夕日を見るための透明な椅子

落語家の志ん輔はいくつだろう、僕よりはずっと若いはずだ。
それなのに、きのう日曜日に銀行に行って、ビルのEVが来ないのでヤキモキしてる。
なんかホッとする、蜜の味ってことでもないが。
とは言え、毎月師匠の志ん朝の墓参りを欠かさないし、「心から笑えるような若手が出てくるまでは頑張る」と言ってるし、まいにち料理も作っている。
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ぼくも今朝、8食分の野菜スープの具材を刻んで冷凍したけれど。
その間、ずっとサンチがキッチンの入り口から見守っていて、そのうち寝そべってしまったのは、可愛かった。
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昨日も買い物に行く前の短い時間だけど、「星のなまえ」を読んだ。
淡々と星のあれこれが書かれているかと思うと、キラッと光る星のような言葉が随所に出てくる。

高橋は「星の王子さま」を「鍾愛の本」という。
「なぜこんな美しい本があるのか、いまでも不思議である」とも。
仏文の学生だった彼女はこの本を原書で読み、「私は女子学生らしからぬ怠け者で、恥ずかしながら、この本が読み通したただ一冊の原書になった」そうで、内藤濯の訳本は「日本語に訳されてしまうと、私の「星の王子さま」が消えてしまうような気がして」買わなかったそうだ。
この本を解説するくらい、無力な仕事はないのではないだろうか。一ぺージでも一行でも、あるいは著者の描いた絵を見るだけでも、そのほうがずっと雄弁なのだから。解説ではなくて、感想を記してみる気になったのは、ずっとあの本が本箱のあのへんにあると思っているだけで、長い年月ちゃんと向き合ってこなかった自分を責める意味がある。大した言葉が引き出せないとしたら、私は「星の王子さま」を忘れて生きてきた、自分勝手な大人に過ぎなかったということだ。
僕は、「本箱のあのへん」を探してみたが、見つからないのだ。
自分勝手に生きてきたことは認める。
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王子さまはたった一人で小さな星に住んでいるのだが、日が沈むのを見るのが好きで、座っている椅子をずらしては、見たいだけ夕日を眺める。
悲しい時は一日に43回も見た。
高橋はこの話が気に入って、若いとき、次のような詩を書いた。

椅子

今年の正月は 二度も夕日の沈むのを見た

夕日の沈むのをもう一度眺めるために
椅子の位置をずらしていった プチ・プランスの
話を思い出した

この浜辺に
見えない椅子が しつらえれている

高橋は「まったく若気の至りだが、この詩を読んで意味が分かった人は何人いただろう」と書いて
若かった私は、その浜辺を「星の王子さま」の星にしたかったのである。じっさい古里の海の水平線の彼方に、いっとき空も海も紅に染めて沈んでいく夕日は、何か禍々しい贈り物のようでもあった。夕日を見るための透明な椅子が、浜辺に何脚も並んでいるような場景を幻視した。
と。
拙ブログにときどきコメントをくださる、「夕暮れしっぽ」のwawaさんは、海辺に暮す詩人である。
彼女が、いぜんの僕の本書についての記事にコメントを下さって「高橋順子の詩を読みたい」とおっしゃったが、僕は「本書には彼女の詩は載っていない」と答えた。
その後、この「若気の至り」を読んだのだ。

wawaさんの浜辺にもいろんな椅子があると察する。
Commented by jyariko-2 at 2021-08-02 14:35
星の王子さま  数回読みました
最初の時はよく分からず 60代のころ読み直したとき
やっと少し分かった気がしました でも今思うと分かっていない気がします
拝見して もう少し分かった気になる為にまた読もうと思いました
Commented by wawa38 at 2021-08-02 15:34
ありがとうございます。
高橋順子さんの「星のなまえ」は、明日か明後日に届く予定です。
「星の王子さま」は私も持っているはずですが、どこにあるのか大捜索をしないと見つからないです(^-^;

伊勢湾の中の海ですが、朝に夕に見に行き、夕焼けが見えそうだと思うと、必ずまたカメラを持って行く・・・、まあ、暇なんですね。でも、ここには入れ代わり立ち代わり、夕陽や夕焼けを見に来ている人たちがいます。その人たちのための椅子が見えるようです。
昔私が書いた拙詩に「笑う椅子」というのをあったことを思い出しました。それも捜さないと見つけられないのですが、「きょうも椅子でした」で終わっていたような(^^ゞ
Commented by saheizi-inokori at 2021-08-02 16:04
> jyariko-2さん、わたしは一度しか読んでないのに。
どこに行ったあ?!
Commented by saheizi-inokori at 2021-08-02 16:06
> wawa38さん、笑う椅子、ぜひ探して読ませてください。
いま、買い物してバス停の椅子に座っています。
Commented by hanamomo60 at 2021-08-02 21:18
志ん輔さんはたぶん67歳!
多彩な人で、幼児番組のお母さんと一緒にも出ておりました。
子どもたちからも信頼があり、私も知り合いの子どもと楽しく見ておりました。
ブログも時々見ています。
日曜日に銀行へは私にも経験あり!笑ってしまいました。
Commented by saheizi-inokori at 2021-08-02 22:48
> hanamomo60さん、そうですか、ほぼひとまわり若いのですね。一番楽しいころかな。
商店街の定休日は忘れますが日曜日はね。
もっとも最近銀行に行くことがなくなりました。
Commented by at 2021-08-03 06:46 x
子供の頃、『星の皇子さま』内藤濯訳で読みました。
「いいかい、大切なのはその人が何を話しているかじゃなくて、
なぜ話しているか、なんだ。」とか、
大人はすべてをお金に置き換える、とか、
そんなことを憶えています。

まさか某語家の自己紹介になるとは思わなんだ。
Commented by tona at 2021-08-03 08:56 x
サンチ君、愛しいですね。人間より犬格が出来ています。珍しい犬です。
『星の王子さま』また読みたくなりました。
『星のなまえ』の高橋順子さん、聞いたことがあるのですが未読です。
いい詩ですね。
『星の王子さま』でなくて『かもめのジョナサン』が残っていました。捨ててしまったらしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-08-03 09:48
> 福さん、そうそう!なんで彼が星の王子さまになったのでしょう?自己紹介、そうかあ。
Commented by saheizi-inokori at 2021-08-03 09:50
> tonaさん、私のあとをついて歩いて、なにかで困っていると、どうしたの?と見上げるのです。
私も王子様をどこかに置き忘れたのかもしれないなあ。
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by saheizi-inokori | 2021-08-02 12:49 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


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