僕も荒井秘書官だ

きのうは、珍しく昼日中にテレビを見た。
知人の勧めで録画しておいたNHKの「100分で名著 100分でフェミニズム」だ。
フェミニズムの歴史(四つの波)を説明したあと、加藤陽子が「伊藤野枝集」を紹介、そのなかで家庭の主婦が直面する「不覚な違算」、働かない夫、子育てで時間を奪われる日々、外で働くことに無理解な姑に苦しんだことを語る。

まさにかつての僕だ。
家事といえば週に一度の掃除と、気のむいたときの料理、いずれも自分の鬱屈を晴らすためであって、気が向かなきゃやらない。
会津坂下の駅長になるや、世田谷の小学校の特殊学級の教師をしていた妻に仕事を辞めていっしょに会津に行くように、とうぜんのように頼む、というより言い渡したのだ。
女手一つ、母の会社勤めによって育てられたのに、いや育てられたからこそ、妻には家にいてほしかったのだ。

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上野千鶴子の紹介した「男同士の絆」(イヴ・K・セジウィック)によると、「家父長制とは物質的基盤をもった男同士の関係であり、男性による女性支配を可能にする相互依存および連帯を樹立、もしくは生み出す」といい、「ホモフォビアと無縁の家父長制など想像できそうもない、、(略)女性を支配するシステムの産物なのだ」ともいう。
ホモソーシャル(男同士の社会的連帯)は、ホモセクシャルを封印し、ホモフォビアを必然的に生み出す。

岸田の秘書・荒井の「同性婚に対する蔑視・嫌悪」は、家父長制に根差した必然的感情だから、彼だけのものではなく、彼の周囲の秘書たちもみんなそうであるし、自民党に限らず、全共闘の闘士にも同性婚に対する違和感は僕にもあった。

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同性婚を理性では受容しているし、実際に同性婚をした人とも会ったりメールのやりとりを普通にしているけれど、子供や孫が同性婚をするといえば、祝福はしても、ちょっと戸惑うことだろう。
学習によって理性では受け入れているけれど、心の底にホモフォビアがあり、さらにそれが結婚という社会制度に裏付けられることに、不自然さを感じていた。
友人の実例やテレビ報道などで同性婚の人たちの幸せそうな顔を見続けているうちに、自然に祝福の気持が湧くようになったのだ。

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問題は、自らの家父長制的価値観・感情を、歴史的社会的に作り出された、根拠のない男性優位の価値観であると相対化して認識し修正せずに、あたかも人間社会の普遍的価値観であるように思いこみ、そういう価値観をもっていることを、いかにも「男らしい」「正常な」人間であるかのように誇ってみたり、そうでない人を軽蔑し差別することだと思う。

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男性たちがパワーゲームから降りられないことが、日本が世界有数のミソジニー社会、女性の社会進出を阻む原因になっているのではないか。
組織とのかかわりを半身にとどめて、別のこともやってみる、そんなことを上野千鶴子は勧める。

「男同士の絆」が図書館にない、アマゾンでみると4千円以上もする。
とりあえず上野千鶴子の「女きらい ニッポンのミソジニー」を注文した。

Commented by jyariko-2 at 2023-02-06 12:37
不覚な違算 これに気付くのに大分時間が過ぎてしまった
定説みたいに思っていた私  今更どうにもならないでいます
まだまだ根深いものがあり掘り起こし理解するのには長い時間が必要に感じます
沢山の経験をし年月を過ごし叫ばれるようになって
今そうだそうだと過去の自分が悔やまれます ボンヤリの私と甘えもある私です
もし20代30代に戻れるのなら違う生き方になったと思います
男性優位の社会は続くのでしょうね
Commented by saheizi-inokori at 2023-02-06 13:04
> jyariko-2さん、フェミニズムの四つの波、波は起こさないとダメ、黙っていたら波は起きない、そう上野千鶴子がいってましたよ。
とはいえ、家の中に波風を立てたくない、そう思わせる無言の圧力があるのですね。
Commented by unburro at 2023-02-06 17:05
「100分でフェミニズム」なかなか面白かったですね。
これを、録画してご覧になる佐平次さんも、素晴らしい。

ゴリゴリのホモソーシャル社会の中で、自己実現されてきた佐平次さんにとって
今回のメンバーの語るフェミニズムには、様々な違和感があるのでは、とお察しいたします。
今を生きる女性の大部分だって、佐平次さんと同じ感覚を持つと思います。
だから、社会は変わらないし、最後に上野千鶴子さんが言っていたように、
フェミニズムの専門家達でさえ「理想の社会がどういうものか」わからないんですね。
ここが一番、面白かったです。
ま、「平和」とか「民主主義」だって、結局、正解はわからないんだから、一緒なんですが…

しかし、出演者の方をTwitterなどで、後日譚を読むと
だいぶ編集が入って、本来の話し合いの内容から変わってしまった部分もあるようで、
NHKの自主規制でしょうか、残念…
映像でなく、書籍などでも良いので、ノーカット版が見たいです。
Commented by tanatali3 at 2023-02-06 17:53 x
この家父長制と同性婚を同一視するところに論理的な無理があるのでしょう。戸籍制度は台湾が運用停止、韓国は個籍に変更したようです。現在では中国と日本のみ。とはいえ、個籍制度でありながら、中東の男尊女卑は連綿と続いており、議論の論点は、ジェンダー問題にしぼるべきかとおもわれます。戸籍制度を廃止し、住民登録制度を改編するだけで、婚姻、出生、死亡、相続などの法律的対応はできるようです。ただ色々資料を調べるうちに、社会保障制度番号や寺社仏閣との関連もあり、一刀両断とはいかないのが日本だろうという結論になりました。
話しは逸れますが、新渡戸稲造の武士道をカミさんと云々し、家族より個人の面子を重んじる馬鹿さ加減に、しかとされ、生きることや、家族愛を見失っている自分に気づかされたことがあります。そんな日本人でした。
Commented by saheizi-inokori at 2023-02-06 18:22
> unburroさん、知るもんか!でしたっけ、マルクスも苦笑いかな。
私は耳が遠くなって、上間さんが何かいいことを言っているらしいのに聞き取れなくてイライラしました。
上野さんが遠慮せずにしゃべったら相当なものでしょうね。ちょっと怖い。
Commented by saheizi-inokori at 2023-02-06 18:29
> tanatali3さん、私は家父長制についてもっと学ぶ必要を感じました。
Commented by tanatali3 at 2023-02-07 03:27
ワタシも昔は日本男児風を吹かせた時期がありました。こんなことを言うのさえ恥ずかしくて、どこかに隠れたくなります。
知り合いを始め、娘友達の同性婚カップルや、親戚などなど、アメリカンも時代は変化していると感じます。
それにしてもエキサイトさん、どこかバグっているようです。SEさん、どうか早急な復旧をお願いします。
Commented by saheizi-inokori at 2023-02-07 08:37
> tanatali3さん、私の同期の男は、家では一切家事をしない、下着のありかすら分からない、そんなことを自慢げに言ってました。
奥さんが病気になったらどうするのだろう。
Commented by baobab20_z21 at 2023-02-07 17:13
個人の趣味嗜好を法整備によって取り仕切るのって、どうなんだろう?って思いますけどねー。
家父長制度が刷り込みだったとしたら、今回のジェンダーもプロパガンダだろうかと見ています。
Commented by saheizi-inokori at 2023-02-07 18:33
> baobab20_z21さん、支持率と票のためと割り切っているのでしょう。
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by saheizi-inokori | 2023-02-06 12:21 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

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