助かったかな

きのうも病院、こんどは皮膚科で生研の抜糸、医師が前回は分からなかった血液検査の抗体検査について、恐れている病気の兆候はなかった、とのこと。
やれ嬉しや、では大丈夫ですね、と訊くと、生研の結果を見なくては分からないという。
でも、抗体が見られなかったということは、ほぼほぼ大丈夫とはいえませんか（しかもクリニックの検査でもでなかったのだし）？
敵は慎重で、口を割らなかったが、さいごに「症状が収まってきたから、いいかもしれないですね」とポロっとこぼす。
天疱瘡、ネットで調べると最低一か月から長くて一年は入院しなければならないとある、めんどうな自己免疫疾患だ。
そんなに長く入院したら、身体が衰弱してしまうやんか（治ったとしても）。
生研の結果が出るまではとプレドニゾロンの服用もやめている（１０日間)のに、症状が収まってきたことを力として、最終診断を待つことにする。
ランチに蕎麦を食おうと歩き出すと「牡蠣とニララーメン」の看板がある。
牡蠣ときいては食わざあ、なるめえ。
検査結果に乾杯！と思ったが自制する。
きのうは冷たい雨だったから特別なのだ。
真っ直ぐ帰宅するのが惜しい青空、駒沢公園のいつもと反対側の入り口から入って、膝をいたわりつつ横断する。
いよいよ、いつもの木も終わりだ。
また来年もよろしくと思うが、さてどうなることやら。
公園を出たところにあるコメダ珈琲で「人とこの世界」の残りを読み終える。
珈琲屋に入るとき、四つ角で信号待ちをしているかと思ってみた、男一人女二人の高校生が、小一時間のちに店を出たときもまだ同じ様子でしゃべり合っている。
「人とこの世界」、嵐山光三郎ばかりか解説を書いている佐野真一も「開高健の代表作をあげろと言われれば、小説では『夏の闇』、評論ではこの『人とこの世界』をためらいなくあげる」と書いている。
時にいやみに感じられる“贅六”的体質から来るずけずけした物言い、やや鼻につく悪達者な文章、高踏趣味に陥った独りよがりの記述が、本書では「完全に自由になっているわけではないが」「ずば抜けて抑制がきいている」。

それはおそらく、開高がこの作品で人物論の対象として選んだ作家、詩人、画家、学者が、開高よりかなり年長の手強い相手揃いだったことに、大きく起因している。ここに登場する１２人の人物は、いずれ劣らぬうるさ型ばかりである。

と。
画家の古沢岩美は初めて知った、今西や金子は名前だけで著作を読んだことがなかったが、読みたくなった。

井伏鱒二について。

井伏鱒二氏の眼はなにげない、晴朗なるべき釣りの話をしながら、ときどき、ふいにギラギラしだし、フッと消えてなごやかになり、という風であった。エレンブルグ風でもなく、サルトル風でもない。意識してそうなるのではなく、心のうちの何かのちょっとした動きや揺れで、それがそのまま眼にあらわれてそうなるのではあるまいかと思われた。なごんだときの眼は氏の作品の表層にある温厚、ユーモア、正常、静謐と言った諸徳のままのそれであるが、ギラギラしだすと、それらの深層にある、けっしてあらわに書かれたことのない、莫大な蓄電量を持つ何かを痛く感じさせるのである。

毎土曜日にはたきをかける書棚の井伏の自選全集も読まれるのを待っている。
昔の「報道特集」に出た話→「花も嵐も乗り越えて鉄道人生４４年」