「おから」が生んだ反動政策
2022年 12月 30日
社会主義の栄光・正当性の証としてのベートーベン、金儲けの手段としてのベートーベン、人や国は自分の都合のよいようにベートーベンを利用する。
彼の遺した会話帳を改ざんする人もいた。
駄洒落が好きで、酒飲みで、女好き、惚れっぽい、、そして息子に去られる孤独なベートーベン。
きょうは改めて弦楽四重奏14番を聴くことにしよう。
僕たちが聴いているベートーベンは、彼の作曲したものとは異なった曲だということは、知らなかったなあ。
子供の頃の年末は、母の手伝いをしながら、五球スーパーラジオで「映画音楽ベスト〇〇」とか「第九」を聴くのが楽しみだった。
夜だったか落語「芝浜」を三木助がやるのを聴いた覚えもある。
酒飲みで貧乏な魚屋が、心を入れ替えて一心に働いたために、ゆとりが出て来て、新しい畳をいれて、門松も飾る暮らしになったのを、わくわくして聴いたものだ。
職もなくひたすら市井にあって学問にうちこんでいた荻生徂徠は、その貧窮を見かねた豆腐屋がまいにち持ってくる「おからのにつけ」で食いつないでいたが、やがて柳沢吉保に見いだされて儒者として仕える。
おからのお礼で豆腐屋は10両をもらい火事で焼けた店の改築もしてもらい、芝増上寺への出入りも許される、という徂徠の雌伏の時の人情談だ。
その徂徠は、白石の改革を次々に反転する享保の改革(吉宗)の時代に多くの書籍を著し、政策提言も行う。
徂徠の「立替」の第一は「人を地に着ける」、人間関係を固定すること。
人びとの流動を制限し、江戸と外を明確に区切り、武家地に木戸を設け、区域ごとに肝煎りを決める。
戸籍を整備、民の一人ひとりを把握、国内旅行も道中切手(パスポート)を必携とする。
城下町集住して、貨幣経済化・商品経済化・市場経済化にあった武士たちを知行所に移住させて物納や自給自足によって貧窮から脱却させようとした。
第二は「礼法ノ制度」、具体的には、身分に対応して、衣食住・冠婚葬祭の儀式・行列まで、すべて何をどう使うのかを政府が決めてしまう。
有限な資源の内、少ない良質な物を少ない高い身分の人に、多い悪い物を多い身分の低い人に使わせる。
そうすることで有限な資源を過不足なく、正しく不平等に分配・消費できる。
あわせて、身分の区別を明白に表示できるために上下の関係も安定する。
古聖人の治に制度と言う物を立て、これを以って上下の差別を立て、奢を抑え、世界を豊かにするの妙術也反進歩・反発展・反成長であり、反都市化・反市場経済化にして、反自由、反啓蒙、反民主主義として一貫している。
徂徠は、有限な天地で、市場経済による無限の「発展」が可能だ、などとは信じないのである。そして、自由に流動して浅い人間関係しか持たず、それでいて悪事に走らず秩序を保てるほどに人間は立派だ、とも信じないのである。我々は、それにどう反論できるのだろうか。
と渡辺は問いかける。
徂徠の政策提言は実行されなかったのだ。
耳が聞こえないことが、会話帳を残したのですね。
亡き父がクラシック好きで、毎年テレビでニューイヤーコンサートを聴いていたことを、この時期になると思い出します。
いいですねぇ。
音楽家の伝記はほとんど読むことがないのですが、ベートーヴェンだけは例外です。
ひとたび世評でも栄光の絶頂(ゲーテと邂逅したころ)に達したその時に、一生の恋に破れ、スランプに陥ってウィーンの人からも「彼はもうだめになった」と噂されます。苦難の時を経て、ミサ・ソレムニス、第9交響曲で復活するのですが、彼が本当に死の直前まで書いていたのは弦楽四重奏曲、第14番に限らず後期弦楽四重奏曲群はどれも不滅だと思います。