんか
ちょっと角度を変えるだけでいいんだから、と自分に言っています。
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-18 12:45
> ebloさん、終戦後にも少なからぬ人が死んでいますね。
客観視するクセはとても大事なことだと思います。
Commented by 20070707open at 2023-07-18 15:12
♪大きな空に梯子をかけて 真っ赤な太陽両手でつかもう♪この歌な~んだ?と夫に聞いたら「それが青春だby布施明」と即答しました、笑

布の草履、こちらでは道の駅などでよく見かけます。
足が喜びそう!
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-18 15:43
> 20070707openさん、Mさん、さすがあ!
草履は多分東北で買ったものだと思います。
Commented by yoko68 at 2023-07-18 18:20 x
🎵これが青春だ 布施明の若い頃の歌ですよね。粗削りの若さ溢れる歌声でピーク時とは全然違う歌声です。声だけだと、確かにわかりにくいですよね。
Commented by rinrin1345 at 2023-07-18 18:31
懐かしい草履、私の友達は夏になると履いてます
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-18 18:34
> yoko68さん、布施明だというのも意外でしたが、歌詞のベタな壮大さにやや辟易しました。
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-18 18:36
> rinrin1345さん、私もせっかくだからとちょっと履いています。
足裏マッサージになるのかな。
Commented by stefanlily at 2023-07-19 02:01
こんばんは、
テネシー・ウィリアムズに「熱いトタン屋根の猫」がありましたが
何かの比喩なのかな?
ナチスの親衛隊に繊維商というとヴィスコンティ「地獄に堕ちた勇者ども」みたいだなあ、と。
と思ってたら、(出てないけど)ジェーン・ヴァーキンが亡くなりましたね(合掌)
ちょっと前にヘルムート・バーガーも亡くなったし。
美貌で狂気(褒め言葉)の俳優が次々と亡くなるのは悲しいです。
Commented by kogotokoubei at 2023-07-19 09:27
今朝家を出る際、同じようなことがありました。
バッグにいつも入れているはずの手帳がない?!
あれ、おかしいな、と何度も探して、バッグに入れていたノートパソコンの袋の中に発見^_^
昼のバイトの後は、ドトールでパソコンを出すのがルーティンなんです。
その袋はチャックが壊れていて、開いたまま。
佐平次さんを、笑えません^_^
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-19 09:48
> stefanlilyさん、私は熱いトタン屋根の猫のような仕事もしてましたが、いまは熱いトタン屋根の下に暮らす老猫の気分です。

Commented by saheizi-inokori at 2023-07-19 09:52
> kogotokoubeiさん、物が歩く家、とかいう詩があったような気がします。しょっちゅう歩くのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2023-07-19 18:39
> ikuohasegawaさん、2日間履いてみましたが、足の甲への圧迫がなくなつてスリッパよりいいかなと思いますね。
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by saheizi-inokori | 2023-07-18 10:56 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(13)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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