大江健三郎をもう一度
2023年 03月 14日
祖母の歌から。
正義感が強い伯母のことを
笑ったときはなんともいえない優しさが子どもの僕にも伝わった伯母だが、神経質で自分にも人にも厳しい人だった。
深夜、祖母の言うこと為すことが嫌で嫌で堪らないように、口喧嘩をして、寝たふりをしている僕はいたたまれなくなることがあった。
「告知」をしない時代だったが、誰かの不注意で自分がガンだと知って、「それじゃあ」と病床をかたづけて庭仕事をやり、キリスト教会の説教をした。
母の句。
ジュデイオングが司会をして、宮様も来て、居心地の悪いことだった。
でも母が招待券を手にして大喜びで友達と見に行ったのが救いだった。
大江健三郎が亡くなった。
彼の作品を読まずにずいぶん経ってしまった。
「飼育」を読んだのは高校生のときだったか、雑誌で読んだ記憶がある。
「死者の奢り」のホルマリンの臭いのしてくるような話も。
開高健との芥川賞受賞争い?とか、新聞などで(とうじの僕の情報源と言えばそれだけ)、「もてはやされた」作家に対するミーハー的興味に惹かれたのだ。
その後も、ずっと「芽むしり仔撃ち」「個人的体験」「万延元年のフットボール」「M/Tと森のフシギの物語」「みずから我が涙をぬぐいたまう日」「洪水はわが魂に及び」「同時代ゲーム」「燃えあがる緑の木」「取り替え子(チェンジリング)」などなどを読んできた。
それらの本のどの一冊も、今の我が家にはない、すべて処分してきたのだ。
物体としての書籍を処分すると同時に、そこで得た精神的なものも捨てては来なかったか。
そもそも彼の作品を、きちんと読んだのか、読めたのか。
「捏造」によって死刑囚が造られ、自殺者が出て、真実を「捏造」とする捏造も行われ、、日本は崩壊しつつある。
大江健三郎的な発言や行動が『はやらない』『ウザイ』ものとされる。
易きにつくのだ。
ウソでもいい、今この時を安んじればいいのだ。
僕もその生ぬるい空気にどっぷりつかっていたのではないだろうか。
もういちど大江健三郎を読もうと思う。
吾が病めば水仕に荒るる吾娘の手を取りて嘆かむ人もあらなく生涯独身で、盲聾唖の子どもたちの教師をした伯母と二人で暮らした祖母だった。
正義感が強い伯母のことを
心清き人を吾が娘とよぶことをこよなき幸せと世に生きてありともうたった。
笑ったときはなんともいえない優しさが子どもの僕にも伝わった伯母だが、神経質で自分にも人にも厳しい人だった。
深夜、祖母の言うこと為すことが嫌で嫌で堪らないように、口喧嘩をして、寝たふりをしている僕はいたたまれなくなることがあった。
「告知」をしない時代だったが、誰かの不注意で自分がガンだと知って、「それじゃあ」と病床をかたづけて庭仕事をやり、キリスト教会の説教をした。
蘭展の熱気にコート脱ぎにけりJRにいたころ、東京ドームでやっていた蘭展を後援したことがあって、僕もセレモニーでナベツネなどと並んだ。
春の月校舎を攀(よじ)る松の影
ジュデイオングが司会をして、宮様も来て、居心地の悪いことだった。
でも母が招待券を手にして大喜びで友達と見に行ったのが救いだった。
彼の作品を読まずにずいぶん経ってしまった。
「飼育」を読んだのは高校生のときだったか、雑誌で読んだ記憶がある。
「死者の奢り」のホルマリンの臭いのしてくるような話も。
開高健との芥川賞受賞争い?とか、新聞などで(とうじの僕の情報源と言えばそれだけ)、「もてはやされた」作家に対するミーハー的興味に惹かれたのだ。
その後も、ずっと「芽むしり仔撃ち」「個人的体験」「万延元年のフットボール」「M/Tと森のフシギの物語」「みずから我が涙をぬぐいたまう日」「洪水はわが魂に及び」「同時代ゲーム」「燃えあがる緑の木」「取り替え子(チェンジリング)」などなどを読んできた。
それらの本のどの一冊も、今の我が家にはない、すべて処分してきたのだ。
物体としての書籍を処分すると同時に、そこで得た精神的なものも捨てては来なかったか。
そもそも彼の作品を、きちんと読んだのか、読めたのか。
ウソで作られる、ウソがはびこる社会はリアルな危機には無力なのだ。
大江健三郎的な発言や行動が『はやらない』『ウザイ』ものとされる。
易きにつくのだ。
ウソでもいい、今この時を安んじればいいのだ。
僕もその生ぬるい空気にどっぷりつかっていたのではないだろうか。
もういちど大江健三郎を読もうと思う。
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vitaminminc at 2023-03-14 15:46
「個人的な体験」─私の大好きな作品です。
2
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hanamomo60 at 2023-03-14 16:07
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baobab20_z21 at 2023-03-14 18:38
私も高校卒業時から大学入学直後くらいの短い間に読みました。いわゆる初期の作品。飼育、死者の奢り、芽むしり仔撃ちの3部作。ショッキングだった気がする。
また書いてください。
また書いてください。
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saheizi-inokori at 2023-03-14 21:26
> vitaminmincさん、光君のことが書いてあったのか、うろ覚えだなあ。
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saheizi-inokori at 2023-03-14 21:30
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saheizi-inokori at 2023-03-14 21:33
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tanatali3 at 2023-03-15 06:37
正直なところ、ひとつも読んだことがなく、読んでも難解そうな印象がして、手つかずでした。一回、どれか読でから判断するべきですね。
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福
at 2023-03-15 06:48
x
大江氏は「われらの時代」もそうですが、新世代の旗手といった感じのする方でした。
タイトルはコピーライトのようであり、見るだけで楽しい。
吉本隆明が「懐かしい年への手紙」という特異な作品を褒めていて(僕くらいだろうと述べている)、
「読めない小説」というものだから、と評しています。興味津々です。
タイトルはコピーライトのようであり、見るだけで楽しい。
吉本隆明が「懐かしい年への手紙」という特異な作品を褒めていて(僕くらいだろうと述べている)、
「読めない小説」というものだから、と評しています。興味津々です。
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saheizi-inokori at 2023-03-15 09:38
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saheizi-inokori at 2023-03-15 09:40
> 福さん、難解な小説が多いけれど、部分的に面白いところもあるから読み通せた気がします。
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suiryutei at 2023-03-18 14:10
「万延元年の・・」を今日から読み始めています。
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saheizi-inokori at 2023-03-18 18:47
by saheizi-inokori
| 2023-03-14 12:04
| わが母と祖母の遺したまいしうた
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