アフガンを学ぶ 「アフガニスタンの診療所から」(中村哲)
2021年 08月 27日
きのうの毎日新聞朝刊「時論フオーラム」は、「タリバンのアフガン制圧」について、藤原辰史が中村哲医師がアフガンの貧しく病める人々に対してなした献身、そのことで現地の人々の厚い信頼を得ていたのに、日米のタリバン攻撃によってそれを踏みにじられたこと、中村哲医師のタリバン観などを紹介している。
タリバンの構成員は、一枚岩ではなく、ソ連の侵攻時に難民になった孤児、米国の戦争後に過激化し、度重なる「誤爆」で家族を失った人間などが多く、タリバンの残虐は大国の「国益」追求の落とし子ともいえる。
アメリカのアフガン戦争を支持した小泉純一郎を支持した日本人、いまの日本人はアフガンを他人ごとのようにみてはいないか。
戦争参加の理由として石油や天然ガスなどの国益確保が平然と語られ、「テロリスト」と「正義」の野蛮な二分法が幅をきかし、日本の思考様式が複雑な状況に耐えられなくなり、首相の国会答弁が誤魔化しになったのも、イラクで日本の若者が人質になったのを「自己責任だ」といったのも、このころではないか、と藤原。 途中まで読んで、そのままになっていた、中村哲の「アフガニスタンの診療所から」を取り出す。
簡にして要を得た、アフガン入門。
(きのう、5時のスーパー、がら空き)
タリバンの構成員は、一枚岩ではなく、ソ連の侵攻時に難民になった孤児、米国の戦争後に過激化し、度重なる「誤爆」で家族を失った人間などが多く、タリバンの残虐は大国の「国益」追求の落とし子ともいえる。
アメリカのアフガン戦争を支持した小泉純一郎を支持した日本人、いまの日本人はアフガンを他人ごとのようにみてはいないか。
戦争参加の理由として石油や天然ガスなどの国益確保が平然と語られ、「テロリスト」と「正義」の野蛮な二分法が幅をきかし、日本の思考様式が複雑な状況に耐えられなくなり、首相の国会答弁が誤魔化しになったのも、イラクで日本の若者が人質になったのを「自己責任だ」といったのも、このころではないか、と藤原。
政府が国民の生命を守るのではなく、生命を脅かしたり、政府ではなく個人の責任だという態度を示したり、大事な時に限って首相の答弁が意味不明になったりする、無能と強権が結びつく奇妙な時代が始まった一つの画期は、アフガン戦争ではなかっただろうか。まさに、アベを経由するとともに、よりグロテスクにその姿を見せているのが、スガ政権だ。
簡にして要を得た、アフガン入門。
米国のてこ入れによって深刻化した政治党派の乱立・抗争も多くの者には無縁で、党派をこえて働く地縁・血縁関係のほうがもっと身近であった。大部分の声なき人々は、何かの主義や思想で動いていたのではない。自分のアイデンティティを打ちこわす外からの脅威や郷土(国土ではない)を守る単純な動機で戦い、そして戦いを拒否したのである。1992年に、アフガン戦争が終了し帰還する数百万の難民のことだ。
西欧型近代国家は、まさに明瞭な国境・領土と国民の均質化を要求するという点で、「非アジア的」であり、その国家観でアジア諸国を論ずるのがそもそも無理なのである。理解しにくい中近東の複雑なもめごとも、これを「国家」と見るからこそわけがわからない。第一、直線で引かれた自然国境などありうるはずもない。戦前の地図と比べてみればわかる。アジア諸国の現在の国境は、西欧列強のアジア分割支配の歴史の痕跡である。中村哲は「人のやりたがらぬことをなせ。人のいやがる所へゆけ」の指針に従い、らい病棟に努力を集中する。
らいの仕事にたずさわる者は、その愛憎、醜悪さと気高さ、深さと軽薄さ、怒り、哀しみ、喜び、およそあらゆる人間的事象に、極端な形で直面させられる。人間を数字やプランだけではあつかえぬ何ものか、経済効率の優先でおきざりにされてはならぬ何ものかが、らい治療にたずさわってきた人々の心の奥に根を下ろしているからである。医療が人間を対象にするものであるかぎり、私自身は彼らの頑迷と偏屈に親近感を覚えている。なんと、深い言葉であろうか。
概して、物見高く、自由で気まま、衝動的で粗野、割拠対立と滑稽なほど高い自尊心という共通性をもつアフガニスタンの全民族に根をおろしているのがパシュトウヌワレイ(パシュトウン人の掟)だ。
パシュトゥヌワレイに代表される辺境社会の慣習法は、近代的な国家や、法の概念をよせつけない。
バダル(復讐)、メールマスティア(もてなし)、ジハード(聖戦)、ナームース(名誉)、バドラガ(旅行者の保護)、ジルガ(会議)などが有名、すべてのパシュトゥンはイスラム教徒であり、この掟はイスラム教と遊牧民的な部族制度の秩序が混交したものだろう。
立派な字面からは、実態をつかみにくい、いうこととすることがずいぶん違う。
