育ち 「詩人 金子光晴自伝」
2021年 12月 21日
早朝から洗濯をして、所用で外出。
早く済んで、せっかくだから少し足を延ばして日比谷公園でも歩いてみようか、、という元気が出てこない。
せめてもと、早めのランチで天ぷら蕎麦をおごった。
学生時代にアルバイトの金が入ったりすると食った、その記憶がいまだに天ぷら蕎麦のご馳走感として残っている。
ふだん天ぷらを食うことはないから、汁がしみた衣がうまい。
プリっとしたエビもいいが、天ぷら蕎麦は衣と菜っ葉がうまいのだ。
そしてこの姿!簡潔にして非日常的豪華だ。
しょっぱい汁は、あの頃はみんな啜ってしまったが、今はその匂いを嗅ぐだけで十分、ほとんど飲まない。
蕎麦湯に少し垂らすくらい。
かつ丼と蕎麦のセットみたいなのに比べると満腹感に乏しい。
そこがご馳走なのだ。
電車の中で、乳母車に乗ったかわいい子にママがビスケットみたいなものを与えている。
かじったのを受け取った、また口に入れてやる。
いちいち手を消毒するわけではない。
電車のなかではダメと躾ないのか。
泣くのが困るのだろうか。
(昨日の散歩、富士山)
早く済んで、せっかくだから少し足を延ばして日比谷公園でも歩いてみようか、、という元気が出てこない。
せめてもと、早めのランチで天ぷら蕎麦をおごった。
学生時代にアルバイトの金が入ったりすると食った、その記憶がいまだに天ぷら蕎麦のご馳走感として残っている。
プリっとしたエビもいいが、天ぷら蕎麦は衣と菜っ葉がうまいのだ。
そしてこの姿!簡潔にして非日常的豪華だ。
しょっぱい汁は、あの頃はみんな啜ってしまったが、今はその匂いを嗅ぐだけで十分、ほとんど飲まない。
蕎麦湯に少し垂らすくらい。
かつ丼と蕎麦のセットみたいなのに比べると満腹感に乏しい。
そこがご馳走なのだ。
かじったのを受け取った、また口に入れてやる。
いちいち手を消毒するわけではない。
電車のなかではダメと躾ないのか。
泣くのが困るのだろうか。
この前、バスを待っていて、小さな女の子が、ビスケットみたいなのを取り出して食べているのをみて、無性にお菓子が食いたくなって、「それ一つわけて頂戴」と言いそうになった。
我慢したけどね。
この類の「食いたい」という衝動は、ほんとの飢餓に根差したものではないから、一分もしないで消え去る。
衝動を抑えることを教えてくれた母に感謝だ。 開高健にそそのかされて金子光晴の「詩人 金子光晴自伝」を読み始めた。
なかなか読みでがあってまだ半分くらいだ。
赤んぼのときに清水組の支店長の18歳の妻に一目ぼれされて養子として育つ。
江戸馬喰町の一町四方もある大きな旅館で育った義父は、旅館が没落したのちに清水組に入る。
JRの社長をしていた住田さんが、清水建設のことを清水組となにやら見下げるような言い方をしたことを思い出した。
インチキ骨董商に乗せられて土蔵一杯の骨董を集め、一中節の家元をペットにしていた養父の元に出入りする者に風俗画家小林清親(たしか上野鈴本の番組表の表紙を描いていなかったか)のところに連れていかれて日本画家という前途があるようにも見えた。
上流社会の子弟がいく暁星中学に入ったが、
古い封建社会にあった草草は、嫌悪と悲しみの対象だったが、金子少年のからだの毛穴から滲み込んで「生成の一部」となり果てていた。
にもかかわらず、明治の旧時代の人とおなじ、類別のつかない人間として育ちおおせなかったのは、「西洋風俗」が、明るいのびのびとした別世界があることを教えてくれたからだった。
明治、大正、昭和の三世代にわたって生き、日清日露の戦争の間に人となったことが、金子という人間のありように深く影響を与える。
ベルギーに行き、ヨーロッパの詩に目覚める。
西洋人の眼で、およそ日本人の嗜好からは遠い日本文学の別ジャンルを打ち立てようとした「こがね虫」の無謀な試みが、理解されにくいと同時に、また、ハイカラな共感者を獲得した。
佐藤惣之助、富田砕花、平野威馬雄、吉田一穂、福士幸次郎、、この頃の、詩人たちとの交友が語られる。
赤いジャケツを着た大人しい少年、サトウハチロ―も登場する。
類別のつく生き方しかできなかった僕とはまるで違う世界の人たちだ。
我慢したけどね。
この類の「食いたい」という衝動は、ほんとの飢餓に根差したものではないから、一分もしないで消え去る。
衝動を抑えることを教えてくれた母に感謝だ。
なかなか読みでがあってまだ半分くらいだ。
赤んぼのときに清水組の支店長の18歳の妻に一目ぼれされて養子として育つ。
江戸馬喰町の一町四方もある大きな旅館で育った義父は、旅館が没落したのちに清水組に入る。
JRの社長をしていた住田さんが、清水建設のことを清水組となにやら見下げるような言い方をしたことを思い出した。
インチキ骨董商に乗せられて土蔵一杯の骨董を集め、一中節の家元をペットにしていた養父の元に出入りする者に風俗画家小林清親(たしか上野鈴本の番組表の表紙を描いていなかったか)のところに連れていかれて日本画家という前途があるようにも見えた。
上流社会の子弟がいく暁星中学に入ったが、
僕の眼前に差し込んだ光が、上流社会の子弟の生活や気質をてらし出し、負けず嫌いの僕は背伸びして、それに対抗しようとあせるのだった。三人家族に部屋数十一、女中二人、書生一人といえば月給取りには派手過ぎるくらしだが、それでも学友達をつれてくるには、気がひけた。僕は、名門か、富豪の家に生まれなかったことを悲しんだ。子供のころ、万引きを繰り返し、吉原に遊びに行き、家の金庫から金を持ちだし級友に大枚をはたいて、ガキ大将になる、、その破天荒な生き方には驚くばかりだ。
古い封建社会にあった草草は、嫌悪と悲しみの対象だったが、金子少年のからだの毛穴から滲み込んで「生成の一部」となり果てていた。
