間違いだらけ

「黄金虫変奏曲」の「私」・司書・ジャン・オデイは「歴史上の今日」という掲示を毎日書いている。
いろんな出来事のどれを引っ張り出して、どんなコメントをつけるのか、それが物語の進行の装飾音にもなっている。
利用者のいろんな質問に対してどんな気の利いた返答をするのかも、その一つで、それだけでも読むのが楽しい。

で、僕の「歴史上の昨日」、そのものを書く、まあ、ブログってそれがもともとの始まりなのだが。
間違いだらけ_e0016828_18523042.jpg
きのうは早めに納豆を食って三茶の歯医者に行った。
バスの中で、「リンゴのすり下ろしたのが赤くなったのは酸化したのだから食べないほうがいい」という小母さんの言葉に「そういうことを考えたこともなかった」と真面目に感心する小母さん。

13時の予約の30分前に到着したら、前の患者の治療の真っ最中、この先生は昼飯を召し上がるのだろうか。
間違いだらけ_e0016828_18532480.jpg
待合室に座ったら、ふと気がついたのが、この間「黄金虫変奏曲」の紹介のなかで、「9月26日の2週間後、十一の月の十一の日の十一の時刻」とあるのは誤植か誤訳ではないかと書いたのに、mitch_haganeさんがコメントを下さって「原文でもそうなっている、どう考えても6週間後ですよね」と教えてもらったのに対して、僕はブログの本文通りに「4週間後だと思う」と返事をしたことについて、あれ、俺は11月を10月と勘違いしていたこと。
なんたるボケと、その旨を追加のコメント返信した。
それだけでも、小説の中でジャンの犯した日付の勘違いと重なった僕のミスで、客観的にみれば面白い(バカバカしい)出来事なのだが、今この文章を書いていて気づいたのは、10月だったら2週間後が正しいので、僕の「4週間後」とは一体何ごとだということ!
26.27.28...11と指おりして2週間とたしかめ、戦争の終わったのを11月11日であるのも確かめていながら、何で4週間?どこからでてきたのか、ブログのネタにするほど確信してしまった自分が怖い。
シェイクスピアも匙を投げるようなマチガイの喜劇、悲劇か。

ところが、歯科医院の待合室でリュックで担いでいった780グラムの黄金虫を読みだしたら、ジャンは「歴史上の今日の出来事」に「1752年9月3日が9月14日までなくなった」ことを書くというのだ。
大英帝国がグレゴリオ暦を採用したからだ。
あったりなかったり、抜いたり抜かれたり、僕と作中の人物たちは時をめぐってフーガを奏でているようだ、道化師のフーガを。
そしてもう少し読み進めると、ジャンが心惹かれる謎の男の一人・フランクは「その日の出来事」を新聞から切り抜いてシュビッターズ風のコラージュを造るというのだ。
彼は世界の出来事のコラージュ。
シュビッターズ風というのはスマホで調べた。
間違いだらけ_e0016828_18312463.jpg

この小説もある意味ではシュビッターズ風コラージュの趣もあるな。

診察で、下の奥歯が、物をかむと痛いと言ったら、それは虫歯、かぶせた中が使い物にならなくなっているのだ、とおっしやる。
残っている歯を活かすか、いっそ抜いてしまうか、難しい判断だが次回にかぶせたものを取ってから決めよう(主体は僕)。
シニカルな物言いを面白いと感じてこっちもジョークで返せるゆとりがなくて、いささかギスギスした言い方をしたら、少し柔らかな調子になった、柔らかになっても虫歯は治らないのだ。
要するに今までの歯医者の選択を間違っていたということ、だけどほとんどの人が間違っているのかもしれない、そう思い直して、ざまあみろだ。
間違いだらけ_e0016828_18595645.jpg
桜新町で2時ちょっと前、バス停の近くのカフエに入る、せっかく重い本を持って行ったのだから、外で読まなくちゃ。
間違いだらけ_e0016828_19030979.jpg
誰もいなかったのに、しばらくしたら、白髪の男が入ってきて、赤ワインをすすりながら文庫本を読みだした、お代わりもしてる。
腹立たしいのはそれだけじゃなくて、白髪がたっぷり襟足まであること、ブルーのポロシャツがさりげなくおしゃれなこと。
目を転じると向こうのソファの席に夫婦と思しき男女が、今しもビールのジョッキを傾けるところだ。
女の方がグイグイと飲んで「ああ~っ」とコマーシャルみたいな嘆息を漏らす。
本を読みながら、ときどき見るともなく(なんせ顔をあげると見えちゃう)見ていると、なんだかいろいろ食っている、そしてソファに背中をあずけてずるっと前に足を突き出した。
今まで見えなかった下っ腹のポッコリが強調される、ああ、見たくはなかった。

スキヤキソングをモダンジャズのフアルセットで歌うBGMは悪くない。
水をお替りして2時間、楽しい本の時間でした。

Commented by mitch_hagane at 2022-09-06 09:27
おはようございます。

>指おりして2週間とたしかめ、戦争の終わったのを11月11日であるのも確かめていながら、何で4週間?どこからでてきたのか…

あれっなんで4週間と書かれているのかな、とは少し疑問に思ったのですが(笑)、まぁたんなるイージーミスであろうと特に指摘はしなかったのです。

saheizi-inokoriさんがどんどん新しい小説にも取り組まれているのに、刺激を受けました。今度手にしてみようと思います。
Commented by baobab20_z21 at 2022-09-06 10:57
間違いに次ぐ間違い、あるあるですねw
人生は、悲喜劇のコラージュのようでもあり、、
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-06 14:58
> mitch_haganeさん、何が「確かめて」ですか!不思議と言えば不思議、老化の自然といえばそうなのか、お恥ずかしい次第でした。
人に「俺はちゃんとやった」と頑張るときにもこんな間違いをしているのかもしれないです。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-06 14:58
> baobab20_z21さん、見方によって喜劇だったり悲劇だったり。
Commented by tona at 2022-09-07 13:41 x
780g・・私の手提げと同じ。
軽くするため手製の布製で財布、スマホ、その他この頃もしもを考えて諸々入れてこの重さ。
それが本の重さですか。凄い本ですね。
「黄金虫変奏曲」が題名なのですね。
読むのですから凄い頭脳と体力も要りますね。
医者を間違えて失敗が私も多いです。
Commented by saheizi-inokori at 2022-09-07 18:07
> tonaさん、頭脳はともかく腕力と根気が必要です。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2022-09-06 08:10 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(6)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31