言葉が泣いている
2023年 01月 15日
録画で「仕事の流儀」、校正をフリーの仕事にしている、大西寿男さんのドキュメントをみた。
亡母も出版社の校正担当をしていたことがあり、「校正おそるべし」などとという本を買ってきたのを、僕も読んで校正の重要性や面白さに興味をもった。
亡母も出版社の校正担当をしていたことがあり、「校正おそるべし」などとという本を買ってきたのを、僕も読んで校正の重要性や面白さに興味をもった。
誤字脱字、句読点の位置など、いわば見かけの文章の間違いを見つけるだけでなく、内容に間違いがないかをチェックする。
大英博物館の記事にアクセスし、図書館に足を運んで、書かれている世界について知ろうとする。
数字など事実の間違いだけでなく、表現が適切であるかどうかを熟慮して、筆者に美しい字で代案を提案する。

大英博物館の記事にアクセスし、図書館に足を運んで、書かれている世界について知ろうとする。
数字など事実の間違いだけでなく、表現が適切であるかどうかを熟慮して、筆者に美しい字で代案を提案する。

文学少年だった大西さんは、はじめ校正の仕事が創造的でなく受け身であること、世の中から評価されず、出版業界でも低くみられることなどに、悩み、むなしさも感じていた。
しかし、たとえば芥川賞を受賞した作品の校正で、文章表現そのものの適切性・妥当性にまで踏み込んで、まるまる一行が説明過剰となり不要ではないかと提案する。
作者はそれを受け入れてみて、そのページの印象が一変することに気づく。
他の長編では、子ども食堂は、単に貧しい子どもの食事を提供するだけでなく、地域社会のコミュニテイを作る機能もあることに気づき、原稿に描かれた店長の言葉に蓋然性があるのかどうか、思い悩む。
私の作品の4割は大西さんが書いたという作家もいる。
おそらく担当編集者の領分にまで踏み入ったのだろう。
もちろん、大部の長編小説であっても、まず全体を丁寧に読み込むことから始めるのだ。
そうすることで、大西さんは、校正の仕事も、それはそれで面白い仕事ではないかと思うようになる。
「積極的な受け身」と彼はいう。
芥川賞を受賞した宇佐見りんに、面と向かって感謝されて涙ぐむのだ。

しかし、たとえば芥川賞を受賞した作品の校正で、文章表現そのものの適切性・妥当性にまで踏み込んで、まるまる一行が説明過剰となり不要ではないかと提案する。
作者はそれを受け入れてみて、そのページの印象が一変することに気づく。
他の長編では、子ども食堂は、単に貧しい子どもの食事を提供するだけでなく、地域社会のコミュニテイを作る機能もあることに気づき、原稿に描かれた店長の言葉に蓋然性があるのかどうか、思い悩む。
私の作品の4割は大西さんが書いたという作家もいる。
おそらく担当編集者の領分にまで踏み入ったのだろう。
もちろん、大部の長編小説であっても、まず全体を丁寧に読み込むことから始めるのだ。
そうすることで、大西さんは、校正の仕事も、それはそれで面白い仕事ではないかと思うようになる。
「積極的な受け身」と彼はいう。
芥川賞を受賞した宇佐見りんに、面と向かって感謝されて涙ぐむのだ。

訂正一字につき50銭の歩合給、一日精魂傾けてくたくたになっても4000円にしかならないこともある。
懇切丁寧な仕事が評判になって指名が殺到しても、締め切りを守れないといけないから、仕事を減らす。
そんなにしてまでと思うが、締め切りまでぎりぎり考え、調べぬくのは、そうしないと「言葉が泣いている」から、「本にすまない」からだ。
言葉の守り人・大西寿男さんのご健勝を祈る。
どうじに、いくら出版不況とはいえ、これだけの仕事に対して、あまりにも安い報酬を出版界は是正すべきだとも思った。
もとはといえば、高給(大西さんに比べて)を食んでいる編集者がもっとしっかりしていなければならない話でもある。
僕も、もう少し言葉を大事にしなければならないとも思った。

