つくづぐ運がねえ 「JR上野駅公園口」
2021年 05月 21日
きのうは都立大学にパンを買いに行った。
区民センターのワクチンの行列がなくなって係の人たちが所在なげに立っていた。
パン屋の隣に新しい店が出来ていた。
さて、この店の前にあったのはなんだったろう?
パン屋に尋ねたらクリーニング屋だったという、ぜんぜん思い出せない。
全粒パン二斤半とくるみパンを買って、つぶれないように気を付けて持って、ムスビガーデンでトマトと「無添加北海道2色の大豆~焼き昆布入り~」を買って、カフエで本を読む。
図書館で100人を超す行列が出来ているので、生きている内に読めるかしらんと思っていたら、思いが天に通じたか、かたじけなくも恵送くださった方がいらした。
JR上野公園口は勝手知ったる場所、そこに住む昭和8年生まれのホームレスの独白・回想が、主となって、ときおり彼の存在を無視して行き交う普通の人たちの会話が挿入されたり、どうももうひとり、死者の声も聞こえる。
福島県浜通りの原ノ町に両親と妻子、年の離れた6人の弟妹を置いて、彼らを養い育てるために出稼ぎで暮らした半生。
あっというまに感情移入する。
若い時に原町の友人を訪ねて海辺の岩に腰かけて砕ける波を肴に一升瓶を傾けたことも思い出す。
彼らが、重機などのない土方仕事で東京オリンピックのための競技場や体育館など戦後の日本を造ってきたこと、その過程で今の僕たちが不平交じりに享受している奢侈の片りんも味わうことなく、家族団らんすらできないままに生きてきた日々のことを考えると胸がいっぱいになった。
一人息子がやっと21歳になって仕事をみつけたのに、突然死する。
葬式の前夜、80歳になる母親は、
窓の外を選挙を意識した街宣車が走る。
ますます「つぐづぐ運がねえ」男の物語の半分まで読んで席を立った。
区民センターのワクチンの行列がなくなって係の人たちが所在なげに立っていた。

さて、この店の前にあったのはなんだったろう?
パン屋に尋ねたらクリーニング屋だったという、ぜんぜん思い出せない。

図書館で100人を超す行列が出来ているので、生きている内に読めるかしらんと思っていたら、思いが天に通じたか、かたじけなくも恵送くださった方がいらした。

福島県浜通りの原ノ町に両親と妻子、年の離れた6人の弟妹を置いて、彼らを養い育てるために出稼ぎで暮らした半生。
あっというまに感情移入する。
若い時に原町の友人を訪ねて海辺の岩に腰かけて砕ける波を肴に一升瓶を傾けたことも思い出す。

彼らが、重機などのない土方仕事で東京オリンピックのための競技場や体育館など戦後の日本を造ってきたこと、その過程で今の僕たちが不平交じりに享受している奢侈の片りんも味わうことなく、家族団らんすらできないままに生きてきた日々のことを考えると胸がいっぱいになった。
一人息子がやっと21歳になって仕事をみつけたのに、突然死する。
葬式の前夜、80歳になる母親は、
「これまで苦労ばっかして仕送りさ金ぇ注ぎ込んで、これがらやっと楽できるはずだったのに、、、おめえはつぐづぐ運がねえだなあ」と涙をこぼすのだ。回想の合間に、またもや上野の雑踏の人々の浮ついた会話が別世界からのように聞こえ、展覧会に飾られている薔薇の絵の薔薇のそれぞれについての説明が流れ、ホームレス仲間の暮らしぶりや、シゲちゃんという同年のインテリのホームレスが上野公園内の西郷像や「時忘れじの塔」などの謂われを語る。
この公園で暮らしている大半は、もう誰かのために稼ぐ必要のない者だ。女房のため、子どものため、母親、父親、弟、妹のためという枷が外れて、自分の飲み食いのためだけに働ける程、日雇いは楽な仕事ではない。
昔は、家族が在った。家も在った。初めから段ボールやブルーシートの掘っ立て小屋で暮らしていた者なんていないし、成りたくてホームレスに成った者なんていない。こう成るにはこう成るだけの事情がある。

