吉田松蔭の魅力
2023年 02月 02日
気立てのよい、よく笑う看護師たちだが、こんなに朝早くから笑わなくてもと思ったら、もう6時だ。
大きな木がゆらゆら揺れて風の強い朝。
あれは新宿でなくて渋谷のビルのようだ。
今朝が最後の早朝散歩、禁を侵して西病棟に入り込んで富士山に挨拶する。
「天皇の世紀 2 大獄」読了、とても面白かった。
若い頃、部屋住まい日陰の暮らしが17年も続き、思いもよらず家督を継いだばかりか、大老に抜擢された井伊直弼は、小心者で自分の弱さを弁えているからこそ、忠義を全うするためには、頑なに、ひたすら力をもって障害となる者たちを排除しようとした。
斉昭、慶喜が実権を握るのを嫌がった大奥とその背後の紀州藩の意向、それが有為の青年たちの未来を奪ったのだ。
(駒沢公園、歩きたい)
井伊大老を辞めさせて公武合体のうえ鎖国を完遂せよという勅諚は、水戸藩士を感動させ狂喜させたが、さすがに斉昭と藩主慶篤は幕府(徳川)と真っ向争うことには慎重であり、諸大名に回付せよという敕命も実行しない。
千人を越える水戸藩士だけでなく郷士たちが江戸に押しかけようと小金に集まり、感奮のあまり自刃する者も多く、斉昭父子の謹慎を解くことや全国に呼びかけることを求める。
彼らを突き動かしたのは水戸学、藩主への忠誠心、なかには食い詰めた貧民もいたという。
井伊大老は勅諚は水戸派の差し金とみて、関係者を徹底的洗いだし逮捕に踏み切る。
懐刀の長野主膳が切れ味を見せる。
意気さかんだった公家たちも家来だけでなく我が身も危ないと感じるや、腰くだけになる。
天皇は最後まで開国を認めようとしないが、幕府の使者である老中間部詮勝が、今回の条約は仮のもので、いずれ諸条件が整えば鎖国に戻すという、ちゃらんぽらんを信じて条約締結を受け入れる。
井伊大老はそれだけでは満足せずに関白や左右大臣を坊主にして引退させ、幕府よりの九条関白の復権を果たす。
孝明天皇は信頼できる側近をすべて失うのだ。
このあたりも読みごたえ十分だ。
斉昭にも上使が差し向けられ水戸に永ちっ居を命じられる。
慶喜も謹慎隠居だ。
一方で横浜に突貫で新しい港を開き、これが条約にいう神奈川開港(東海道要所に異人の集まるのを忌避した)する。
橋本左内、吉田松蔭など取り調べの役人たちが首をかしげるような(無罪の)青年志士たちも殺される、まさに安政の大獄。
大佛次郎は、吉田松陰についてその人となり、文章、考え方、江戸に送られて後の取り調べの推移、本人もまわりも予想外だった死刑になるまでの様子を細かく書く。
松蔭を思う強い気持ちが、僕にもヒタヒタと伝わってくる。
独自の思想をもってはならないことになっていた、封建時代の武士たち。
そのなかで、松蔭は未熟ながら自分が考え方を選び、一枚ずつ皮膜を噛み破って外に出て、蝶になって舞立つ稀有の本能を持っていた。武士の子としては、まったく新しい性格である。その生き方があることを村塾の弟子たちに自分が範となって示したのだ。(そこから維新の空へ大小の蝶や蛾が羽ばたきして舞立つことと成る。)彼自身は、壁に衝突して地に堕ちた。
、、とある。
読む本がなくなったので「氷点 上」を読んだ。
読み物的小説、消灯前に読了。
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Solar18 at 2023-02-02 18:30
素晴らしい眺めですね。入院生活もこうだったら耐えられそう。「氷点」は当時、とても人気で私もすぐに読みました。「読み物的小説」→お上手な表現ですね。
1
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tanatali3 at 2023-02-02 18:54
昨日は勘違いしました。そろそろ戻られましたか。
歴史物は作家により、登場人物(吉田松陰)への感情移入の違いが表れる、に納得です。
歴史物は作家により、登場人物(吉田松陰)への感情移入の違いが表れる、に納得です。
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saheizi-inokori at 2023-02-02 19:13
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saheizi-inokori at 2023-02-02 19:18
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byogakudo at 2023-02-02 20:10
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doremi730 at 2023-02-02 21:32
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saheizi-inokori at 2023-02-02 21:42
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saheizi-inokori at 2023-02-02 21:45
> doremi730さん、忘れられてしまったかと思ったら、ちゃんと覚えていてくれました。
皮膚炎がなければもっとごしごし洗ったところですが、泡と手でゆっくりなんども洗いました、人間らしくなりましたよ。
皮膚炎がなければもっとごしごし洗ったところですが、泡と手でゆっくりなんども洗いました、人間らしくなりましたよ。
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kogotokoubei at 2023-02-03 08:07
松陰をテロリストなどと形容する人がいますが、とんでもない。
同じ長州出身の作家古川薫の「吉田松陰の恋」という作品は、野山獄に一人女性で収監されていた高須久子と松陰との淡い恋を描いたものです。
二人の間で交わされた俳句や短歌が散りばめられています。
大佛は、この恋に触れているのかな。
読んで確かめたくなりました。
同じ長州出身の作家古川薫の「吉田松陰の恋」という作品は、野山獄に一人女性で収監されていた高須久子と松陰との淡い恋を描いたものです。
二人の間で交わされた俳句や短歌が散りばめられています。
大佛は、この恋に触れているのかな。
読んで確かめたくなりました。
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saheizi-inokori at 2023-02-03 09:43
by saheizi-inokori
| 2023-02-02 10:12
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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