ワクチン打って一葉に
2022年 07月 02日
モデルナ、がらがらでスタッフだけが二度も三度も書類のチエックやら、案内でVIPになったような感じだった。
いつもは注射をする医師に「お酒は?」と訊くと「やめた方がいい」と言われるのだが、今回は黙ってスルーして、帰りに渡された注意書きを読んでいたら、小さな字で「過度の飲酒」は避けるようにとあった。
せっかくホヤとかポークステーキなどを用意してくれたのに、呑まない手はない。
日本酒は我慢して缶ビール三本は、過度どころか過小ではあったが、満足した。
夕方くらいから肩が重くなり、夜も左肩を下にすると寝にくかったが、今はもうほとんどなにもない。
洗濯も今日はなし、こういう開放的な気分で朝寝をしたのはいつ以来だろう。
ワクチン様様である。
世田谷区はワクチン接種のために2千円のタクシー券を送ってくれたのだが、これはもっと体調が悪い時とかに使うのだ。
近所のカフエで読んだのは、樋口一葉の「にごりえ」「十三夜」「大つごもり」「わかれ道」の短編四編。
都電に乗るために歩いていく途中で小さな公園があったので、寄ってみたら池があって、向かいの畔に気象予報士の倉嶋厚さんがいたのを見つけて、「ほら、あそこ」と指をさして教えたら「人に指をさしちゃダメでしょ」とたしなめられた。
僕は展示されたもろもろに集中できず、妻のことだけを心配していた。
妻と一緒にどこかに行くことが少なかった、その最後が一葉記念館だった。
そんなことがあったので、なんとなく樋口一葉を読むことはなかったのだが、ブログのコメントで薦める方があって、心が動いて図書館に予約したのだ。
デカ文字文庫といって14ポくらいだろうか、とても読みやすい。
活字が読みやすいと文章の意味も読み取りやすくなる。
それでも、古い言葉などをスマホで調べる楽しみもあるのだ。
そのお力の貧しい子供時代のエピソードに今の僕も泣く。
崩壊された家の妻と子の悲惨さにも。
両親のため、弟とのために冷酷な夫と離別することをあきらめた「十三夜」のお関、貧しい実家の親の借金のために吝嗇な主家の金をくすねる「大つごもり」のお峯を励ましたくなる。
「わかれ道」の捨て子が大きくなった吉がいとしくてならぬ。
簡潔な、それでいて生き生きとした情景描写、テンポの良い展開、さいごに読者の、主人公たちのその後の人生に対する想像をかきたてる巧みな語り口。
う~む、スゲーな。
「たけくらべ」ももう一度読まずばなるまい。
缶ビール三缶は、過少かな^_^