花と浮気
2023年 03月 26日
ちょっと前までは、目黒川、千鳥ヶ淵、井の頭、砧、墨田川と花を追いかけたが、コロナヒキコモリと年齢のせいで、そういう気持ちが涸れてしまった。
夕暮れのなかにまぎれていくような、はかなげな桜もいいものだ。
かぐはしき桜の花の空に散る春の夕べは暮れずもあらなむ良寛の歌、中村明の「日本語名言紀行」で知った。
図書館の書棚で見つけた、この本、寝る前にパラパラめくって導眠剤にしようと思うが、弟にもらった「ザ・ベリー・ベスト・オブ落語」の一枚を聴くのと日替わりかな。
五代目志ん生、六代目圓生、八代目文楽、八代目可楽、三代目柳好、八代目柳枝、三代目金馬、三代目三木助、六代目柳橋、八代目正蔵、十代目馬生、五代目小さん、文句なしの、ほんものの落語家たちが、入れ替わり立ち代わり、それぞれのベストの噺をベストの音源で聴かせてくれる。
志ん生だけ二枚、彼は落語界の大谷翔平である。
花ニ嵐ノタトヘモ有ルゾ千武陵『勧酒』を井伏鱒二が訳した、これは中村さんに聞かなくても知っていた。
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
「ペストの夜 下」の紹介で、作品の最も大切なモチーフ、ペスト禍が人々の暮らしやものの考え方にどんな影響を与えたかについて、触れなかった。
その代わりと言っては、なんだけれど、僕もここから一言、名言を引いておこう。
旧来の帝国や植民地が完全に過去の遺物と化した2000年代以降、「ナショナリスト」というのは、国家の言うことにはなんでも賛成し、権力者におもねるばかりで、政権を批判する勇気を抱かない人々が、その世間体を守るためだけに用いる呼び名でしかなくなった。うむ、名言と思ったが、ウクライナの人々には通用しないな。
もっぱら日本のあの界隈の人たちに似合う言葉かも知れない。
本屋で本を買っていた時は、本屋病の衝動で読み切れない本を買ってツンドクが多かった。
図書館主体になってからはそういうことはなくなった代りに、「天皇の世紀」12巻のように長編を読んでいる途中で、予約した別の本が届いて、浮気を強制される。
長い行列の後に届いた伊東潤の「天下大乱」を読み始めた。
主人公は徳川家康、大佛次郎の密度の濃い文章を読んだあとでは、お話を聞いているように軽く読める。
軽い浮気で済むかもしれない。
冒頭で豊臣秀次殺しのことが出て来て、ウイキペディアで、太閤秀吉が、自分の息子・秀頼が誕生して、それまで後継者の位置にあった甥の関白秀次を切腹させ、その係累を皆殺しにする、その真相についての諸説を読んだ。
三条河原に40m四方の堀を掘って、鹿垣を結んだ中で、秀次の生首が見下ろす形で、係累、まず子供たち、ついで女たち39人、つぎつぎに首を刎ねられて、子供たちの遺体の上に母親たちの遺体が積み重ねられた。
そんなことを調べたり読んだりしながらの浮気は、それほど軽いことでは済まないのかもしれない。
京都・仙太郎「トラ焼 春の香」の半分、虎の縞模様と花びらの組み合わせが、ちょっと異国情緒だ。
同じ日本でも北と南では大違い、これから春が北上してくるのが本当に楽しみです。
「ザ・ベリー・ベスト・オブ落語」興味あり^^
素敵な桜のトンネル!どこですか。
コロナが緩んで、見ようと思うと曇りか雨で、今年もしょぼんとした花見でした。
『天下大乱』も面白そうです。
今晩の「徳川家康15の謎を解け」を録画予約しましたが長くて。