「国難を乗り切るために規制改革を推し進める」むらっと殺意。
ますます「つぐづぐ運がねえ」男の物語の半分まで読んで席を立った。

無添加北海道2色の大豆, 恵送下さったの素敵なコトバ
カフェのテーブルのお洒落な帽子と眼鏡。 みんないいな~
後半の本の話がほんとに辛いです 殺意。まさにです
引っ張り出して読み直していた野中郁次郎「知識創造企業」の
頁に引いていた沢山の線が虚しくって堪らない気持ちです
カフェのテーブルのお洒落な帽子と眼鏡。 みんないいな~
後半の本の話がほんとに辛いです 殺意。まさにです
引っ張り出して読み直していた野中郁次郎「知識創造企業」の
頁に引いていた沢山の線が虚しくって堪らない気持ちです
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今日は雨降りだから、同じ本を読んでました^^。
あれこれ思いながらです。
あれこれ思いながらです。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

幸いなことに少し順番待ちしただけで私は昨年の12月に読めたのですが、高度成長時代を支えた出稼ぎ労働者の胸が苦しくなる話でした。
貧しい者と富む者の格差はどんどん広がり、いつ誰がホームレスになるかわからない状態を作っている国の無策がコロナ禍ではっきり見えました。表面的には好景気だった1964年の東京オリンピックから「オリンピック2020」まで日本は何をやってきたのでしょう。この国の後進性をまざまざと感じる昨今です。
貧しい者と富む者の格差はどんどん広がり、いつ誰がホームレスになるかわからない状態を作っている国の無策がコロナ禍ではっきり見えました。表面的には好景気だった1964年の東京オリンピックから「オリンピック2020」まで日本は何をやってきたのでしょう。この国の後進性をまざまざと感じる昨今です。
とても興味をひかれました
読んでみます
読んでみます
> koro49さん、あれこれをお聞かせください。
> 鍵コメさん、読み終えました。死ぬ前に読めてほんとによかったです。
> テイク25さん、原発以前はこういう出稼ぎが必要で一家が離ればなれに暮らし、今はフクシマのせいで又一家離散。
東京オリンピック施設を作った人々が山狩りされて慮外の人になっている。
いままた、新たなホームレスが増加しているようです。
東京オリンピック施設を作った人々が山狩りされて慮外の人になっている。
いままた、新たなホームレスが増加しているようです。
> hanarenge2さん、ぜひぜひ!感想もお聞かせください。
Saheiziさん、帽子と、メガネ、ドンピシャ。
私が描くsaheizi 像にはぜったいかかせない、身につけているものなの。
私が描くsaheizi 像にはぜったいかかせない、身につけているものなの。
都美術の横の木立の中のブルーテント
或る日一掃されているのに気づいて
驚いたことを思い出します
毎年テント村の住人さんから
銀杏を買っていたのに・・
地元で仲良くしてたブルーさんも
横の川に落ちて死んだし
切ない気分に襲われました
いいおっちゃんたちでした
或る日一掃されているのに気づいて
驚いたことを思い出します
毎年テント村の住人さんから
銀杏を買っていたのに・・
地元で仲良くしてたブルーさんも
横の川に落ちて死んだし
切ない気分に襲われました
いいおっちゃんたちでした
ラジオでこの本の事ウトウトしながら聞いたような気がします。佐平次さんの読みが早すぎて、読みたい本がいつも頭の中に山積みです。怠け者の話、やっと枕元に持ってきました笑
> reikogogogoさん、鳥打帽もかぶりますよ。
JR上野公園口は米国で受賞し話題になったことを憶えていましたが、読む気が起きました。ありがとうございます。
> ikuohasegawaさん、受賞に値する作品だと思います。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
> 鍵コメさん、原発か観光か出稼ぎか、観光がうまくいけばいいのですがね。
農業などがなんとかならないのかと思います。
農業などがなんとかならないのかと思います。
by saheizi-inokori
| 2021-05-21 14:58
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Comments(22)