にもかかわらず、明治の旧時代の人とおなじ、類別のつかない人間として育ちおおせなかったのは、「西洋風俗」が、明るいのびのびとした別世界があることを教えてくれたからだった。
ベルギーに行き、ヨーロッパの詩に目覚める。
西洋人の眼で、およそ日本人の嗜好からは遠い日本文学の別ジャンルを打ち立てようとした「こがね虫」の無謀な試みが、理解されにくいと同時に、また、ハイカラな共感者を獲得した。
佐藤惣之助、富田砕花、平野威馬雄、吉田一穂、福士幸次郎、、この頃の、詩人たちとの交友が語られる。
赤いジャケツを着た大人しい少年、サトウハチロ―も登場する。
類別のつく生き方しかできなかった僕とはまるで違う世界の人たちだ。
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shinn-lily at 2021-12-21 18:24
金子光春の破天荒な生き方を私は宇宙人を見るかのように読みふけったことがあります。妻の森美千代もまた凄い。いいな、いいな、でもできない人物!
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りんご
at 2021-12-21 18:27
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てんぷら蕎麦のご馳走感 電車のなかではダメと躾ない 類別つく生き方以外への目や
saheiziさんがパリ勤務を選択されてたら等々、思い巡らし素敵な記事読ませて頂きました
民間のKPI重要業績指標にあたるシステムが不在という 下の記事が衝撃でした
世界は既にITから次々へ 20年ほどで追いつけるのでしょうか
デジタル庁に乗り込んだコンサルが見た、想像超える紙文化と改革を阻むもの
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saheizi-inokori at 2021-12-21 22:00
> shinn-lilyさん、破天荒でありながら、極めてまともな芯が一本通っていますね。豊かな比喩に富んだ文書も楽しいなあ。
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saheizi-inokori at 2021-12-21 22:07
> りんごさん、デジタル化を阻む紙文化が、ほんのわずかでも金子の真摯な日本と西洋文化の相克を胚胎ないしはけみしているならば救いがあるのですが。
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at 2021-12-22 00:08
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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miyabiflower at 2021-12-22 00:54
散歩道から富士山が見えるのですね。
40年ほど前には、世田谷区を走る小田急線から富士山が見えたと記憶しています。
高架ではなく地上を走っていた時代です。
運転席の後ろから、とてもよく見えましたよ。
羽のような飛行機雲を見たのですね。
私も見上げていました。
雲の写真を記事に載せて、こちらの記事へのリンクを貼らせていただきました。
事後報告になりましたがよろしくお願いします。
40年ほど前には、世田谷区を走る小田急線から富士山が見えたと記憶しています。
高架ではなく地上を走っていた時代です。
運転席の後ろから、とてもよく見えましたよ。
羽のような飛行機雲を見たのですね。
私も見上げていました。
雲の写真を記事に載せて、こちらの記事へのリンクを貼らせていただきました。
事後報告になりましたがよろしくお願いします。
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福
at 2021-12-22 06:39
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saheizi-inokori at 2021-12-22 09:47
>鍵コメさん、この選集には「どくろ杯』から「上海灘」「猪鹿蝶」「胡桃割り」が収録されていて、とても面白く読みました。
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saheizi-inokori at 2021-12-22 09:52
> miyabiflowerさん、この散歩道より左にある道路からみえる富士より右手に富士がみえるのがなかなか腑に落ちないのです。道の角度の違いなのですが。
飛行機雲がどんどん形を変えていくので、左手に年賀状の束を持っていたのを脇の下に挟みこんで撮りました。
飛行機雲がどんどん形を変えていくので、左手に年賀状の束を持っていたのを脇の下に挟みこんで撮りました。
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saheizi-inokori at 2021-12-22 09:55
> 福さん、私は詩の方は今三つくらい頓珍漢ですが、自伝などの文章がとても面白いです。
by saheizi-inokori
| 2021-12-21 14:21
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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