映画館に行く
2022年 11月 03日
秋晴れの(世間では)休日の朝、無粋なミサイル飛来を知らせる放送が延々と続く、どのテレビチャンネルもラジオも一色に塗りつぶされて、壊れたように同じ、「政府は」から始まって「発表しました」までの間がやたら長い文章を読み上げる。
一色に塗りつぶされるのが、僕の想像の戦争中の空気みたいで、息苦しさを感じてスマホのSpotifyをつけて掃除をした。



これから遊ぶぞ、というような若人たちに背を向けて帰宅、キムチの豚シャブを食って寝た。
一色に塗りつぶされるのが、僕の想像の戦争中の空気みたいで、息苦しさを感じてスマホのSpotifyをつけて掃除をした。

衝動的に映画が見たくなって「アムステルダム」の上映館を探してみたら、渋谷のシネ・クイントが、14時過ぎからの回がガラガラ、一番後ろの席を予約してバスに乗る。
「苦しい、苦しい」と手を顔にあてて壁に寄りかかっている、初老の婦人、その後ろの席から、低い声で宥めるように何かを言いながら、夫人の肩をもんだりする、これはその夫だろう。
三茶で降りるまで「苦しい」は、間欠的に続いた、続く割に切迫感が感じられない。
降りるときに、別の女性が「大丈夫ですか」と訊くと、男が苦笑いをして大丈夫なんですといい、夫人の肩を「ほらみろ」という感じで軽く揉んでみせる。
バスを降りた男がかがんで靴の紐を直しているのを、その背中に覆いかぶさるようにしている女の姿をみた。
難儀やなあ。
「苦しい、苦しい」と手を顔にあてて壁に寄りかかっている、初老の婦人、その後ろの席から、低い声で宥めるように何かを言いながら、夫人の肩をもんだりする、これはその夫だろう。
三茶で降りるまで「苦しい」は、間欠的に続いた、続く割に切迫感が感じられない。
降りるときに、別の女性が「大丈夫ですか」と訊くと、男が苦笑いをして大丈夫なんですといい、夫人の肩を「ほらみろ」という感じで軽く揉んでみせる。
バスを降りた男がかがんで靴の紐を直しているのを、その背中に覆いかぶさるようにしている女の姿をみた。
難儀やなあ。

時間があったので、ロフトでトイレに入り、西武の本屋でmaruさんのお勧め「世界インフレの謎」を買った。
西武とロフトの間の「シネ・クイント」への入り口に面して、本屋があったはずなのに、ミニマルな内装のカフエに変わっている、ちょっとそそられたが、水分は御法度。
「映画をみたい」というのは、映画そのものを楽しみたいという気持ちだけでなく、「映画館に行く」、その気分を恋しく思ったのだ。
ちょっとの間、この世界から別れをつげて、ちがう世界に遊ぶ。
そのために、猥雑な小路を歩いて行く。
なんとない背徳感も懐かしく甦るのは、中学の頃一人で映画を見ることを禁じられていたトラウマだけではなく、快楽を求めて暗闇に忍び込む行為にあるのだろう。

西武とロフトの間の「シネ・クイント」への入り口に面して、本屋があったはずなのに、ミニマルな内装のカフエに変わっている、ちょっとそそられたが、水分は御法度。
「映画をみたい」というのは、映画そのものを楽しみたいという気持ちだけでなく、「映画館に行く」、その気分を恋しく思ったのだ。
ちょっとの間、この世界から別れをつげて、ちがう世界に遊ぶ。
そのために、猥雑な小路を歩いて行く。
なんとない背徳感も懐かしく甦るのは、中学の頃一人で映画を見ることを禁じられていたトラウマだけではなく、快楽を求めて暗闇に忍び込む行為にあるのだろう。

