「美輪明宏と「 ヨイトマケの唄」天才たちはいかにして出会ったのか」

昼と夜と交替して看護師がやってくると、挨拶して名札を部屋においていく。
遠近さんは、とおちかさんと読み、城間さんは沖縄出身、、みんな名前が違えば個性も違う。
僕の背中に薬を塗るのだって、いっぺんにどさっと掬いとって、豪快に二三度擦り付けておしまいから、ちょんちよんと指先に少しづつつけて優しく丁寧に塗る人までさまざまだ。
きのうの看護師古山さんは、向かいの老人にご飯を食べさせたり身の回りのケアを、「ごめんね、おしもきれいにしましょうね、お時間あるから浴衣も着替えましようね」と自分の大好きなおじいちゃんに対するようにやっていた。
僕のところに来たとき、それをいうと、照れたように笑って「城間さんの方が優しいです、この病棟で城間さんがいちばん優しい」「わかりませんよ、自分のおじいちゃんにもそうするかどうか」といった。
そうか、今日はゴールデンコンビだね、と僕。

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三度の食事、すべて完食、廊下をぐるぐる4200歩、合間に片足立ち、かかと落とし、また割りなどもやった。

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美輪明宏と彼の才能を愛して引き出した三島由紀夫や中村八大、永六輔、寺山修司、深作欣二たち、彼らが活躍した懐かしい時代の音楽や映画や芝居などの話。

僕が学生時代、片目で見て通りすぎたもろもろが六十年後の今、ああ、そんなことがあったのか、それは是非とも観ておくべきだったなあ、などと、出てくる音楽はYouTubeで聴きながら読み終えた。

メケメケ、シスターボーイで売り出すが、秘密の恋人赤木圭一郎の死でどん底に落ちる。
ゲイバーや銀巴里にいた頃から才能を認めてくれた三島由紀夫に、「死ぬなら愛の讃歌を完璧に歌えるようになってから死ね」と一喝されて目が覚める。同性愛にたいする偏見もあり飽きられて出番もなくなるが、自分の原点を見つめ、本当の日本の歌を歌いたいと書きためた50を越える歌をもって中村八大を訪れる。

天才ピアニスト、作曲家であるだけでなく、とうじはまだその存在の認められなかったプロデューサーとして多忙を極めていた中村は、かつての友人丸山明宏の歌にかける真摯な思いと、彼の作詞作曲した「ふるさとの空の下に」「金色の星」などに感動を受け、以後全身全霊をもって丸山のリサイタルの開催にこぎつける。

「ヨイトマケの唄」、僕が社会人になってから、飲みに行くとよく歌った唄、は「夢であいましょう」で始めて歌われたけれど、その時はあまり注目を浴びなかった。

丸山が銀巴里などで、歌い続けるうちに、歌と歌い手の力がじわじわと聴く人の胸をうち、涙を流す人が増える。
木島則夫モーニングショーで、丸山を生出演させてこの長い歌を歌わせたのが第二の丸山明宏ブームに火をつけた。

2012年の紅白歌合戦で77歳の美輪明宏がさらに「ヨイトマケの唄」を復活させる。

じつはこの歌は、五木ひろし、桑田佳祐、加藤和彦、泉谷しげる、槇原敬之なども歌っている。
著者はそれぞれの歌手とこの歌のつながりを明かす。
この歌には、音楽の自由と表現者たちの反骨精神、熱い血潮が内包されていて、それが彼らの内なる物語と共鳴したのだ。
それを聴く僕たちとも。

三島由紀夫の才能を見いだす慧眼と骨身を惜しまぬ支援が丸山だけでなく多くの天才たちを世に出したことも改めて知った(三島が好きになった)。

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「夢であいましょう」は、よく見たと思っていたけれど、ちょうど大学生の頃の番組だから、たまに親戚の家にご飯をたかりにいった土曜日の夜しか見る機会はなかったのだ、よほど心の奥に強い印象を残したということだ。
桑田佳祐が、最初はビートルズなどが自分だと思っていたら、じつは「上を向いて歩こう」などが自分の本質だと思うようになったということも、子どもの頃に姉と二人で見ていた「夢であいましよう」のせいではないかと佐藤はいうのだ。


