足るを知る 「高瀬舟」など
2021年 08月 24日
けさは、朝飯を食わずに飛び出して、下北沢の皮膚科へ、8時20分、開場時間の前なのに、もうドアが開いていて、先客も数人、先週休業していたからかな。
時間前に診察が始まり、さほど待つこともなく、診てもらえた。
湿疹がなかなか治らないので、先生も首をかしげながら薬を処方、帯状疱疹の予後のための注射もしてもらう。
下北沢のナチュラルハウスの開店を待って買い物、小田急で梅ヶ丘に行き、この間見つけたF&Fでも野菜などの買い足し、それでも足りないものを駅構内のOXで調達、あまりに腹がすいたので、ナッツのバーをかじる。
孤独のグルメの五郎なら、美登利寿司にでも飛び込むのかもしれない。
バスで駒沢にでて、大野魚屋でカツオの刺身を手に入れる。
腕がしびれそうに重たい荷物をぶら下げて、はすかいの菓子屋で「わらび餅」も買って帰ると、もう昼過ぎだ。
食べないで出た朝の野菜スープとヨーグルトにトーストで、昼飯完了。
鴎外との日々。
「山椒大夫」、子供向きの本で読んではいたが、本家は初めて。
昔は、こんなに美しい言葉で話す、品のある家族がいたのか。
人買いに騙されて母と離れ離れになった、幼い安寿と厨子王の姉弟の忍従と、そのまま運命に負けてしまわずに、我が身を犠牲にしてでも弟を救おうとする姉の冷静な知性、それを受け止めて道を切り開く弟、大人が読んでも感動できるストーリーと素晴らしい文章だ。
「魚玄機」、性に目覚めて身を亡ぼす才女の話。
みだらな話を格調高く描く。
「余興」、同郷のエリートたちの宴会で、幹事になった陸軍少将が、余興に浪曲師をよぶ。
鷗外の趣味にはまったく合わない浪曲を真面目なふりをして聞かねばならなかった鬱憤、陸軍のお偉いさんだった鷗外の青年のような気の若さが、伝わってくる。
「高瀬舟」、これも名前と、そこに安楽死のことが扱われているということは知っていたが、ちゃんと小説として楽しんだのは初めてだ。
弟を殺した罪で遠島になる喜助が、なんとなく明るい表情なのを不審に思った、護送の役人・羽田庄兵衛が、その訳を問うと、「自分は京都にいるときに苦しみぬいていたから、島で落ち着いていられるのは、有難い。またお上から二百文の鳥目をもらったが、こんな大金を身に着けたことはかつてないことであり、今まではお金は右から左に消えていったけれど、牢屋では仕事もせずに食べさせてもらったので、生まれてはじめて貯えができた。この金を元手に島で仕事をしようと思っている」と答える。
羽田は、自分の七人暮らしのことを考える。
人に吝嗇といわれるほど節約していても、妻が裕福な商人の出なものだから、ともすれば赤字になると、実家から内緒で金を持ってきて帳尻合わせをし、そういうことがもとで家に波風が起きている。
病気、食べ物、貯え、、人は先から先へと考えて、何処まで往っても踏み止まることができない。
それを今目の前で踏み止まって見せてくれているのが、喜助だと、庄兵衛は気づく。
(下北沢駅前)
「寒山拾得」、たしか、高校の教科書に載っていた。
さいごのほうで、台州の主簿(知事?)の丁寧な自己紹介(名乗り)を聞いて、寒山拾得が顔を見合わせて、腹の底から籠み上げてくるような笑い声を出して、二人して逃げ出していく。
さて、寒山拾得が、そうやって笑ったのはなぜか?
国語の教師が質問をして、僕は主簿の肩書を並べ立てた名乗りの俗っぽさを笑ったのだ、と答えたら、「違う、単に名乗りの長さがおかしかったからだ」と言われて、僕の理屈っぽさ・俗っぽさを指摘された様な気がして、かなり自尊心を傷つけられたように覚えている。
寿限無ってことか。
今回読み直して、面白かったが、又間違えそうだ。
ただありのままを受け止めて素直に笑うことができず、なんらかの屁理屈をつけて笑うというサガは直らない。
「栗山大膳」、栗山君という後輩がいて、みんなで「クリヤマダイゼン」と戯れに呼んだことがあった。
クリヤマダイゼンが、これほどの「武略」の人であるとは知らなかった。
「椙原品」、伊達綱宗が、吉原三浦屋の「高尾」を仙台に連れて行ったという「仙台高尾」の話は、ありえない誤りであるという枕から、幕府のお咎めを受けて品川に蟄居した綱宗の妾として、綱宗の最後まで仕えた「品」という女性の仙台にある墓が、誤って高尾の墓と伝えられていること、品のことを書いてみたい、といいながら、樅木は残ったの伊達騒動の実相のことなどを書いて、品その人については、あまり詳しく書いていない。
時間前に診察が始まり、さほど待つこともなく、診てもらえた。
湿疹がなかなか治らないので、先生も首をかしげながら薬を処方、帯状疱疹の予後のための注射もしてもらう。
孤独のグルメの五郎なら、美登利寿司にでも飛び込むのかもしれない。
バスで駒沢にでて、大野魚屋でカツオの刺身を手に入れる。
腕がしびれそうに重たい荷物をぶら下げて、はすかいの菓子屋で「わらび餅」も買って帰ると、もう昼過ぎだ。
食べないで出た朝の野菜スープとヨーグルトにトーストで、昼飯完了。
「山椒大夫」、子供向きの本で読んではいたが、本家は初めて。
昔は、こんなに美しい言葉で話す、品のある家族がいたのか。
人買いに騙されて母と離れ離れになった、幼い安寿と厨子王の姉弟の忍従と、そのまま運命に負けてしまわずに、我が身を犠牲にしてでも弟を救おうとする姉の冷静な知性、それを受け止めて道を切り開く弟、大人が読んでも感動できるストーリーと素晴らしい文章だ。