「京都のお茶漬け」のように、本音と建前があり、そのへんの呼吸を飲み込んで、気を利かしてやらなければならない。
日本の武士道に似た徳目もあるが、それを生真面目に厳守していたら、パシュトゥン部族はとっくの昔に花と散って消滅していたにちがいない。
復讐、仇討ちは、時には村ぐるみ部族ぐるみの抗争となり、小さな戦争にさえ発展する。
理不尽に夫を殺された妻が、我が子を復讐要員として育て、その子が長ずるに及んで、銃でめでたく本懐をとげたり、かよわい女しかいない場合は、宴席にまねいて毒殺という例もある。
中村さんは、病院で復讐の企てを止めるのに苦労したこともある。
アフガニスタン人と見違えられるほどに、現地と馴染んだ中村さん、生きていて欲しかった。
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kuroguly18 at 2021-08-27 16:50
ワシントン発のタリバン情報は疑ってかかれと言う記事を読んだことがあります。
中村さんはアメリカ寄りの武装勢力に殺されたのでしょうか。
中村さんが国会で自衛隊派遣の愚を説いた映像、今でも覚えています。
中村さんはアメリカ寄りの武装勢力に殺されたのでしょうか。
中村さんが国会で自衛隊派遣の愚を説いた映像、今でも覚えています。
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saheizi-inokori at 2021-08-27 18:23
> kuroguly18さん、国連も含めた欧米の介入や救助活動は、アフガンの人びとにはむしろ憎悪の対象になっているかのようです。
毎日新聞の記事のご紹介有難うございます。ウェブの無料購読会員としてこの記事を読むことができました。
「タリバンを悪の権化と言う前に歴史に学べ。アフガンの人々から見たら、19世紀以来、現在に至るまで幾度となく侵略と占領が繰り返されたに過ぎないことを。」という内藤正典氏のツイートに頷き、同時に私もしっかり歴史を学ばねばと肝に銘じています。
「恐怖政治は虚、真の支援を」という中村哲医師の記事もご紹介させてください。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/120400219/
「タリバンを悪の権化と言う前に歴史に学べ。アフガンの人々から見たら、19世紀以来、現在に至るまで幾度となく侵略と占領が繰り返されたに過ぎないことを。」という内藤正典氏のツイートに頷き、同時に私もしっかり歴史を学ばねばと肝に銘じています。
「恐怖政治は虚、真の支援を」という中村哲医師の記事もご紹介させてください。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/120400219/
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saheizi-inokori at 2021-08-27 19:17
> テイク25さん、歴史の真実、文化の多様性、価値観の違い、、謙虚に学ばないと上滑りになって、ひどい結果をもたらしてしまうようです。
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りんご
at 2021-08-27 23:20
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欧米を何をする気か ここでもずっと議論がありました
きょうは1972年学生時代にアフガンを回った夫から
その頃の話を聞き, 撮った写真を見ていました
2015年頃から独に住み始めたアフガニスタンの人々の
デモの声、来月に政界を去るメルケルの憔悴の表情。。
ご紹介の本を読みたいです ありがとうございます
きょうは1972年学生時代にアフガンを回った夫から
その頃の話を聞き, 撮った写真を見ていました
2015年頃から独に住み始めたアフガニスタンの人々の
デモの声、来月に政界を去るメルケルの憔悴の表情。。
ご紹介の本を読みたいです ありがとうございます
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saheizi-inokori at 2021-08-28 09:44
by saheizi-inokori
| 2021-08-27 11:11
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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