Commented by kogotokoubei at 2023-01-29 10:58
三島との関係は知りませんでした。
この記事もスマホで書いているんですか。
凄い!
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 11:41
> kogotokoubeiさん、この本はあなたも面白いのではないかな。オススメです。
Commented by 20070707open at 2023-01-29 12:40
看護師さんの個性ってありますよね。
それが手当てに反映することもあるし、いかにも優しそうなのに雑だったり、怖そうなのに丁寧で優しかったり^^

三輪さんの感性が好きです。
新聞の人生相談の回答が的を得ていて腑に落ちます。
下世話な話ですが、ヨイトマケの唄、カラオケでは槇原敬之バージョンで良く歌いました。
さらりとした編曲でそれがよけいに歌詞を引き立たせる気がして好きでした♪
Commented by たま at 2023-01-29 18:04 x
 今から50年前、某大学の工学部土木工学科に進学した際の応援歌が美輪明宏歌う「ヨイトマケの唄」の一節、「カーちゃん 見てくれ この姿」のルメット姿…だったかと。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 19:09
> 20070707openさん、槇原敬之バージョン、スマホから聞けるかな、試してみます。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 19:11
> たまさん、へえー、そんなのもあるんですね。メットでは暑かったでしように。
Commented by doremi730 at 2023-01-29 19:18
美輪明宏さんや三島由紀夫さんは学生時代から大好きだったので、
是非読んでみたくなりました。
saheiziさんがスマホで書いていらしていることに、私もビックリ!
Commented by hanamomo60 at 2023-01-29 20:24
おばんです。
すっかりご無沙汰してしまってごめんなさい。
入院されて手術されたのですね。
経過もよろしいようで安心しました。
痛みはどうですか?

痒いのって本当にストレスになるようですね。
夫もステロイドのお世話になっていますが、薬の副作用で皮膚が薄くなってね!
食欲もあるようで安心しました。
どうぞお大事になさってくださいね。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 21:12
> doremi730さん、スマホで音楽を聴きながら本を読み、分からない言葉を調べる。ほんとに便利、若い頃に想像も出来なかったです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 21:14
> hanamomo60さん、ありがとう。
塗り薬で皮膚の色が黒ずんできました。木曜日に退院の予定です。
Commented by ppjunction at 2023-01-29 22:35
手術が無事終わったご様子で一安心ですね。
スマホはペースメーカーに影響を及ぼさないんですね。
知りませんでした。

痒いのは本当に辛いですよね。
私もベタベタに塗っています。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-30 07:29
> ppjunctionさん、そういえばそういう話がありましたね。
その頃、電車のなかでスマホを見ていたら注意する人がいて、私がそのペースメーカーだと言った、あれは失礼ではありましたがおかしかったなあ。
今は皮膚炎よりも心電図や傷口の絆創膏のところの痒みの方がきついのですよ。
Commented by rinrin1345 at 2023-01-30 09:51
病院でそんなに歩いて叱られませんか?お大事にして下さいね。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-30 09:58
> rinrin1345さん、西病棟で富士山撮ったときは叱られました。
歩ける人は歩いた方が回復も早いと思います。
Commented by tanatali3 at 2023-01-31 19:01
学生時代、土木工事の仕事をやりましたが、年配の男性や女性のみなさん、ゆっくり仕事をするので、逆にがむしゃらに働き、長続きしないことを学びました。ヨイトマケの唄はまさに丁度いいテンポなのに、反発し協調性に欠ける若造でした、あぁ恥ずかしや。(笑)
Commented by tanatali3 at 2023-01-31 19:13
なぜか、「入力に失敗しました」が表示され、投稿を拒否されてしまいます。

機械があれば読んでみたいtですね。

学生時代、土木工事の仕事は、年配の男性や女性のみなさんがゆっくり仕事をするので、逆にがむしゃらに働き、長続きしないことを学びました。ヨイトマケの唄はまさに丁度いいテンポなのに、反発し協調性に欠ける若造でした、あぁ恥ずかしや。ひとり頑張ってもしょうがないのに(笑)

Commented by saheizi-inokori at 2023-01-31 20:46
> tanatali3さん、何事もがむしゃらは長続きはしないのでしょうね。
個人的な関係でもなければ、作家は呼び捨てですよね。いくら尊敬していても。
荷風、鴎外、漱石、百間、、。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-31 20:48
> tanatali3さん、全て投稿できていましたので同じものは削除しますね。
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by saheizi-inokori | 2023-01-29 09:31 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(18)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


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