懇切丁寧な仕事が評判になって指名が殺到しても、締め切りを守れないといけないから、仕事を減らす。
そんなにしてまでと思うが、締め切りまでぎりぎり考え、調べぬくのは、そうしないと「言葉が泣いている」から、「本にすまない」からだ。
言葉の守り人・大西寿男さんのご健勝を祈る。
どうじに、いくら出版不況とはいえ、これだけの仕事に対して、あまりにも安い報酬を出版界は是正すべきだとも思った。
もとはといえば、高給(大西さんに比べて)を食んでいる編集者がもっとしっかりしていなければならない話でもある。
僕も、もう少し言葉を大事にしなければならないとも思った。

夜はまたスマホの落語。
扇橋「鰍沢」「ねずみ」扇遊「不動坊」がよかった。
百栄や喬太郎の新作は聞き取りにくく、話もつまらなく、睡眠用ではないなあ。
扇橋「鰍沢」「ねずみ」扇遊「不動坊」がよかった。
百栄や喬太郎の新作は聞き取りにくく、話もつまらなく、睡眠用ではないなあ。
観ました。
言語(日本語)として正しいことと、言いたいことが伝わるかどうか、は別問題で、そこでいつも悩みます。凄いな、と思いました。
言語(日本語)として正しいことと、言いたいことが伝わるかどうか、は別問題で、そこでいつも悩みます。凄いな、と思いました。
3
へぇーっ、校正者がそこまで云うのか、と正直驚きました。むかしの文学者なんかにそんなことを云ったら、張り倒されそうですけど。(笑)
そういえば、かってはまともな新聞・雑誌では、誤字脱字は非常に稀でした。今はパソコンの変換ミスのような初歩的な誤りから、どうも用法がおかしい、というようなものまで、けっこう気が付きます。時代ですかねぇ。
そういえば、かってはまともな新聞・雑誌では、誤字脱字は非常に稀でした。今はパソコンの変換ミスのような初歩的な誤りから、どうも用法がおかしい、というようなものまで、けっこう気が付きます。時代ですかねぇ。
> tsunojirushiさん、作家の言いたいことを理解・感得する能力が必要なんですね、ほんとにスゴイと思いました。
校正者がそこまで手出しするとは知りませんでした。仕事をしていた頃はとてもお世話になっていましたが。まあ、文学じゃなかったからかな。そこまでするのなら、素晴らしい能力が必要ですね。
そこまで作者の想いを読み取り校正する方は、そう居ないのでしょうね。英語の翻訳家の話しを思い出し、相通じるところを感じました。ビデオを探してみます。
それと、ペースメーカーの手術前に無理なさらぬよう体調管理にご留意ください。
それと、ペースメーカーの手術前に無理なさらぬよう体調管理にご留意ください。

私も見ました。
こんな地味で、表に出ない、報われない、でも精神をすり減らす仕事をしているプロフェッショナルがいらしたとは。何だか彼の誇りよりも気の毒になってしまった番組でした。
こんな地味で、表に出ない、報われない、でも精神をすり減らす仕事をしているプロフェッショナルがいらしたとは。何だか彼の誇りよりも気の毒になってしまった番組でした。
> tonaさん、彼は言葉の職人ともいえるのでしょうが、物づくりの職人にも仕事のわりに経済的には恵まれない人がいるのでしょうね。
白痴的番組を作るメデイア関係者などが不当に高い報酬を得ている反面で。
白痴的番組を作るメデイア関係者などが不当に高い報酬を得ている反面で。
私も観ました。
若い頃校正の通信教育をやっていたことがあるのですが
その時思っていた校正と随分違った印象でした
今どきはオンラインでのやり取りも増えて文字によるコミュニケーションが多いので
尚更言葉の使い方に敏感にならざるを得ない気がします
若い頃校正の通信教育をやっていたことがあるのですが
その時思っていた校正と随分違った印象でした
今どきはオンラインでのやり取りも増えて文字によるコミュニケーションが多いので
尚更言葉の使い方に敏感にならざるを得ない気がします
> maya653さん、仰る通りですね、それなのに乱暴になって来たようです。絵文字でごまかしたりして。
by saheizi-inokori
| 2023-01-15 12:15
| よしなしごと
|
Comments(11)