不自然な「氷点」から「天皇の世紀2」へ
2023年 01月 30日
今日二本目の投稿です。
ヒマナンデス。
三浦綾子の「氷点」を読み始めたけれど、冒頭の設定が不自然なのでイライラする。



26歳、お嬢様育ちで美貌の院長夫人に惚れた病院の歯科医師が院長の留守宅で夫人に迫る。
応接室に入ってきた幼い女の子を、外で遊んでなさいと追い払ったのは、彼女にも淡い水心があったのだ、未熟というものか。
ところが遊びに行った女の子は林のなかで若い男に殺されてしまう。
その男は子供の頃にタコ部屋に売られ、ようやく結婚したのだが妻が生まれたばかりの赤子を残して死んでしまいパニックになっていたときに、女の子に遇い泣くのを抑えようとして絞殺してしまうのだ。
男は犯行を自白して留置場で自殺してしまう。
妻を愛する院長は自制心の強い男、自分の留守に部下の歯科医師との間になにごとかがあったらしいことを察し、そのために最愛の娘の命が奪われたことに怒りを覚えるが、妻を問い詰めたり責めることはしない、できない。許した訳でもない。
妻の苦しみを可哀想に思う気持ちもある。
妻は、事故の前に不妊手術を受けているのだが、どうしても女の子が欲しい、もらってくれと夫にせがむ。
もう一人下の男の子がいるけれど。
歯科医師は結核に冒され、転地療法のために、別れの挨拶に来て(やはり亭主の留守中に)、衝動的に女の首筋にキスをする。
帰宅した夫は妻の首筋のキスマークに気づく(本人は知らない)。
夫は「汝の敵を愛せ」という考え方に惹かれていて、託児所も経営する親友の医師が犯人の遺児を預かり、まさかお前でもこの子を養子にはすまいという冗談を、徐々に真面目に考え始める。
幼い女の子を見るだけでも辛いのに。
あわせて、裏切った妻(思い込み)に対する復讐として、犯人の遺児であることを伏せたままその子を育てようと思う。
ここまで読んで、僕は夫の気持ちが分からなくなった。
崇高な愛なのか、猜疑心と嫉妬心に基づく復讐なのか。
それが両立しうるのか。
そもそも理性的な病院長にしては、考えが飛躍しすぎないか。
妄想、混乱、不可解だ。
というわけで、とりあえず「氷点」はおいて「天皇の世紀2
大獄」を読むことにした。

安政五年、老中堀田正睦(まさよし)は、ハリスとの条約案を天皇に見せて、締結の許可を得ようと自ら上京する。
長い徳川政権を通して幕府が政策について朝廷の許可を求めることはなかったし、その必要はないと反対する者も多かったけれど、堀田や川路は敢えて勅許を得ることで、水戸の老公副将軍斉昭をはじめとする攘夷、開国に反対する勢力を抑えこもうと考えたのだ。
それだけ幕府の統制力が衰えてもいた。
さらに堀田たちは、簡単に勅許を得られると思っていた。
開明的で理知的な堀田は外交政策は鋭かったが、錯綜する国内政治の動きを見極めるのは苦手だった。
前例踏襲で身分の保全だけが大切な公家たちには、さしたる政策などない、国際情勢を説き明かした上で条約を結ばなければ外国が攻めてきて京都も安泰でなくなるかもしれない、そう言えば、条約締結に賛成する、はずだった。
ところがどっこい、孝明天皇は断固反対!幕府の贈り物など受け取ってはならないと、あらかじめ関白九条尚忠に釘をさす。
開国派の老人、師父でもある太閤鷹司の介入を防ぐべく手をうつ。
梁川星巌、梅田雲浜、頼三樹三郎、池内陶所の四人の民間人が、尊攘党の四天王と呼ばれて、脱走藩士など諸国の有志の中心になって、若い下級公家たちとも通じ、激しい議論で朝廷の空気を染め上げていた。
堀田側の懸命の説得によって関白九条が翻意、幕府に有利な妥協案を作ったことが分かる(朝廷の秘密がすぐに民間人にまで知られてしまうのだ)と、九条や鷹司、伝奏、議奏の家に脅迫状が舞い込み、明治天皇の外祖父大納言中山忠能が九条案を改訂し幕府にノーをつきつける草案を作成、八十八人の公卿たちが御所に集まって署名する。
岩倉具視、大原重徳(しげとみ)らが、集めた日頃は目立たぬ中流以下の人々がにわかに前列にでてきたのだ。
