芋煮会
2022年 09月 08日
山形は牛肉で醤油味、宮城は豚肉味噌味、福島は両方入れたかな、よく覚えていないけれど、仙台見習いだったからなんども食べた。
忘れられないのは、猪苗代駅の助役をしていたとき、磐梯高原スキー場の草っぱらで、食べた芋煮。
もろもろの支度を下から担ぎ上げたのか、スキー場で調達したのか、夏の終わりの青空のもとで、猪苗代湖を眼下に眺めて、高原をわたる涼風に吹かれて非番の駅員たちで囲んだ鍋のうまかったこと、楽しかったこと。
もしかしたら、三か月の見習を終えて帰京する僕の送別会だったかもしれない。
一升瓶を何本か空にして、ひと夏を共に暮らした人たちと、へんな方言をまぜながらいろんな思い出を語り合った。

会津磐梯山は宝の山よ~、民謡も歌って、麻雀をやる人たちもいた、青空麻雀だ。
呑みつかれて草の上にあおむけになると、まっさおな空を白い雲が流れていった。
仙台の独身寮の仲間たちと仙山線の面白山にも行った。
駅を降りると、ずらっと芋煮セットが売られている。
でも僕たちは具材は自分たちで持っていたような記憶がある。
ここも冬はスキー場になるところだった。
河川敷でやったこともなんどかあるのだが、それが誰とどこでだったかが、思い出せない。
楽しくてうまくて楽しかったことだけが忘れられない。

ところが、あんな簡単なものでも、たとえば里芋を先に茹でておくというようなレシピがあるのに、みんなは知らないし、僕も昔のこととてきちんと教えられない。
いくつかの鍋のどれも思っていたあの味にはならなかった。
それでもみんな「うまいうまい」と言ってくれて、楽しいことだけは昔通りだった。
僕は東京駅の構内に地方の鍋を取りそろえた飲食店をつくり、そのひとつに「芋煮鍋」を考えていた。
そういう店は実現できなかったのは残念だった。
もっとも、芋煮会はやはり青空の下で、たくさんの仲間とワイワイやるのがうまいので、部屋の中で小ぎれいに出されたものを、大人しく喰ってもあのうまさ・楽しさは味わえないのだ。
ああ、もう一度懐かしい仲間たちと芋煮会をやりたいなあ。
こんやの夢でみることができるかな。

冷凍庫のない時代、保存の難しい”里芋”を手っ取り早く費消するには芋煮会は格好だったのかもしれませんんね。
盛岡の北上川河川敷では、豚肉に味噌、そしてたっぷりのネギと油揚げだったかと。

なんとかして只見線には乗り納めしたいと思います。もう車も免許証もありませんが。