佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」

ゆうべはいつもの時間にねそびれたら、頭が冴えて三時頃までねむれなかった。
テキメンに血圧150(いつもは130)、規則正しく!だな。

きのうもちょっと贅沢をして、うどんを外で食った。
佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」_e0016828_17403197.jpg
志ん輔が喰い損ねた1100円の讃岐うどんにつられたのだ。
ぶっかけが600円、あと150円出すと海老天が二つ付く日替わり饂飩なのだが、そんなに食えない。
図書館で予約した本を借りて、久しぶりの呑川ちかくのカフエで読む。
佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」_e0016828_17430187.jpg
きびきび働く若い男の子が腰にでかい腹巻をしている。
たぶん腰痛だろう、早いとこ直せよ。
佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」_e0016828_17172740.jpg

借りてきた本「Nさんの机で」は佐伯一麦の最新刊、「ものをめぐる文学的自叙伝」という副題がついている。

彼がいろんな労働をしながら作家としての自立するまでのさまざまな苦労が、使ってきた「もの」の、その使い方を通して語られる。
さながら作家の舞台裏や創作の秘密の大公開、その凄さに驚かされ、ときに愉快でもある。

机、筆記具、ワープロとパソコン、電鍵、流行歌、煙草、スーツケース、酒、まで読んだ。
ちょうど三分の一、早く読み終えるのが惜しくて、途中で切り上げて洗濯物をしまい込んだ。
膝の上でまったりしていたサンチが、「え?もう」と不満げに降りた。
佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」_e0016828_17440361.jpg
僕より一回り以上若い作家なのに、尊敬できる、親しい先輩のような感じがする。
ストイック!そして自分がやりたいことをひたむきに貫く。
作家になるためには大学に行く時間が惜しいと言って高校卒でフリーのルポライターの共同事務所で働く。
「ともかく一週間以内に原稿を50本書いてこい」というのが採用試験だった。
その頃のカッコいい先輩に影響されてチェリーを吸った、「ぎゃっと叫びたくなるような」18歳から22歳までの4年間がゴーリキーの言うところの”私の大学”だという。

そういえば、僕もチェリーばかり毎日5箱も吸っていた頃があった、出かける時は上着のポケットの両側にひと箱づつ入れて歩いた、「ギャッと」ではないが、ちょっとほろ苦い思い出のある中年の入り口だった。
佐伯一麦の舞台裏 「Nさんの机で」_e0016828_17360469.jpg
佐伯の書くそれぞれに、僕自身の思い出が喚起されて、そのことの意味をしみじみと反芻させてくれる。

佐伯の「電気工もの」が、好きなのは、駅の仕事に通じる、一日のことは一日で足れり的潔さがありながら、一つひとつのことをないがしろにすることを許されない仕事であるところ、辛くてもそういう仕事を単なるカネのためだけではないものと捉える彼の労働観に共感できるからだ。

ヘミングウエイの
もし作家が、自分の書いている主題を熟知しているなら、そのすべてを書く必要はない。その文章が十分な真実味を備えて書かれているなら、読者は省略された部分も強く感得できるはずである。動く氷山の威厳は、隠された八分の七の部分に存するのだ。
という、いわゆる「氷山の理論」。
それは、無名時代のヘミングウェイが、書き溜めた原稿を入れておいたスーツケースが盗まれたことにショックをうけてしばらく書くことから遠ざかっていた間に創出されたという、高見浩の説を紹介した文章のかっこ付きの付けたりに
ちなみに、習作を書いていた頃の私も、この理論にすっかり影響された短編を書いたものだった。それはともかく、このところ饒舌に言葉を積み重ねるタイプの新人の作品が目立つ中で、ヘミングウェイあるいは小川国夫のような簡勁な文体による新人の登場も待たれるところだ。
と書いている佐伯の簡勁な文体も好きなのだ。

Commented by ikuohasegawa at 2022-09-14 10:57
「Nさんの机で」読みたくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-14 11:10
> ikuohasegawaさん、これは気に入られるかと思いますよ。
Commented by rinrin1345 at 2022-09-14 18:53
チェリーですか、タバコは吸いませんが昔チェリーという車に乗ってました。関係ないけど。
Commented by fusk-en25 at 2022-09-14 23:23
暴露記事になるか。小説になるか?
ですね。
Commented by kogotokoubei at 2022-09-15 08:00
佐伯の電気工の仕事、そして、佐平次さんの駅の仕事は、私の飲食店のアルバイトにも共通するものがあるように思います。
一日で足れりの潔さ、しかし、一つ一つないがしろにできない仕事。無事終えた時の心地よい汗。
これは、頭脳と神経を駆使し続ける会社仕事では、味わえないんですよね。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-15 09:25
> rinrin1345さん、日産でしたか、コマーシャルにかすかな覚えが、、。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-15 09:27
> fusk-en25さん、本書のこと?じゃないですね。
これはいわばエッセイ集みたいなものです。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-15 09:28
> kogotokoubeiさん、心地よい汗とともに飲みほす一杯のビールの味!
ですね^^。
Commented by fusk-en25 at 2022-09-15 20:03
すみません。言葉が足りなくて。
氷山の理論を私も心したいと。
なんでも書いていい。。じゃなくて(書いてもいいのでしょうが)
いかに咀嚼したかの方に重きを置くような。。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-15 22:08
> fusk-en25さん、私も冗長なムダの多い文章を書くきらいがあるので肝に銘じています。逆に独りよがりで意味の通じない文章も書くこと、その方が多いかもしれないです。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2022-09-14 09:35 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31