冒頭の二十世紀フォックスのロゴと「タンタカタン、タンタカタン、、」も久しぶりだ。
1930年代のニューヨーク、復興をよそに多くの負傷した復員兵を奉仕的に診察し治療に当たる、自らも戦争で片目を失いコルセットをつけているユダヤ人医師。
彼と戦場で親友になった黒人弁護士が緊急に連絡してきたのは、彼らの戦場の指揮官の死体を解剖してくれという、その将軍の娘の依頼の件だ。
今までに遺体の解剖は、二度だけ、その二度目というのは忘れてきた鉗子を取り戻すため、という医師は執刀をテキパキ動く黒人女性医師のアシストにまわって、開いてみた胃袋からは不自然な毒薬らしきものが見つかり、将軍は殺されたらしい。
依頼した娘は、医師と弁護士の目の前で突き飛ばされて車に轢かれて死ぬ。
彼と戦場で親友になった黒人弁護士が緊急に連絡してきたのは、彼らの戦場の指揮官の死体を解剖してくれという、その将軍の娘の依頼の件だ。
今までに遺体の解剖は、二度だけ、その二度目というのは忘れてきた鉗子を取り戻すため、という医師は執刀をテキパキ動く黒人女性医師のアシストにまわって、開いてみた胃袋からは不自然な毒薬らしきものが見つかり、将軍は殺されたらしい。
依頼した娘は、医師と弁護士の目の前で突き飛ばされて車に轢かれて死ぬ。
メリメリと骨が折れる音が聞こえるような映像、蓋のない棺桶に寝かされた将軍の遺体といい、その皮を剝がれた内蔵といい、矢継ぎ早にグロの連続だ。
突き飛ばした犯人の「あいつがやった」という声で医師は殺人犯として警察に追われる羽目に。
医師と弁護士との二人を戦場で介護した看護婦、体から取り出した弾丸等の破片を集めて、それで芸術作品を作るという変わり者だが、目の大きな魅力的女性。
その三人はお互いを終生守り合うという誓を結んだ仲となる。
医師と弁護士との二人を戦場で介護した看護婦、体から取り出した弾丸等の破片を集めて、それで芸術作品を作るという変わり者だが、目の大きな魅力的女性。
その三人はお互いを終生守り合うという誓を結んだ仲となる。
戦後彼らがアムステルダムで自由を満喫した日々がいい。
その三人が、自らの潔白を明かすために将軍とその娘の殺人事件の謎を追いかける、まあ、ドタバタと言ってもよいだろう、劇画みたいな映画だ。


独裁政権で世界を支配することを目的にした陰謀、現実にあった事件をもとにしている(「ほとんど実話」と前置き)、統一教会に思いが飛ぶ。
飽きることなく(途中で一度トイレにたったほかは)、一気に見終わった。
ロバート・デ・ニーロは、出てくるだけで存在感があるな。

飽きることなく(途中で一度トイレにたったほかは)、一気に見終わった。
ロバート・デ・ニーロは、出てくるだけで存在感があるな。

映画館を出てくるときの感じはあまり好きではない。
入るときには、手つかずの晴れた空と空気だったのが、薄暗い夕方の、汚れた都会に変わって、時間を無為に過ごしたような(昼寝から起きたときのような)策莫とした感じになる。
入るときには、手つかずの晴れた空と空気だったのが、薄暗い夕方の、汚れた都会に変わって、時間を無為に過ごしたような(昼寝から起きたときのような)策莫とした感じになる。

これから遊ぶぞ、というような若人たちに背を向けて帰宅、キムチの豚シャブを食って寝た。
>これから遊ぶぞ~の感じ、忘れかけています。もう一度言ってみたい、笑
2
> 20070707openさん、「これからドライブだぞ~」ならしょっちゅうではありませんか。
ニューヨークの前の名前がオランダ統治時代のニューアムステルダム?
アムステルダムの運河を訪れたのはもう20年前の会社費用?
365日ただ水を汲み続けないと国土が喪失する理不尽を思い知ったかと・・・。
アムステルダムの運河を訪れたのはもう20年前の会社費用?
365日ただ水を汲み続けないと国土が喪失する理不尽を思い知ったかと・・・。
saheiziさん、映画を私も観ました。よく作られた作品で満足しました。
やだ~、そうですね。
そう意味では変わって言いませんね、笑
そう意味では変わって言いませんね、笑
両親とカミさん4人で、映画やローカル劇団を色々と観に行ったものですが、コロナと高齢化で一変しました。
鑑賞後、映画の世界から現実に引き戻される戸惑いですかね。陸続きはやくざ映画。肩で風切る観客にニヤりとしたものです。
デニーロは健さんと通じるものがあるのでしょうね。いい役者です。
鑑賞後、映画の世界から現実に引き戻される戸惑いですかね。陸続きはやくざ映画。肩で風切る観客にニヤりとしたものです。
デニーロは健さんと通じるものがあるのでしょうね。いい役者です。
> たまさん、いいところですね。私も一泊で行きました(通過)。
> k_hankichiさん、友情、音楽、抵抗、自由、反差別、よかったですね。
> 20070707openさん、いつも「俺も連れてって~」と思いながら拝見しています^^。
> tanatali3さん、両親と奥さんの4人で、いいですね。
アメリカの小説なんかに出てきそう。
私は母と一緒に見たのは中学生のときに「喜びも悲しみも幾年月」くらいかな。
ヤクザ映画や西部劇をみて放浪の無頼になったような気分で歩く、あるあるです。
アメリカの小説なんかに出てきそう。
私は母と一緒に見たのは中学生のときに「喜びも悲しみも幾年月」くらいかな。
ヤクザ映画や西部劇をみて放浪の無頼になったような気分で歩く、あるあるです。
by saheizi-inokori
| 2022-11-03 12:30
| 映画
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Comments(16)