カワイイといわれました
2023年 01月 31日
昼番の看護師がふたり揃って挨拶にきて、僕をみて声を揃えて「カワイイネ」というではないか。




「ボク?」というとふたり揃って笑い崩れる。
着ている上っ張りのことなのだ。
背丈の揃った、よく似た二人、双子みたいだね、というと又揃って笑った。

グレーのモフモフ、胸に大きなスヌーピーが描かれている。
見るなり、あ、ジエラピケだ!という看護師がもう四人もいた。
僕は知らなかったブランドの名前、わざわざタグをめくって確認する人もいた。

孝明天皇の近くに一人でも勉強する人がいて、開国、交易、外に拡がる広い世界という現実を説明し理解をひらく才覚のある者がいたら、天皇はそれまでに身を責めて苦しむことはなかった。
実際はその反対、偏見と根拠のない無造作と、実現不能の安易な攘夷計画を、忠義と名乗る人々が競って献上していた。

天皇に三家や諸大名の意見を聞き直してから、出直せとの勅答を受け取った堀田正睦の上に新任の井伊大老が直接指揮をとる。
三家、とくに水戸の老公は開国猛反対、どうすべえと苦慮するうちに英仏露も艦隊を率いてやってくる。
とりあえずハリスには、もう少し待ってくれと交渉してこいと、使者に選んだのが、それまで交渉に当たってきた井上清直(川路の弟)と岩瀬忠震、彼らは気鋭の開国論者だ。
井上信濃守は、大老に「仰せの趣畏まり奉りましたが、是非に及ばざる節には調印をお許しくださいますか」と反問する。
「その場合はやむを得まいが、なるたけ努力して欲しいのだ」と井伊大老。
「是非とも引き延ばす覚悟で交渉つかまつりましょう」と岩瀬肥後守、井伊大老の上任を見て、子供のような者をと放言した不敵な男だ、なあにそんなことはするはずがない。
僕は国鉄末期の国労動労との労使交渉の前面で悪戦苦闘した。
不眠不休の交渉でもラチがあかず、組合が無法ともとれる要求を出してくる。
それを呑まなきゃストライキは続行、朝のラッシュにぶつかる。
個室にいるエライさんは、そんな要求は飲めない、粘り強く交渉を続けよ、という。
分かりました、と言いつつも組合には要求を飲むと答えてストライキを間一髪でラッシュ回避した。

井上、岩瀬もさっさと調印する。
井伊大老が「その場合はやむを得ない」と答えたことに、側近が、それは天皇の命令に背く(違勅)にならないかと、(使者を送り出した後)いつになくクドクド異義を申し立てるが、井伊大老は、客観情勢を説き、調印を拒絶して世界を相手に敗北する国辱と違勅することのどちらが重大か、といい、そもそも政治は幕府に任されているのだから、責任は自分がとる、と腹の座ったところをみせた。
腹の座った井伊は、いきり立つた斉昭の呼び掛けで三家揃って(プラス春嶽)の不意の登城や慶喜の抗議を見事に老獪にかわすのだ。
老人斉昭を待たせ続け疲労困憊させ、鋭峰を警戒すべき春嶽は家格が違うと同席させない。
慶福を将軍にすることも押し通す。
このあたりは、なかなか読みごたえがある。
腹の座った井伊大老は、将軍家定の死に際し水戸斉昭慶喜親子を謹慎処分にするなど反対勢力の封じ込めにかかる。
残暑厳しい荒れた屋敷に雨戸をたてた部屋に麻上下をつけて終日座っていなければならないのだ。
薩摩の島津斉彬が兵を率いて大阪に押し出し御所を守ろうとする途中に急逝。
得体の知れない日下部伊三次なる者が水戸藩の了解を得ていると称して、水戸の謹慎を解き水戸藩に公武合体のために立ち上がれという勅命を出せと建言するのを公家たちは大歓迎してとうとう天皇は勅命を発出してしまう。
そうでもしなければ、朕は退位すると繰り返してもいたのだ。
西郷隆盛がその危うきを察し、京と江戸の間を大急ぎで往復するのだが間に合わなかった。
さあ、たいへん、どうなりますことやら。
ジェラピケ! お洒落ですねぇ。
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> tsunojirushiさん、やはりご存知でしたか。かみさんが買ってくれたのです。
> ebloさん、まあそういうことなんでしょうが、その普通というのがあまり安心ではない老人ではあります。
> tanatali3さん、おやすみなさい。
あ、退院おめでとうございます。
> yunko_lifeさん、顔がなければ、ね。シワクチャしじいの。
> yunko_lifeさん、ありがとう。
by saheizi-inokori
| 2023-01-31 10:48
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Comments(10)