すべての藝術がそれに向かってあこがれる――音楽の状態
2023年 06月 17日
梅雨の晴れ間、暑い朝、がんばって大掃除。
きょうは洗濯物もよく乾く。
夕方、取り込む時に、どこか半乾きのときの気分わるいもんなあ。
サンチは二か月ぶりにトリミング、迎えの人がピンポン鳴らしただけで部屋の隅に逃げていったのは若い頃。
けさは、自らボックスの中に入っていったそうだ。
それはそれでなんだか、いとおしい。
朝のトーストの欠片を食べずに行ったので、とっておいてやる。
スマホのメモ帳をチェックしていたら、「キューバ インバシオン 音楽の戦い トローバの家 スペイン アフリカ 中国」というメモがある。
はて、なんだべ?
なんかテレビを見て、感じたことを翌日のブログに書こうと思ったらしい。
「トローバの家」ってのは、キューバのサンチアゴ・デ・クーバにある有名なライブハウスらしい。
『プレミアムカフェ ラテン音楽の殿堂・トローバの家 キューバ』という番組の再放送が来週金曜日にある!
さっそく録画予約しようとしたが、その時間にそんな番組はない。
もういちど、よく見たら、2022年6月23日でありました。
そんなことをしているうちに、少し番組を思いだした。
たしか若いミュージシャンが、このライブハウスを登竜門として烈しい競い合い、そうそう、あのお祭りに勝てるかどうかを競うのではなかったか。
ほかにも、なんだか意味不明なメモがずらずら、記憶力の減退をおぎなうはずのメモの役割を果たしていないな。
たいしたことをメモしていないってことでもある。
いぜん古本屋で求めてきた本。
前書きに「この小さな書物は詩を読む人々、それも初めて現代詩を読もうとする年少の読者のためにという、書店の依頼によって筆を執りました」とある。
80を過ぎても、未熟という意味では、年少者と変らない。
高校に入って、とまどったのは現代国語、なかんずく詩の試験だった。
子供の頃から本が好きで、父が遺していった小説なども読んで、母が世界文学全集も(自分の為にも)買ってくれて、大人っぽいものも読んでいたから、教科書の文章や詩の意味なんて、教わるようなものとは思っていなかった。
ただ、面白いと思って読めばいい、と。
ところが試験問題では、「この文章は彼のどういう気持ちを表していますか」とか「○○が駈け出して行ったのはどういう気持ちからですか」みたいなのが出て、そんな簡単な問いにちゃんと答えられない。
正解をみると、あまりにも当たり前のことだったり、え?ちがうだろう、みたいなこともある。
旺文社の「現代国語の傾向と対策」を読んで、やっとそうか、そういう風に答えるのか、と分かってからは国語は得意科目になった。
(一日早い?)
その一つは、母音OUと子音Kの巧みな組み合わせの効果
Komoro naru Kojo no Hotori
Kumo siroku Yusi Kanasimu
母音Aと子音sの巧みな組み合わせの効果
Kure yuke ba Asama mo miezu
Uta kanasi Saku no Kusabue
この二カ所が第一節第三節の冒頭にあって対照的な場所においてほどよい釣合いを示し、前者はこの詩のすべり出しとして申分のない役割を果し、後者はこの詩の収束としてやや弛緩したあたりの引締め役をこれまた申分なく果たしている。
そしてその音韻的効果が、両者において頗る相似た構造の上に置かれている。
二つ目の理由。
この詩の比類のない魅力は、また一面からそれはいわばこの詩の比類ない単純さにかかっている。
それは、「萌えず」「よしなし」「知らず」「見えず」、と否定的な命題のくりかえされて、「緑」「繁縷(はこべ)」「若草」は、いったん持ち出されても、すぐに引っ込められてしまう。
読者は、喚起された心象が、ふたたび一つ一つ放下されてゆく、極めて身軽な精神状態にいる。
そのために一篇の詩的印象のまとまりがいい、印象がただ一点に集注的に凝集しようとし、主観的気分が濃厚になる。
ここからちょっと長い引用です。
あと、「ああ大和にしあらましかば」(薄田泣菫)と「智慧の相者は我を見て」(蒲原有明)の二つについても教えてもらった。
本書が出たのは、昭和二十七年、僕が小学4年のときだ。
その頃の「年少の読者」に該当したのだろうか。
きょうは洗濯物もよく乾く。
夕方、取り込む時に、どこか半乾きのときの気分わるいもんなあ。
サンチは二か月ぶりにトリミング、迎えの人がピンポン鳴らしただけで部屋の隅に逃げていったのは若い頃。
けさは、自らボックスの中に入っていったそうだ。
それはそれでなんだか、いとおしい。
朝のトーストの欠片を食べずに行ったので、とっておいてやる。
スマホのメモ帳をチェックしていたら、「キューバ インバシオン 音楽の戦い トローバの家 スペイン アフリカ 中国」というメモがある。
はて、なんだべ?
