絶滅危惧ユーモア 凡人伝(佐々木邦)
2021年 08月 30日
けさも暑い、けれど、一抹の涼しさを忍ばせた暑さだ。
乾け、シャツよ、タオルよ!
佐々木邦(1883年~1964年)、知る人も少なくなったかもしれない。
日本のユーモア小説の先駆者、僕は辛うじてその名前は知っていたし、作品も一つや二つは、題名も内容も忘れたけれど、読んだことがある。
byogakudoさんのブログで、その人の自伝的小説「凡人伝」を教えられて、懐かしい気持ちをそそられて読んだ。
何もしない午後一杯を、テンポの良いユーモラスな語り口(多くは生きの良い、ときには漫才のような会話)を楽しんで読了。
静岡の田舎の小学校で父親が校長なるがゆえに、優等生にならざるを得なかったのが嫌でたまらず、反抗心もあって耶蘇教に近づき、上京してミッションスクール・明治学園(明治学院がモデル)に入学、七人の同期生と寮に暮らして学園生活を送る、その青春が生き生きと描かれる。
僕は自分の寮生活のことを懐かしく思い出しつつページをめくる。
「明治学園 飯が食えん」、卒業しても就職できない。
学長(総理とよばれる)ジョンソン博士は「お金儲けする人を養わない、キリスト教紳士を養う」という、今の政府が聞いたら免許を取り消しそうなことを校是としていた。
時あたかも日露戦争前夜、信仰を得る者、離れる者、開戦論、非戦論、、7人のそれぞれの個性が、ぶつかりあって、喧嘩もし仲良くもなる。
このあたりが、この小説の白眉、とても愉快だ。
卒業後、九州の中学の教師になって、24歳の若さを地元の人に囃されると、悪い気がしない。
ひょんなことから、結婚することになり、その後は一年に一人ペースで子供を10人、これでは稼げども稼げども暮らしは厳しくなるばかり。
しかし、結婚式の来賓祝辞で「夫婦二人が同時に怒らないこと」を誓わされた二人の仲はむつまじい。
むつまじくとも、このままでは暮らしていけない、公立学校の教師を辞めて、恩給と私立学校の時間給でやっていこうと思っていると、明治学園時代の、当時は愚かに見えたけれど、たった一人の出世した友人が、私立校の口を探してくれ、あわせて我が子の家庭教師もしてくれとかなりの報酬をはずんでくれて、週に55時間働き、その上に著述もやってなんとかしのいでいる。
殺伐たる日々を、温かなユーモアで慰めてくれた。
乾け、シャツよ、タオルよ!
日本のユーモア小説の先駆者、僕は辛うじてその名前は知っていたし、作品も一つや二つは、題名も内容も忘れたけれど、読んだことがある。
byogakudoさんのブログで、その人の自伝的小説「凡人伝」を教えられて、懐かしい気持ちをそそられて読んだ。
何もしない午後一杯を、テンポの良いユーモラスな語り口(多くは生きの良い、ときには漫才のような会話)を楽しんで読了。
静岡の田舎の小学校で父親が校長なるがゆえに、優等生にならざるを得なかったのが嫌でたまらず、反抗心もあって耶蘇教に近づき、上京してミッションスクール・明治学園(明治学院がモデル)に入学、七人の同期生と寮に暮らして学園生活を送る、その青春が生き生きと描かれる。
僕は自分の寮生活のことを懐かしく思い出しつつページをめくる。
学長(総理とよばれる)ジョンソン博士は「お金儲けする人を養わない、キリスト教紳士を養う」という、今の政府が聞いたら免許を取り消しそうなことを校是としていた。
時あたかも日露戦争前夜、信仰を得る者、離れる者、開戦論、非戦論、、7人のそれぞれの個性が、ぶつかりあって、喧嘩もし仲良くもなる。
このあたりが、この小説の白眉、とても愉快だ。
卒業後、九州の中学の教師になって、24歳の若さを地元の人に囃されると、悪い気がしない。
右を見ても左を見ても、自分が一番若かった当時は、人生がもう少し何うにかなりそうに思えた。若い独身者の目には周囲の中老連中が至って平凡に映る。いずれ、その平凡になることも知らずに、いい気なものだが、早生まれの僕にも思い当たる節がある。
しかし、結婚式の来賓祝辞で「夫婦二人が同時に怒らないこと」を誓わされた二人の仲はむつまじい。
むつまじくとも、このままでは暮らしていけない、公立学校の教師を辞めて、恩給と私立学校の時間給でやっていこうと思っていると、明治学園時代の、当時は愚かに見えたけれど、たった一人の出世した友人が、私立校の口を探してくれ、あわせて我が子の家庭教師もしてくれとかなりの報酬をはずんでくれて、週に55時間働き、その上に著述もやってなんとかしのいでいる。
私は十人の子供を夫れ夫れ一人前に育て上げるのが手一杯だ。何うもそれ以上の天分を授かって来たものとは思えない。二十年間の体験が然う教えている。非凡なる凡人だ。
凡人の非凡事はせめて己を凡人と悟ることだ。そこに聊かながら安心と立命がある。
殺伐たる日々を、温かなユーモアで慰めてくれた。
知性的で、上品であり庶民目線でもある、近頃絶滅したかのようなユーモアだ。
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at 2021-08-30 21:56
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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りんご
at 2021-08-30 22:36
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くくっ はっぱがハート~
お母さまと夕食後に歌をうたっていたsaheizi少年をおもいました~
きょうの作者のご紹介、安らぎユーモアをありがとうございます
ワクチン接種で若い人を数千人も並ばせておいて ほど無く打ち切り
そのまま皆でデモしたらいいのに(あ したんでしょうか?)
本気でほんとうに自公維その他ゴミを総取っかえしませんと
「日本はよくやってる」と言う隠蔽工作を信じたい人は放っておきましょう
きょう下を読みカップを倒しそうになりました うぅ天下り族〰
乱立200基金、過剰積み立て2.6兆円 コロナで再び急増 国費解剖
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saheizi-inokori at 2021-08-31 09:19
>鍵コメさん、私の高校にも花王石鹸はいらっしゃいました。
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saheizi-inokori at 2021-08-31 09:22
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福
at 2021-09-01 06:36
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佐々木邦は渡部昇一が愛読したとか。
亡父も面白かったと述懐しておりました。
最近、渡部「青春の読書」を読み、授業中に講談本も隠れて読んだ、
というくだりがありました。
僕らの世代は、漫画をこっそり読んでいるのもいたような・・・
亡父も面白かったと述懐しておりました。
最近、渡部「青春の読書」を読み、授業中に講談本も隠れて読んだ、
というくだりがありました。
僕らの世代は、漫画をこっそり読んでいるのもいたような・・・
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saheizi-inokori at 2021-09-01 09:09
by saheizi-inokori
| 2021-08-30 09:41
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Comments(6)