金髪のいろいろ 「長いお別れ」

土曜日の朝、ゴンチチの世界の音楽をいい感じで聴いていたら、とつぜん地震警報が侵入して後を聴きそびれた。
ラジルラジル、ってので聞き逃した番組を聴くことが出来るってのを初めてやってみたら僕にもできた。
聞いたことのない曲をつぎつぎに聞かせてくれて、それがみんないい。
二人のユーモアとセンスにあふれた感想もいい。
音楽だけでなく言葉のセンスもあるふたりだ。
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雨上がりの散歩で、ことし初の紫陽花をみた。
薔薇が盛りなのだが、なぜかどこの家のも美しさがイマイチに感じられる。
僕の見に来たタイミングが悪いのかもしれない。
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人に世話をさせておいて贅沢を言っては罰があたるね。
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きのうチャンドラーを読みたくなったと書いたら、本棚に「長いお別れ」があった。
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二十年前くらいに買って、どうも読んでないようだ。
どこまで読んでも新鮮で既読感がない。
読んでいるうちに最初の方のページが取れて来たのを手で押さえながら読む。
横浜のIKUOさんなら、あっという間に直すんだろうなあ、と考えつつ。
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「ぼくが幸福じゃないと思ってるんだね」
「すまん。よけいなことをいった」
「金があるんだ。だれが幸福になりたいなんて思うものか」彼の言葉に私にははじめての自嘲が感じられた。

撮影所でよく言うじゃないかー大作だが、ストーリーがないって。シルヴィアは幸福にちがいないが、ぼくといっしょでなくたっていいんだ。われわれの社会では、どっちみち、そんなことは重要じゃない。働かないでよくて、金に糸目をつけないとなると、することはいくらでもある。ほんとはちっとも楽しくないはずなんだが、金があるとそれに気がつかない。ほんとの楽しみなんて知らないんだ。彼らが熱をあげてほしがるものといえば他人の女房ぐらいのものだが、それもたとえば、水道工夫の細君が居間に新しいカーテンをほしがる気持ちとくらべれば、じつにあっさりしたものなんだ。
決め台詞を散りばめ、ベレッタとかなんだとか銃の名前にジャウイットジュピターなんて車の名前が出てきたり、カナディアンベーコンにOLDGRANDDAD、これはバーボン、建物、衣装、植物、多彩な描写、スピーディなストーリー展開でぐいぐい引っ張る。
その後のハードボイルド作家にいろんな影響を与えた、その源泉を覗く思いがする。

「世界中でこれほど」という形容詞をつけて、何か意外なものやことを褒める。
それほど世界を知って居るわけではないのに、そうだろう、そう思うよ、俺も、と思わせる。
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「金髪の女は珍しくない」といって、舗道のように味わいのない「漂白した金属のような金髪」を例外として「しじゅうおしゃべりしている小柄で可愛い金髪」「氷のように碧い瞳で男を寄せつけない大柄でものものしい金髪」「色あいがよく、きらきら輝いて、男の腕にすがることを慣わしとし、送って帰るときはいつも疲れきっている金髪、いざとなると、ひどい頭痛がするといいはじめて、男はなぐりつけてやりたくなるのだ」、、だんだん、すごい金髪が出てくる、そのうちひとつだけ
命にはかかわらないがどうしても治らない貧血症のうすい、うすい金髪もいる。きわめて生気がなく、なんとなく影がうすく、どこでしゃべっているのかわからないような低い声でものをいい、だれも手を出すものはいない。一つには手を出す気にはなれないからであり、一つにはいつも『荒地』か原文のダンテを読んでいるか、カフカかキュルケゴールを読んでいるか、プロヴァンス語を学んでいるからである。こういう女は音楽が好きで、ニュー・ヨーク・フィルハーモニックがヒンデミットを演奏しているとき、六人のコントラ・バスのうちの一人が四分の一拍子おくれたことを指摘してくれる。彼女のほかには、トスカニーニも指摘できるそうだ。
金髪尽くしを二ページに渡って繰り広げて「向こうの端の”夢の女”はこれらのどの種類の金髪でもなかった。山にわきでる泉のように澄んでいながら、その色のようにとらえどころがなく、分類することが難しかった」というヒロインが登場する。
落語の言い立てを思わせるが、もっと賑やかなギャグの連続だ。
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もちろん、ギャングも、暴力シーンも、キスシーンもある。
もう半分も読んでしまった。
まだ半分も残っている。
もう半分も楽しめる。
Commented by tona at 2021-05-03 16:36 x
ラジルラジルですって。
saheiziさんは何でも出来ちゃうのですね。
そういうのに強い人が本当に羨ましい!人生が2倍楽しいと思います。
「長いお別れ」昔読みました。でも何も覚えていません。
このような内容だったのですか。
Commented by saheizi-inokori at 2021-05-03 18:08
> tonaさん、らじるらじる、やってみれば簡単ですよ。
スマホにらじるらじるって言えば出てくるアプリをインストールすればいいのです。
長いお別れ、活劇漫談の趣もあってとても面白いです。
Commented by hanamomo60 at 2021-05-03 20:27
こんばんは。
期限はありますがらじるらじるはとても便利ですよね。

長いお別れ、我が家の図書館にもあるようです。
中島京子さんの長いお別れはお父様のことを書かれた小説でした。
薔薇がきれいに咲いていますね。
Commented by hi-vison_1103 at 2021-05-03 21:26
saheiziさんの、何でもやってみる好奇心が一番ですね。すばらしい。
英語で認知症のことを long goodbye(ゆっくりお別れしてゆく)というのいいな、といつも思います。落語や文学、こんなご時世にこそ大切ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2021-05-03 22:19
> hanamomo60さん、村上春樹がもっとも影響を受けた三人の作家の一人、村上自身も翻訳していますね。
後半の迫力はすごかったです。
Commented by saheizi-inokori at 2021-05-03 22:21
> hi-vison_1103さん、長いお別れ、ですね。
小説のそれとはちょっとちがうかな。
Commented by okanouegurasi at 2021-05-03 23:07
佐平次ファンには叱られそうだけれど、ハードボイルド嫌い。暴力シーンもセックス描写も物の名前も興味うす...尼寺へいきゃれ~ですね。

Commented by ikuohasegawa at 2021-05-04 05:38
ドキッ。
もう、1年以上本の修理をしていません。

修理をしていた図書館は地下施設で換気が十分できないため、ほとんどの行事を中止したままです。
小学校も出入り禁止が解除されません。
Commented by saheizi-inokori at 2021-05-04 09:14
> okanouegurasiさん、マッチョっていうのですかね。
嫌いな人も多いかな。
私は打算をすててひとすじに生きる男のダンディズムみたいなのが好きです。

Commented by saheizi-inokori at 2021-05-04 09:15
> ikuohasegawaさん、それは腕が鳴るでしょう、さぞかし。
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by saheizi-inokori | 2021-05-03 11:39 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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