なんかテレビを見て、感じたことを翌日のブログに書こうと思ったらしい。
「トローバの家」ってのは、キューバのサンチアゴ・デ・クーバにある有名なライブハウスらしい。
『プレミアムカフェ ラテン音楽の殿堂・トローバの家 キューバ』という番組の再放送が来週金曜日にある!
さっそく録画予約しようとしたが、その時間にそんな番組はない。
もういちど、よく見たら、2022年6月23日でありました。
そんなことをしているうちに、少し番組を思いだした。
たしか若いミュージシャンが、このライブハウスを登竜門として烈しい競い合い、そうそう、あのお祭りに勝てるかどうかを競うのではなかったか。
ほかにも、なんだか意味不明なメモがずらずら、記憶力の減退をおぎなうはずのメモの役割を果たしていないな。
たいしたことをメモしていないってことでもある。
いぜん古本屋で求めてきた本。
前書きに「この小さな書物は詩を読む人々、それも初めて現代詩を読もうとする年少の読者のためにという、書店の依頼によって筆を執りました」とある。
80を過ぎても、未熟という意味では、年少者と変らない。
高校に入って、とまどったのは現代国語、なかんずく詩の試験だった。
子供の頃から本が好きで、父が遺していった小説なども読んで、母が世界文学全集も(自分の為にも)買ってくれて、大人っぽいものも読んでいたから、教科書の文章や詩の意味なんて、教わるようなものとは思っていなかった。
ただ、面白いと思って読めばいい、と。
ところが試験問題では、「この文章は彼のどういう気持ちを表していますか」とか「○○が駈け出して行ったのはどういう気持ちからですか」みたいなのが出て、そんな簡単な問いにちゃんと答えられない。
正解をみると、あまりにも当たり前のことだったり、え?ちがうだろう、みたいなこともある。
旺文社の「現代国語の傾向と対策」を読んで、やっとそうか、そういう風に答えるのか、と分かってからは国語は得意科目になった。
とくに詩がそうなのだが、読んでこっちの胸に響く何かがあるか、それがすべてで、語釈とか隠された意味を探るような「深い」読み方をしない、いわば乱暴、アル中―ランボウ的読み方を、これは今でもそういう傾きがある。
というわけで、太郎に雪を降らせる三好達治の詩の教室を手に取ったのだ。
まず、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」について。
この詩が特に藤村の数多い作品中でも、最も出来栄えのすぐれたものとして、永く人口に膾炙され、古典的名作と称される所以は、その定型的五七調の、長所を十分にあるいは十二分に生かしきった点にあるでしょう。定型的な調子が単調に陥りやすいという、弊害を救っている二つの工夫がある。
その一つは、母音OUと子音Kの巧みな組み合わせの効果
Komoro naru Kojo no Hotori
Kumo siroku Yusi Kanasimu
母音Aと子音sの巧みな組み合わせの効果
Kure yuke ba Asama mo miezu
Uta kanasi Saku no Kusabue
この二カ所が第一節第三節の冒頭にあって対照的な場所においてほどよい釣合いを示し、前者はこの詩のすべり出しとして申分のない役割を果し、後者はこの詩の収束としてやや弛緩したあたりの引締め役をこれまた申分なく果たしている。
そしてその音韻的効果が、両者において頗る相似た構造の上に置かれている。
二つ目の理由。
この詩の比類のない魅力は、また一面からそれはいわばこの詩の比類ない単純さにかかっている。
それは、「萌えず」「よしなし」「知らず」「見えず」、と否定的な命題のくりかえされて、「緑」「繁縷(はこべ)」「若草」は、いったん持ち出されても、すぐに引っ込められてしまう。
読者は、喚起された心象が、ふたたび一つ一つ放下されてゆく、極めて身軽な精神状態にいる。
そのために一篇の詩的印象のまとまりがいい、印象がただ一点に集注的に凝集しようとし、主観的気分が濃厚になる。
ここからちょっと長い引用です。
あたたかき光はあれど上田敏訳、ポール・ヴェルレーヌ「落葉」という詩が最も音楽的な作品といわれるのと、ほとんど近似した意味で「千曲川旅情の歌」も最も音楽的な文芸作品だと三好はいう。
野に満つる香も知らず
というようなのも、ただ一つそういう気分を醸し出すための句のようであります。形象は何も残しません。それは前節末尾の
日に溶けて淡雪流る
というのを受けて、やや重複ぎみに、次の句
浅くのみ春は霞みて
麦の色わづかに青し
を喚び起します。ここにおいて、麦の芽のわずかに青いのは甚だ印象的です。けれどもそれもなお形象というには、あまりにも淡如とした「わずか」なものにしかすぎません。
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ
と次にいうのは、この詩中にあって、最も顕著な形象的一齣(せつ)でありましょう。そうしてそれに続くものは、暮靄(ぼあい)に消えて既に見えなくなった浅間山であり、また主観的にただその歌の哀しく聞こえる「佐久の草笛」であります。
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
も、さて視覚的映像としては何だかとりとめがありません。けれどもそれは既に冒頭において示された
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