「魚玄機」、性に目覚めて身を亡ぼす才女の話。
みだらな話を格調高く描く。
「余興」、同郷のエリートたちの宴会で、幹事になった陸軍少将が、余興に浪曲師をよぶ。
鷗外の趣味にはまったく合わない浪曲を真面目なふりをして聞かねばならなかった鬱憤、陸軍のお偉いさんだった鷗外の青年のような気の若さが、伝わってくる。
「高瀬舟」、これも名前と、そこに安楽死のことが扱われているということは知っていたが、ちゃんと小説として楽しんだのは初めてだ。
弟を殺した罪で遠島になる喜助が、なんとなく明るい表情なのを不審に思った、護送の役人・羽田庄兵衛が、その訳を問うと、「自分は京都にいるときに苦しみぬいていたから、島で落ち着いていられるのは、有難い。またお上から二百文の鳥目をもらったが、こんな大金を身に着けたことはかつてないことであり、今まではお金は右から左に消えていったけれど、牢屋では仕事もせずに食べさせてもらったので、生まれてはじめて貯えができた。この金を元手に島で仕事をしようと思っている」と答える。
羽田は、自分の七人暮らしのことを考える。
人に吝嗇といわれるほど節約していても、妻が裕福な商人の出なものだから、ともすれば赤字になると、実家から内緒で金を持ってきて帳尻合わせをし、そういうことがもとで家に波風が起きている。
病気、食べ物、貯え、、人は先から先へと考えて、何処まで往っても踏み止まることができない。
それを今目の前で踏み止まって見せてくれているのが、喜助だと、庄兵衛は気づく。
「寒山拾得」、たしか、高校の教科書に載っていた。
さいごのほうで、台州の主簿(知事?)の丁寧な自己紹介(名乗り)を聞いて、寒山拾得が顔を見合わせて、腹の底から籠み上げてくるような笑い声を出して、二人して逃げ出していく。
さて、寒山拾得が、そうやって笑ったのはなぜか?
国語の教師が質問をして、僕は主簿の肩書を並べ立てた名乗りの俗っぽさを笑ったのだ、と答えたら、「違う、単に名乗りの長さがおかしかったからだ」と言われて、僕の理屈っぽさ・俗っぽさを指摘された様な気がして、かなり自尊心を傷つけられたように覚えている。
寿限無ってことか。
今回読み直して、面白かったが、又間違えそうだ。
ただありのままを受け止めて素直に笑うことができず、なんらかの屁理屈をつけて笑うというサガは直らない。
「栗山大膳」、栗山君という後輩がいて、みんなで「クリヤマダイゼン」と戯れに呼んだことがあった。
クリヤマダイゼンが、これほどの「武略」の人であるとは知らなかった。
「椙原品」、伊達綱宗が、吉原三浦屋の「高尾」を仙台に連れて行ったという「仙台高尾」の話は、ありえない誤りであるという枕から、幕府のお咎めを受けて品川に蟄居した綱宗の妾として、綱宗の最後まで仕えた「品」という女性の仙台にある墓が、誤って高尾の墓と伝えられていること、品のことを書いてみたい、といいながら、樅木は残ったの伊達騒動の実相のことなどを書いて、品その人については、あまり詳しく書いていない。
想像力の不足と平生の歴史を尊重する習慣とに妨げられて、此企てを抛棄してしまったのだそうだ。
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jyariko-2 at 2021-08-24 17:56
安寿こいしや ホーヤレホ
厨子王こいしや ホーヤレホ
目が見えなくなった母親が豆たたきをしながら歌っている
絵本の絵をしっかり覚えています 山椒大夫はとっても怖かったです
厨子王こいしや ホーヤレホ
目が見えなくなった母親が豆たたきをしながら歌っている
絵本の絵をしっかり覚えています 山椒大夫はとっても怖かったです
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福
at 2021-08-25 06:33
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saheizi-inokori at 2021-08-25 09:07
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saheizi-inokori at 2021-08-25 09:09
> 福さん、一般の読者を「愚か」と堂々と書くのが鷗外ですね。
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doremi730 at 2021-08-25 10:02
鴎外が大好きだった青春時代は、半世紀も昔。。
これらも今の目線で読み直してみなくては、、ありがとうございます。
これらも今の目線で読み直してみなくては、、ありがとうございます。
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saheizi-inokori at 2021-08-25 11:58
by saheizi-inokori
| 2021-08-24 15:26
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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