彼らは夕方は提灯を持って中山大納言を押し立てて九条関白の家に押しかける。
夜十時頃いったん延期された押し問答は翌日宮中にもちこされて、けっきょく公家たちが勝利を収める。
待ちくたびれているハリスが辛抱強く、さらなる期限の延期を受け入れてくれたのが救いだ。
開国か、攘夷かの対立だけではない。
次期将軍を誰にするかの対立、外様の島津なども推す人物本位で一橋慶喜にするか、承継順位にしたがって、幼く、扱いやすい紀州藩主慶福にするかをめぐる争いが絡み合って、実に複雑な動きが続く。
堀田の失敗のあと、井伊直弼が大老に抜擢されて心ある幕閣たちを驚かせ失望させる。
井伊家の十四男として、一生侘びしい部屋住まいに終わるかと諦めていた直弼は、世継ぎの病死により思いもよらず彦根藩主となり普代大名の上席を占めることになった、パッとしない男、老中のなかには員数合わせと評する者もいた。
直弼を大老にしたのは、「瞳も定まらぬ」とハリスに評された将軍家定であって、そうしむけたのは水戸(斉昭と慶喜父子)嫌いの大奥の女たちであり、そこに入っている紀州藩の運動の成果でもあった。
教科書的にいえば、一行で済んでしまうような歴史のひとこまをクローズアップして見ると、結論は分かっていても、これでどうやって開国にもっていけるのだろうかと、ワクワクする。
氷点は本より先にテレビドラマで観ました。
1970年代だったと思いますが、氷点、続氷点と長く続いたドラマだったと記憶しています。
まだ子供だったのでずいぶん暗いドラマだな~ぐらいしかわからず・・・ただ続氷点でデビューした島田陽子さんの綺麗だったこと!
私の姉が似ているとよく言われました^^
高校生になってから本を買って読みましたが、ふつうは原作の方が良い場合が多いんですけど、ドラマの方がいいと思いました^^
1970年代だったと思いますが、氷点、続氷点と長く続いたドラマだったと記憶しています。
まだ子供だったのでずいぶん暗いドラマだな~ぐらいしかわからず・・・ただ続氷点でデビューした島田陽子さんの綺麗だったこと!
私の姉が似ているとよく言われました^^
高校生になってから本を買って読みましたが、ふつうは原作の方が良い場合が多いんですけど、ドラマの方がいいと思いました^^
2
openさん、青函連絡船洞爺丸遭難時に自らを犠牲にしたキリスト者のことが出てくるというので図書館から借りたのです。「天皇の世紀」のあとで読もうかな。
堀田は、佐倉藩の藩医として蘭方医の佐藤泰然を招き、泰然は現在の順天堂大学の基礎づくりをしましたね。
泰然の次男が養子に出た松本良順。
拝読し、そんなことを思い出しました。
さて、孝明天皇の死は、どう描かれているかな。
泰然の次男が養子に出た松本良順。
拝読し、そんなことを思い出しました。
さて、孝明天皇の死は、どう描かれているかな。
数日前、偶然、このブログにたどり着きました。素直に、「この人すごいな」と思いました。これからも拝見したいので、リンクさせていただきました。手術が無事に済んだようなのでので、ご挨拶させていただいた次第です。
氷点ってそういうストーリーだったんだ~と思いながら読みました
TVで内藤陽子だったかが演じて話題になった記憶がありますが
私はまだ子供だったのであまり興味がありませんでした。
確かに設定が不自然ですね
TVで内藤陽子だったかが演じて話題になった記憶がありますが
私はまだ子供だったのであまり興味がありませんでした。
確かに設定が不自然ですね
> maya653さん、名作という評判もこれあり洞爺丸遭難のところも読みたくて手にとったのでした。ちょっと意外、残念です。
原作もTVも見ずに、通り過ぎてしまいました。読んでいてイライラされるとは、よほどのことですね。
> tanatali3さん、私は冗長な文章とか独りよがりの文章が嫌いなのです。
by saheizi-inokori
| 2023-01-30 13:18
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Comments(10)