ステッキ

図書館のロビーで、スマホを見てヤクルトの負けを確認して（くやしがって）いたら、3メートルも離れている向かい側の椅子にすわっているお婆さんが「スマホって難しいでしょう」と声をかけてくる。
ちょっと母に似た感じの人だ。
母が僕よりひとつ早く亡くなったから、この方もひょっとすると僕より若いかもしれない。
ちょっと、どう答えたらよいか、とまどったけれど「そうでもないですよ」といった。
どうやら今はガラケーを使っているのだが、スマホを買おうかどうか迷っているらしい。
わたしの友達で、電話を聞くだけできる人、かけることもできる人、といるのよ。
歌手の奥さんの名前なんて、友だちに（ガラケーで）電話して調べてもらうの。

3メートルも離れての会話ははた迷惑でもあるので、近寄っていき、グーグルで「近くの蕎麦や」と言って、蕎麦やが示されたのを見せる。
「なんという歌手の奥さんの名前を知りたいのですか？」、一呼吸おいて「井上陽水」、グーグルに訊いて「石川セリ」といって写真もみせると、「まあ！」と手品でもみたように驚く。
「どこを押すんですか」「ここ、このマイクのとこ」と教えてあげて「まだ何か知りたいことは？」と尋ねると「○○整形外科」。
地図を出して、行き方、といっても結局「ここまで行って誰かに訊いてみて」になるのだが、を教えた。

もうすっかり慣れてしまったが、改めてこうやってスマホの力を示して、驚かれてみたら、たしかにスマホを使う前に較べたら途方もなく便利な世界に暮らしていることに気付いて、豊かになったような気がした。

一昨日昨日と、散歩のときに腰や股関節が少し痛む。
サンダルをやめて、面倒だけれど、靴を履いた。
そういう靴屋で足に合わせて作った（高価な）ソールを敷いた、紐でしっかり絞めて履く靴だ。
すると履いたとたんに足腰が軽く感じられた。
それでも、散歩のあとでお尻に違和感があるので、けさはスクワットは休みにした。
そして、人に勧めたのに自分ではやっていなかった「貧乏ゆすり」を始めた。
パソコンに向かったときを利用する。
簡単そうだけれど、上半身をまっすぐにしてとか、いちにち最低でも一時間などと、あんがい大変だ。

いっときは、杖をつかわないと外出できず、ちょっと歩いては相撲取りのソンキョをやらないと前に進めなかった変形性膝関節症、脊柱管狭窄症などの痛みが、歩き方、靴、ストレッチ、筋トレなどで軽快して、歩くのが楽しくてしょうがなくなって、、ついつい歩きすぎたり、サンダル歩きをしたり、歩き方もテレンコテレンコ、昔に戻っていた。
痛みは、そういう僕に対する警報、ダメになっていることを気づかせてくれるのだ。

杖は痛みがなくなっても、足腰にかける負担をかなり軽減するから、常用した方がいいそうだ。
誰か、おしゃれなステッキをプレゼントしてくれないかな。

横浜・丹波甘納豆本舗の「栗もなか」、包み紙に「栗拾ひねんねんころり言ひながら」（一茶）の句が書いてある。
もなかのなかの、大きな栗を嚙みながら、故郷の大きな栗の木を思い浮かべる。

日曜日のNHKFMでは、伊集院光の番組で、昔懐かしい番組の音源をきかせてくれる。
きょうは、宮田輝が司会していた「のど自慢」、明治２８年生まれという出場者に「それなら６４歳ですね」といい、次の女性は英語でジャズ「アレクザンダーズラグタイムバンド」をうたって鐘を三つ鳴らす。

ひらひらとモンシロチョウが飛んできてベランダに干したＴシャツの肩にとまった。
せんじつ見た、ビートルズの世界に与えた驚くべき影響のドキュメント「映像の世紀バタフライエフェクト　ビートルズの革命　そしてルーシーは宇宙を行く」を思いだした。
いろいろ思い出すことの多い日曜の朝だ。