横浜で小籠包



ツイッターを見ていたら、桜井翔という人が、何かの番組でインタビュアーをしていて、真珠湾攻撃に加わり米軍艦を沈没させた元軍曹(103歳)に、そのときの気持ちを訊いて「戦時中であることはもちろんなんですが、アメリカ兵を殺してしまった、というような感覚は当時は?」と、きわめて厳粛にこわごわと尋ねているのを、「桜井は人間ではない」とか「国を守ってくれた人に向かってよくもこんな失礼なことを聞いたものだ!」とか「彼のような人のお陰で今日の私があるのに!」などという批判が殺到している(上のようなまっとうなツイートも多いけれど)。



桜井は、相手を非難してはいない。
戦争という異常が人間の感覚をどこまで麻痺させたかを、戦争を知らない若者として尋ねているだけだ。
それに対して、元軍曹は、「戦艦を沈めてこい」という命令通りのことをした、後からそれとは別に「戦争をしてはいけない」ということを一番身をもって知っているのは私たちだと思っている、と答える。
優れたインタビューだと思う。

にこ姉さんのような意見は稀なのかと思ったら、次から次から似たようなツイートがでてくる。
これしきの質問を、相手に対して失礼、とか軍人の尊厳みたいなことを言い立てて、許さない国になってしまっているのだろうか。
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きのうは、かれこれ三年ぶりに大先輩を囲む会が開かれた。
会の立派な名前(「史游会」)をつけたのに、コロナで開かれなかった。
会場は横浜みなとみらいの「鼎泰豊(ディンタイフォン)」、小籠包で有名な台北の店だ。
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9人のメンバーのうち、7人が出席、久闊を喜び合う。
囲まれる人は、90歳と二か月、一人でお見えになった。
会わなかった間に竜飛岬と永平寺、東尋坊などに出かけたとお元気だ。
きのうの別ブログ↓に先輩のことを書いたばかりなので、あの頃の先輩と今楽しそうに旅の仕方噺をされる先輩を重ねて、外見こそ今も変わらぬ颯爽たる好男子だが、あの歴史的な波乱のなかの一方の中心人物だったと思うと、不思議な感じすらした。
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そういう僕も半世紀前に横浜で交通取締りの仕事をしていたことが、信じられないくらいなのだ。
あの頃、ここには東横浜という貨物駅があったのだ。
その貨物駅を廃止したのが54・10、そのとき国鉄南局の営業部長をしていた先輩も昨日のメンバーで、「ここに駅があった」という10枚もの写真入りの記事を書いてみんなに配ってくださる。

明治5年汽笛一声新橋を発した列車の終着駅・横浜がここ(現桜木町駅~みなとみらい街区の一部)にあり、それが、客貨分離で横浜駅が高島町に移転、ここが東横浜駅として、往時は65万トンもの貨物が発着、機関区もあった。
54・10、このとき僕は本社労働課にいて合理化交渉だのなんだので泥沼にいた、そのことも書いたばかりなので、先輩はそれを読んでこの文章をもってこられたのかと思ったが、そうでもなさそう(僕の別ブログのことを知らないと思う)。
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卒寿翁は、旅のあれこれに続いて大学に入った頃の成績だとか交友だとか矢内原忠雄学長に試験用紙に名前を書き忘れたのに落第を許された話とか、いろいろ教訓も交えながら話をされる。
僕は隣に座って、もっぱら話の聞き役、ときどき茶々もいれた。
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二時間ちょっと、けっこう飲んで(紹興酒)食べて、店がいったんクローズすると、「もう少し話そう」といって、近くのバーで二次会も。
また、来年もね、いいお年を!とお別れしたら、いっぺんに僕も老人に逆戻りした。
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「花も嵐も乗り越えて鉄道人生44年」

Commented by eblo at 2021-12-11 14:10
私にもこの批判ツィートが理解できません、この人たちは何を言いたいのでしょう。
戦争で人が死ぬことを知らないで「人を殺した」という言葉に反応したんでしょうか。
こんなコメントにイイネが付く時代、私が大金持ちなら、彼らにシリア、アフガニスタン、イラク、リビア・・・観光をプレゼントしたい。
Commented by saheizi-inokori at 2021-12-11 15:37
> ebloさん、ネトウヨで故意に言っているのか、リテラシーがないのか。
それでもこういう批判がまともな報道をしようとする人たちをシュリンクさせてしまうことは大いにあり得ると思います。
それが狙いかな。
Commented by りんご at 2021-12-12 01:25 x

ツアー いいアイデアですね!  
ノルマンデイー上陸作戦の地もお薦めです 
若い兵士の無数の白い十字架が緑の丘を覆い尽くす風景 海風に吹かれて彼等は 
なぜずっとそこにいるのか カン戦争博物館に日本軍の蛮行も詳細展示があります      
Commented by at 2021-12-12 07:05 x
澤地久枝さんが91歳と伺い、驚いていたら、
90歳の先輩は横浜で小籠包ですか。
老いでなお壮ん、素晴らしいことですね。
Commented by saheizi-inokori at 2021-12-12 09:45
> りんごさん、ああ、ノルマンディー!
映画で見、本で読み、、でも行ったことのない地です、世界は行きたい処だらけ。
Commented by saheizi-inokori at 2021-12-12 09:46
> 福さん、来年はまだ白紙、何処に行こうかなと言ってました。
Commented at 2021-12-12 22:00
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-12-12 22:33
> 鍵コメさん、はい、別ブログを書き始めてからそうしました。
隠すこともないと思うようになりました。
Commented by sorita-exlibris at 2021-12-20 08:49
はじめまして、そして初めてコメントをします。
リンク先のTwitterを読み、わたしはこれが戦争なんだと、また実感しました。
桜井君もインタビュアーとして褒めてさしあげたい。


アドルフ・アイヒマンが命令に従っただけとおなじことを言っていますね。
大きな違いは、この方は戦争についての簡単には語れない悔やみのようなものがあり、
アイヒマンにはそれがなかったことです。
なんだか書かずにはいられなくて、コメントしてしまいました。


Commented by saheizi-inokori at 2021-12-20 09:33
> sorita-exlibrisさん、ありがとう。
この間の「報道特集」で、尖閣を守る自衛隊員にインタビューをしていましたが、「人を撃てるか」と訊かれ「その場にならないとわからない」と答えていました。
遺書を書いている人が多いそうです。
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by saheizi-inokori | 2021-12-11 13:37 | 人生の御馳走帖 | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori