まどろむ日本

皮膚科でDrに「わあ、ひどいねえ、どうしたんだろうね」と驚かれて、「それを訊きたいのはこっちです」、で、一錠余計に処方してもらって来週まで様子をみることになる。
まどろむ日本_e0016828_11490608.jpg
「辛味大根そば」を食って、カボチャと人参と玉ねぎと豆腐を買って、コーヒーを飲みながら、トッドを楽しむ。
「11月の花やかブレンド さざんか」と銘打ったマイルドなコーヒーもうまかった。
まどろむ日本_e0016828_11501384.jpg
帰りのバスを途中で降りて駒沢公園を散歩、昼の公園は久しぶりで、紅葉が青空に映える。
まどろむ日本_e0016828_11513162.jpg
帰宅して「エマニュエル・トッドの思考地図」を読み終える。
まどろむ日本_e0016828_09362591.jpg

デカルトやカントの合理主義を跪拝するフランスの知的だが中身のないマクロンなどのエリートとは違う(受け入れられない)イギリス経験主義とマルキシズムをバックにして、ある意味で泥臭いとすらいえそうな地に足のついた思考の在り方に親近感を覚える。
まどろむ日本_e0016828_11521845.jpg
グループシンク(集団浅慮)、マクロン大統領を例にあげる。
彼は地方のブルジョア出身で両親は医者です。そして彼はなぜか自分自身のアイデンティティを持つことができませんが、あるとき社会的にどんどん上昇するレールに乗ることに成功します。そしてたどり着いた場所にいたのは、彼と同じようになるための選別を経てきた人々ばかりでした。EUは良くない、ユーロはだめ、という思想の持主であればENA(フランス国立行政学院)に入ることはできませんから。このようにして、最終的に自分と同じような思考を持った人たちばかりに囲まれます。そして周囲の人々も彼と同様、新たなアイデアを持つことはありません。
このような状況から生まれるのが、グループシンクと呼ばれるコンセプトです。
ある同じような思考を持った集団がある事柄を信じ込んで、それが外の現実とは全くそぐわないという事態が起きる。

トッドはマクロン批判のためにこの概念を引っ張り出しているが、集団狂気とは異なるのだろうか。
日本ではどんな事例があるのか?勉強してみよう。
まどろむ日本_e0016828_11532132.jpg
良い研究をするためには、
うまく機能しすぎる知性ではダメなのです。まともではない思考をしてみたり、とっぴな関連性を見いだしたりということができなければいけないのです。
脳があまりにも効率よく働いてしまう人たち、つまり出る杭にはなれない人たちからは新しいアイデアは生まれません。
自分の社会やすぐ目の前にある現実から少し外れたところにいることが大事だという。
まどろむ日本_e0016828_11540340.jpg
(人類の長い歴史を見ると)動物として比較的成功してきた人間にとって、理性を失うことというのは自然である以上にむしろ必要不可欠なことだということが見えてくる。
トッドの研究を、フランス社会が激しく拒否したのは、それなりに反応したことであり意味のあることだ。
愛国者トッドは、本書において、フランスから受け入れられないままに年老いていくことに対し、開き直っているのだろうか。
「シャルリとは誰か?」で、「表現の自由」を掲げたデモは、実は自己欺瞞的、無自覚な排外主義者のデモだった、と喝破したことが、フランスの「インテリ」をそれほど怒らせたのか。
まどろむ日本_e0016828_11550047.jpg
ソ連の崩壊、イギリスのEU離脱、リーマンショックなど数々の予言を的中させてきたトッドはコロナ後の日本について、
このまま表面的にはうまく収束を迎えることができるかもしれませんが、そうした場合、内部で人々のある程度の満足感が得られることにより、これまでよりもさらに、高齢者を救うことよりも子どもを産むことの方が大切であるという事実を見えなくさせてしまう可能性はあるでしょう。そうして、思想的にまどろんだような状態がますます強化されるのではないでしょうか。もちろん、このような傾向はすでに日本ではみられるものです。
と、、まどろんだような、か、グループドリーミングかいな。

孫たちに本書を勧めた。
二人とも読む気満々、タイキは「MMTは何が間違いなのか?」(ジェラルド・A・エプシュタイン)も読むそうだ。
Commented by りんご at 2021-11-20 19:22 x

トッドやりますね  自己欺瞞的、無自覚な排外主義者のデモだったと喝破。 
EUは良くないユーロはだめと思っている人は私の周囲にかなりいますよー 
まあ 間違ってもENAに行こうとは思わないし いいっけ
「インテリ」の定義の内容って、その人の「知性」を反映しますね

孫たちに本書を勧めた 二人とも読む気満々。 お孫さんとsaheiziさんいいな~
Commented by 佐平次ファン at 2021-11-20 21:03 x
世に孫と一緒にお酒を飲む人はかなりいると思いますが、薦める本を孫が読んでくれるという幸福な老人はそんなにいないのではないでしょうか?
Commented by saheizi-inokori at 2021-11-20 21:39
> りんごさん、私の学生のときはこんなじいちゃんいなかったですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2021-11-20 21:41
> 佐平次ファンさん、絵本などはあるのかと思いますよ。
しかし嬉しい!
Commented by hitomi8-i at 2021-11-20 22:04
思想的にまどろんだような状態 という表記に、ガツンときて、
「思想」とは、何を指しての思想なのか、その「まどろみ」は主に
なにを指してのことか。知りたくなって、、、頭の中がギュルっとなって、、、
ドットの様々を検索後 注文してしまいました(中古本です・エヘッ)
Commented by saheizi-inokori at 2021-11-21 09:41
> hitomi8-iさん、私もトッドの良き読者とはいいがたい、まどろんでいないで読まなくちゃ。

Commented by ikuohasegawa at 2021-11-21 16:47
「辛味大根そば」を食べたくなったし、「思考地図」を読みたくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2021-11-21 16:54
> ikuohasegawaさん、どっちもけっこうでした。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2021-11-20 11:58 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31