というのと同じ筆法であって、ここでは詩句の音調音韻が、心理的内容として読者に何かを伝える方が主眼であって、さてその何かとりとめのない形象の方は、どうやらここでは、そのための一時の仮り物のような感さえするのであります。要するにこの詩一篇は、通じていって、―――すべての藝術がそれに向かってあこがれるといわれる、「音楽の状態」に最も近いのであります。
あと、「ああ大和にしあらましかば」(薄田泣菫)と「智慧の相者は我を見て」(蒲原有明)の二つについても教えてもらった。
本書が出たのは、昭和二十七年、僕が小学4年のときだ。
その頃の「年少の読者」に該当したのだろうか。
詩は声に出して読むもの、それを早くに教わるべきだつた。
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jyariko-2 at 2023-06-17 14:23
音楽的な文芸作品なんですね
何となくリズミカルな感じですものね
筆法なんですね?
藤村は意図的にそうしたってことなんですね?
結果そうなっていたってことではなくて
何となくリズミカルな感じですものね
筆法なんですね?
藤村は意図的にそうしたってことなんですね?
結果そうなっていたってことではなくて
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saheizi-inokori at 2023-06-17 18:45
> jyariko-2さん、もちろん意図した音韻効果であり表現だと思います。
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stefanlily at 2023-06-18 00:07
木梨憲武と藤井フミヤがキューバを訪問したドキュメンタリーは見たことあります。鷹ファンにとって、左腕モイネロ投手、昨年まで居たグラシアル、Despaigne(外国人選手が不調なのでデスパと再契約、近々来日?)選手とキューバ勢は馴染みのある国です。
ランボー「地獄の季節」一篇、
「見つかった。
何が。
永遠が。
空にとけ込む
太陽」……だったかな?
ゴダール映画の「気狂いピエロ」の印象的な場面。気狂いがマズい?私はそうは思わない。名訳ですよ。その表現しか当てはまらない事ってある。
何もかも過剰反応して言葉刈りする風潮には反対です。
ランボー「地獄の季節」一篇、
「見つかった。
何が。
永遠が。
空にとけ込む
太陽」……だったかな?
ゴダール映画の「気狂いピエロ」の印象的な場面。気狂いがマズい?私はそうは思わない。名訳ですよ。その表現しか当てはまらない事ってある。
何もかも過剰反応して言葉刈りする風潮には反対です。
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福
at 2023-06-18 06:34
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ikuohasegawa at 2023-06-18 08:14
「詩は声に出して読むもの」
ありがとうございます。勉強しました。
ありがとうございます。勉強しました。
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kogotokoubei at 2023-06-18 09:35
LGBT理解増進法案の第12条を現代国語の素材にし、「この条文の意図は何か答えよ」という設問にしたら、さて、どんな答えが出るか、なんて思いながら拝読しておりました。
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saheizi-inokori at 2023-06-18 09:47
> stefanlilyさん、わたしは映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」ですっかりキューバが好きになりました。
是が非でもかの国に行こうと思いながら、果たせずして今にいたりました。
「気ちがい部落紀行」でしたっけ、きだみのるの名作もありますね。
これなんか二つも重ねています。
是が非でもかの国に行こうと思いながら、果たせずして今にいたりました。
「気ちがい部落紀行」でしたっけ、きだみのるの名作もありますね。
これなんか二つも重ねています。
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saheizi-inokori at 2023-06-18 09:50
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saheizi-inokori at 2023-06-18 09:50
> ikuohasegawaさん、あんがい実行できないものです。
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saheizi-inokori at 2023-06-18 09:53
> kogotokoubeiさん、理科優先、文学は教えるな、取説が読めれば十分、そういう教育政策の底に流れているのが、眼光紙背に徹する人財を嫌う愚民家政策でしょうか。
by saheizi-inokori
| 2023-06-17 13:43
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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