トランプ!

手術から二日目の夜明け前。

トランプ!_e0016828_08201960.jpg

太陽が!さあ、また新しい一日が始まる。

トランプ!_e0016828_08214229.jpg

土曜日、大掃除をしないで朝飯を食うなんてバチがあたりそうだ。
一見食欲はそそらないけれど、箸をつけてみると、うまい!のだ、とくに白いご飯が。
いつもあっという間に完食する。

向かいの老人は部屋の名札に赤札が貼ってあって、食欲がない。
看護師の何人かは、僕や隣のオッサンとは愛想よくタメ口で冗談を交わすけど、その老人に飯を食べさせるときには、明らかにウンザリした感じで「口開いて!たべないのー?」とやる。
「あるべき姿」からするとペケだ。
しかし、昼は一人で六人、夜は十三人の受け持ち、それも昨夜のように休む看護士が出てくるとドンドン負担が増す。
のんびり休んでと言われても、しょっちゅう看護師がきて、やれ血圧だ、薬だ、点滴だと患者も結構忙しい、それを、いやそれ以上に患者によっては、汚物の処理やらトイレの付き添いやら細々としたことも含めて何人分もやらなけれぱならないのだ。
ついウンザリした声もでてこようというものだ。

「ストーリーが世界を滅ぼす」読了。
そのエッセンスみたいなところの要約。

トランプ!_e0016828_15180976.jpg

ポスト真実の世界はエビデンスの力が奪われた世界だ。
私たちが暗黒時代から光の中へと這い出せたのはエビデンスのおかげだ。科学のおかげだ。
今、私たちは共有された現実の世界を立ち去ろうとしている。
そして真実が最も優れたエビデンスの裏付けではなく、最も優れた物語─あるいは最も力のあるものが後ろ盾となっている物語─を基準に決められる、夢の国に入りかけている。

理性的な啓蒙主義の灯が消え始め、新たな閉蒙主義の前兆が、私たちの偏見や迷信への熱中と部族主義的な暴力を好む性向を復活させようとしている。その危険性は、虚構の時代のとある偉大な英雄にわかりやすく体現されている。

これほど臆面もなく虚構で固められた人間を私たちが実際に自分たちの大統領に選んだことは、私たちが「現実に基づいた」世界を出て「ポスト真実」の世界に入った究極の象徴だ。

人々は同じ映像を目にしながら英雄と悪者が入れ替わり、物語の教訓が正反対の映画を観ている。
ある者は稀代の破廉恥で天性の嘘つきを見、ある者は真実を言える勇気ある男を見ている。
ある者は大切な規範を叩き壊す野蛮人を見、ある者は物事を正すために破壊することをいとわない反逆者を見る。ある者はアメリカの民主主義に対する最大の脅威を見、ある者は民主主義の最後の希望を見ている。

だが彼は当初は右から左までほとんど誰もが無謀なジョークだと見られていたのだ。

彼はストーリーテリングの王道である対立モデルをそっくり選挙活動に応用した。
悪役(ヒール)、騒ぎを起こして対立を煽る、礼節を無視して対立を煽り続ける戦略を取れば、ニュースメディアが必ず食いつくだろうと踏んだのだ。

彼がストーリーテラー王としてトップの座にのぼりつめたことは、ソビエトの最高指導者や北朝鮮の金王朝やプーチン、歴代のローマ教皇のそれよりもはるかに驚くべきことである。
なぜなら、彼は三権分立と報道の自由を保障する憲法の制約を受けているから、ストーリーテリングの手段を独占するすべがなく、彼の物語は本当に効力がなければならなかった。
ストーリーテリングの完全な自由市場で実際に競争し、勝ったのだ。

彼を落選させるためには、アメリカ史上最多の有権者が投票に行かなければならなかったし、
バイデンの勝利の原動力は、新型コロナの形をとった現実が彼の虚構に対して反乱を起こしたことだった。

ホワイトハウスを去った今でも、彼は私たちの生活と運命に巨大ななびかせる力を行使し、亡命中のストーリーテラー王としてアメリカの超保守層を支配し続けるだろう。

彼は、アメリカの政治家たちに現実の脆さと弱さ、心の急所を突くフィクションを全身全霊で語れば現実がいかにたやすく負けうるかを教えた人物として、後世の歴史家に記憶されるかもしれない。

ミニトランプも日本にいた。
あれは世襲のオボツチヤマだけど「美しい日本」とかいう虚構の物語で支持者をつなぎ止め、もしかすると「殉教者」に祭り上げられるかもしれない。

Commented by 20070707open at 2023-01-28 15:08
入院中とは思えないキレッキレの文章からお元気なのだと安心して読んでいます^^
病院から見る朝日、患者さんと看護師さんの様子などは確かにsaheiziさんは入院しているのだわ・・・と思いなおしています。
Commented at 2023-01-28 16:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-28 16:06
> 20070707openさん、家事をやらない分だけ暇なんです。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-28 16:09
> 鍵コメさん、ありがとう。
ご期待にそえる自信はあまりありませんが、せいぜい頑張ります。
Commented by Solar18 at 2023-01-28 18:45
こういう人がいくつもの国で権力をもっていることが怖いです。世界的な現象だということが。
手術の成功、安心しました。ゆっくり休めるといいですね。ご自愛を。
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-28 18:57
> Solar18さん、もっと絶対的な力を持って欲しいと思う人が多いということ、どうしたら良いのか?
著者は人びとが物語を憎み、抵抗せよ。
しかし、ストーリーテラーを憎まないように必死で努めよ。そして平和とあなた自身の魂のために、物語にだまされている気の毒な輩を軽蔑するな。本人が悪いのではないのだから。
と言ってます。
Commented by byogakudo at 2023-01-28 22:46
交換手術、無事に終了! よかったです。明日は日曜日、忙しい看護師さんたちの仕事も少し減って、
慌ただしい患者生活も少しゆっくりでしょう。体力を回復して日常に戻られますよう!
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 06:54
> byogakudoさん、ありがとう。
今朝も素晴らしい日の出です。
廊下のつきあたりで写真を撮っていたらスタッフの青年が「ここの朝日は素晴らしいですよね」とニコニコ笑って過ぎていきました。
Commented by kogotokoubei at 2023-01-29 07:41
この記事、スマホで書いたんですか。
凄い!
Commented by saheizi-inokori at 2023-01-29 11:37
> kogotokoubeiさん、そうです。
PCと同じように一字一字たどたどしく入力します。
動画の引用ができないとか、引用文のやり方が分からないとか不便です。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2023-01-28 08:59 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30