教科書を読めない子どもが大人になっている

きのうから4回目の洗濯をして、干して取り込んでしまう。
腰痛ベルトと膝のサポーターをして、窓ガラス拭きも含めた大掃除をして、ベランダの水やりもする。
終ると、くたっとなるが、元気を奮い起こしてストレッチ&筋トレ20分、足腰が弱まったら、家事なんかできなくなるもの。
それでも、やっとパソコンの前に座ると人様のブログを見るだけで精いっぱい、なかなか自分の記事を書く気にならない毎日だ。
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(自由が丘駅ホームから)
「AIvs.教科書が読めない子どもたち」読了。
大学生の数学基本調査をやった結果、衝撃的に正答率が低い原因は、学生の読解力の不足にあると確信した筆者は、その確信を事実として確かめるために、中高生の「基礎的読解力」を調査するためのリーディングスキルテスト(RST)を自力で開発(その苦闘の内容も説明されている)、「係り受け解析(主語と述語や修飾語と被修飾語の関係)」、「照応(これ、それなどの指示代名詞の解読)」、「同義文判定(違った文章の意味が同じであるか)」、「推論(文の構造を理解して、生活体験や常識・知識を総動員して文章の意味を理解する)」、「イメージ判定(文章と図形やグラフを比べて、内容が一致しているか)」、「具体的判定(定義を読んでそれと合致する具体例を認識する)」の六つの分野で問題を作成する。
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今まで(2017年)に2万5千人のデータを収集した。
問題例(とても易しい)やその正答率分布などは、ここでは省略して結論だけを引用する。

・中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない。
・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない。
・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である。
・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い。
・読解能力値は中学生の間は平均的には向上する。
・読解能力値は高校では向上していない。
・読解能力値と家庭の経済状態には負の相関がある。
・通塾の有無と読解能力値は無関係。
・読書の好き嫌い、科目の得意不得意、スマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関がない。

読解力は、生まれつきでもなく高校生になっても伸びないということでもない、と彼女はいう。
だが、どうすれば読解力がつくのか?筆者は
ご期待に添えなくて申し訳ないのですが、今のところ、「こうすれば読解力が上がる」と言えるような因子は発見されなかったのです。
と謝っている。

しかし、希望はありそうだ。
このテストに協力した戸田市の中学では、先生たちもテストを受けて(勇気がある!)、自分たちも、(特に担当科目以外の)教科書を読んで、その文章の難しさに驚き、改めて自分たちでRSTの問題を作成するなど、どうすれば教科書が読めるようになるかの研究を始めた。
すると「埼玉県学力学習状況調査」において、それまで中位の成績だった戸田市は総合1位になった。
科学的データに基づいて、先生たちが「きちんと教科書が読めるためにはどうしたらよいか」を研究し、実践する、そういう地味でベーシックなことが、いかに重要か。
アクティブラーニングを文科省は推奨するが、「教科書に書いてあることが理解できない学生が、どのようにすれば自ら調べることが出来るのでしょうか。自分の考えを論理的に説明したり、相手の意見を理解したり、推論したりできない学生が、どうすれば友人と議論することができるのでしょうか」。
また「小学生のうちから英語を」「中高の授業でコンピュータープログラミングを」などという財界人も、教育現場を知らないで妄語を発しているのだ。

僕は、現役時代に司法試験に合格した先輩の文章を読んで、(言いたいことはなんとなくわかるけれど)主語と述語の関係などがあまりにも混乱している(だべっているようなのだ)ので、不遜にも朱をいれたことを思い出す。
そして、役所の文書や、世の中のトリセツの難解なことにも思い至る。
あれは、責任をあいまいにするためだけではなく、「教科書を読めない子ども」が社会人になっての”労作”なのかもしれない。
大学合格者の半分は、推薦などで試験を受けていないし、試験を受けるときは(かつての僕のように)過去問などの丸暗記をして臨む。
本書においても、一流企業の社会人、学校の先生、編集者や記者なども間違いがあったことが、指摘されている。
読めない子どもが大人になって、読めないままに子どもを育てる、読めないの再生産。

どんなに高級でも計算機にすぎないAIには、意味がわからないから、人間が不要になる恐れはない。
かもしれないが、AIにできない仕事をする力=読解力がなかったら、そりゃあ、待ち受けているのは悪夢だ。

Commented by jyariko-2 at 2021-06-12 13:51
耳が いや目がいたいです 頭もかな?
ちょっと難しい文章だと逃げてしまう私 は~ですね
まあこの老人と思って勘弁してください
若い人たちこれからの人たちにはいろんな文を読み取って欲しいですね
情報過多やネット検索の時代 考える事が遠のいていくようで怖いです
Commented by saheizi-inokori at 2021-06-12 22:22
> jyariko-2さん、そんな難しい文章ではないのです。
中学の教科書の文章より易しいのです。それをきちんと読んでいないという話です。
Commented by at 2021-06-13 07:34 x
詩や小説に涙する情操豊かな人間。
人生の局面において古典の章句を思い浮かべて過たず行動できる人間。
アナログでしょうか。

大学入試の新傾向・教科横断型の課題解決問題。
資料の読解を前提とし、独自の視点を持つことが求められています。
個人的には興味深いですが、新たな受験加熱を導いています。
Commented at 2021-06-13 08:56
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-06-13 09:07
>鍵コメ さん、そうですね、家事はかなりな運動量になります。
でも同じ筋肉を使うので、ストレッチや筋トレで使わなかった筋肉をのばしてやったりするのです。
自由が丘もちょっと前までだったら散歩しながらいけたのですが、今はバスです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-06-13 09:11
> 福さん、本書で問題にしているのは、ほんとに基礎的な読解力です。
それあって後、はじめて詩や文学も理解できる可能性が生じるのでしょう。
受験戦争は、なかなかなくならないですね。

Commented by ikuohasegawa at 2021-06-14 10:08
Amazon、ポチッいたしました。
まず、略された問題例を見たい。
Commented by saheizi-inokori at 2021-06-14 11:50
> ikuohasegawaさん、きっと呆れますよ。
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by saheizi-inokori | 2021-06-12 12:48 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(8)

ホン、映画・寄席・芝居、食べ物、旅、悲憤慷慨、よしなしごと・・


by saheizi-inokori
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